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谷口信輝も絶賛! WRCチャンピオン「カッレ・ロバンペラ選手」の走りにドリフトの可能性を感じた「フォーミュラドリフト」第2戦をレポート

カッレ・ロバンペラ選手とRed Bull GRカローラ

今後も目が離せないフォーミュラドリフトジャパン

2023年5月20(土)~21日(日)に福島県のエビスサーキット西コースで行われた「フォーミュラドリフトジャパン」第2戦は、まさに2022年WRC王者カッレ・ロバンペラ一色といった大会だった。

誰が見ても「完璧」と呼べるドライブを披露

カッレ・ロバンペラ選手は、フィンランドのラリードライバーで、WRCにフル参戦を開始したのは2020年からとなる。2022年には史上最年少記録の22歳でチャンピオンを獲得した。2023年5月にはポルトガルで開催された第5戦で優勝を果たしている。フォーミュラドリフトジャパンへの参戦が発表になったのは第2戦直前のことだ。第1戦のパンフレットに掲載されていたドライバー紹介欄には「TBN」(To Be Nominated)とあったが、まさかこれがカッレ・ロバンペラ選手だったとは誰も気が付かなかっただろう。

第2戦の1週間前にはポルトガルでWRCに参戦しており、かなりタイトなスケジュールでの参戦だったことは頷ける。しかも初めて乗るマシンで、初参加となるフォーミュラドリフトジャパンという舞台。タイヤは横浜ゴムのストリート最高峰であるADVAN NEOVA AD09を履き、KR69 CUSCO RacingからRed Bull GRカローラで参戦となった。

このレースウィークで初めてマシンに乗り、初レースの審査ポイントなどのルールを把握。そしてそれらを的確に判断し、誰が見ても「完璧」と呼べるドライブを続けたのだ。カッレ・ロバンペラ選手の走りはまったく隙がなかった。

D1GP初代チャンピオンの谷口信輝氏も高く評価

ドライバーの多くは、進入からゾーン1に至るまで角度やラインの修正が若干出るのが普通だが、カッレ・ロバンペラ選手の走りにはそれを感じさせず、しかも毎回同じ角度とラインでつねにスピード感ある進入からブレのない迫力あるドリフトを繰り出す。

これまでも「凄い!」と感じたドライバーは多くいるが、カッレ・ロバンペラ選手に関しては、まったく次元が違っていた。解説でGTドライバー、さらにいえばD1GP初代チャンピオンの谷口信輝氏も「ドリフトの新たな可能性を感じさせる走り」とコメント。また追走での車間距離の近さと一定さを高く評価し、カッレ・ロバンペラ選手の走りに興奮したひとりだった。

CUSCO Racingは、古くから現在に至るまで、アジアパシフィックラリー選手権と全日本ラリーに参戦しているチームで、フォーミュラドリフトジャパンには2020年から参戦し、2023年は4名のドライバーでフル参戦している。ラリーで培った実績と3年間フォーミュラドリフトジャパンで戦ってきた経験を生かし、今シーズンは第1戦から予選で1~3位を独占。総合でも箕輪大也が優勝、松山北斗選手が3位に入るなど、大躍進中のチームなのだ。

そんな名門チームにカッレ・ロバンペラ選手が加わった第2戦。これまでフォーミュラドリフトジャパンに参戦してきたドライバーやチームとコミュニケーションを取る姿も多くみられた。カッレ・ロバンペラ選手の優勝は、チームの力も大きかったのではないだろうか。

CUSCO Racingの強さはマシンの完成度の高さと修復力。例えばマシントラブルによりコンペティションタイムアウト(5分間ルール)を使用したときの修復力の凄さは、これまでも何度も目の当たりにしてきた。完成度の高いマシンを熟知しているからこそ、短時間での修復作業にも対応し、即レースに戻すことができるのだ。

CUSCO Racingは注目すべき選手が多い

今回、カッレ・ロバンペラ選手が乗ったマシンも初参戦となる。練習からファイナルまで、数多くの走行を続けても走行に不具合が出ることはなく、高いポテンシャルをつねに発揮し続けた。カッレ・ロバンペラ選手のドライビングテクニックは言うまでもないが、安心して最後までドリフト走行を続けられたチーム力にも感服だ。

CUSCO Racingは、注目すべき選手が多い。2022年のシリーズチャンピオンを獲得した松山北斗選手が今年からCUSCO Racingに加わった。他にも第1戦で初優勝を飾り、今大会でも4位に入る活躍を見せた箕輪大也選手もいる。箕輪大也選手はフォーミュラドリフトジャパンに2022年から参戦。2021年にはFDJ3の前身ともいえるMSCチャレンジでシリーズチャンピオンを獲得し、フォーミュラドリフトジャパンへの出場権を得て参戦となった。2022年はシリーズ13位だったが、2年目の2023年はまったく迷いを感じさせないドライビングでトップ争いを繰り広げている。

箕輪大也選手の両親ともに、元はフォーミュラドリフトジャパンに参戦したドライバー。父親の箕輪慎治氏はドライバーとしてだけでなく、ナックル加工の第一人者としても知られた存在だ。レース参戦への姿勢もストイックで、ドリフトを理論的に分析していたことを記憶している。母親の箕輪昌世選手は、現在FDJ2に参戦するドライバー。大也がフォーミュラドリフトジャパンへ参戦するのを期に、父親はレース参戦を休んでサポート側へ、母親はFDJ2へ参戦レースを変更して、家族で完全サポートの体制を取っている。

箕輪大也選手の走らせ方は父親譲りだろう。角度を付けた姿勢から的確なライン取りで走り抜けるマシンコントロールは、参加選手のなかでもトップレベルだ。また練習走行では色々な場面を想定した走らせ方、本番のタイヤを作るなどを行い、1本1本の走行を無駄にすることはない。

さらに本番直前でのウォーミングアップのやり方など、ひとつひとつを理論的に行っている。これでまだ13歳の中学生なのだから、今後どんなドライバーに成長していくのか、今から期待してしまうのは当然のことだ。

今回、ファイナル4(トップ4戦)でカッレ・ロバンペラ選手と対戦。勝負は敗退となってしまったが、すべてが見劣ったものではなく、カッレ・ロバンペラ選手が少しだけ上まわったという結果だったと思う。シリーズランキングは2位に20ポイント差を付けての1位をキープ。今回、同チーム員として、対戦相手としてカッレ・ロバンペラ選手が最も近い位置にいたことが、間違いなく箕輪大也選手をさらに成長させたことだろう。

1200psオーバーのモンスターマシンを操るケン・グシ選手

そしてもうひとり、忘れてはいけないドライバーがいる。アメリカのフォーミュラドリフトのドライバーとしても活躍するケン・グシ選手だ。2023年も2022年同様、フォーミュラドリフトとフォーミュラドリフトジャパンのダブルフル参戦。Team kazama with powervehiclesから参戦中だ。2022年までレクサスRC Fスポーツだったが、2023年は最新のレクサスIS500 Fスポーツが導入されている。

エンジンは、2JZとTOMEI3.6Lストローカキットの組み合わせている。サムソナスの5速シーケンシャルやNOSなども装備、タイヤはADVAN NEOVA AD09を装着した、1200psオーバーのモンスターマシンだ。

2022年、日本でのコースを経験したケン・グシ選手。第1戦は予選25位、総合26位だったが、第2戦ではトップ16でマッド・マイク選手に敗れはしたものの、予選13位、総合11位、シリーズランキングも15位まで上げてきている。彼もまた一流のドリフトテクニックが光るドライバーだけに、第3戦以降の活躍に期待がかかる。

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