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ロバンペラを「フォーミュラドリフトジャパン」チャンピオンにしたチームジャパンの取り組みとは

優勝車両の前での長瀬 努社長

ワールドクラスのドリフトを披露した

現役WRCドライバーのカッレ・ロバンペラが、2023年5月に行われたフォーミュラドリフトジャパン(FDJ)のRound.2に「GRカローラ」で参戦するというニュースは、発表と同時に業界を駆け巡った。そして、ワールドクラスのドリフトテクニックで完全優勝という偉業を成し遂げた。ロバンペラが参加したチームは「TEAM CUSCO RACING」。クスコの長瀬 努社長に、今回の経緯を聞かせていただいた。

超短期間でドリフト車両をつくり上げた

「ロバンペラが優勝できて、本当にホッとしています。今回のプロジェクトは、すべてがギリギリのところで進められました。賛同をいただいた各メーカーの協力があってこそ実現することができたと思っています」

クルマが届いて、プロジェクトのGOが出たのはフォーミュラドリフトに参戦するまで1カ月も時間がないタイミングだった。車両提供はGR、エンジンを担当するのはHKS、タイヤは横浜ゴム、車両製作はクスコということは決まったが、GRカローラでのドリフト車両制作は、誰も経験がなく圧倒的に時間がなかった。しかもドライバーは、WRCドライバーであり、優勝する可能性もある。半端なクルマをつくるわけにはいかなかった。

クスコは、13歳のドリフトドライバー箕輪大也選手の車両として「GRヤリス」を制作しており、初戦の鈴鹿では優勝もしている。共用できるパーツが多いという点で、先にGRヤリスの制作をしていたというのは、今回のプロジェクトを成功させるうえで重要なポイントになったと言える。

超短期間で優勝できるだけのマシンをつくり上げたクスコも凄いが、レースの週にやってきて、いきなり優勝することができるカッレ・ロバンペラの高さには感服する。

「レースウィークの水曜日にエビスへやって来て、初めて車両に乗ってもらいました。そこでロバンペラに、練習は必要ない、セッティングだけさせてくれって言われて少し戸惑いました。クルマに乗っている時間よりも、セットチェンジをしている時間のほうが長かったです。凄いですよ」

非常に高いアジャスト能力を披露した

完璧にGRカローラにアジャストしてみせたロバンペラ。そのドライビングテクニックは特筆すべきものがあるが、GRカローラ・モリゾウエディションのポテンシャルの高さについても素晴らしいものがあったと、長瀬社長は話す。

「エビスへは、本人とスポッターとエンジニアが3人でやって来ました。3人で相談してエンジニアから我々に指示がでます。通常ならウチのエンジニアとドライバーが相談をして、クルマの方向性を決めていきますが、ロバンペラの場合は『ここをこうしてくれ』と、具体的に指示があるので、ウチのエンジニアもほぼ言われるがまま作業したという感じでした。もちろん、うまくいかない場合は戻して、みたいなことを繰り返してクルマをつくっていきました」

ロバンペラは、地元では「スープラ」でドリフトをしているが、初めて乗るGRカローラを乗りこなせるアジャスト能力は凄い。

「ロバンペラのアジャストする能力が高いということはもちろんですが、GRカローラの出来がすごくいいというのもあると思います。意外とホイールベースが長くて、トレッドもある程度あるからドリフトには向いているのかもしれません。もちろんリアドアがあるので、車重はGRヤリスより重いですが、ボディがしっかりしています。GRカローラは、もともとボディ補強されていますが、今回使用したモリゾウエディションはさらに構造接着剤が追加で塗布されています。だから、ウチはロールケージを組んだぐらいで、それ以上ボディに手を加える必要はありませんでした」

そもそも、クスコはドリフトよりもラリーのイメージが強いメーカーである。それがフォーミュラドリフトにワークス体制で参戦。なぜここまで本格的にドリフト業界へと入っていったのだろう。

「本格的なチームとしてドリフトに参戦するようになってから3年目ですが、2003年ぐらいからずっとD1やD1 USAに参戦しているドライバーのサポートを行ってました。我々が開発してきた競技パーツというのは、ドリフト用として使用できるものが多いんです。セッティングこそ異なりますが、その多くはラリーと共用できるんです。だから、我々がドリフト競技に参加するというのは、特別なことではなく自然な流れと考えていただけると嬉しいです。ただ我々もまだまだドリフトのことについては、知らないことが多いです。とくに制御系については、どちらかというとラリー車っぽい仕様になっていると思います。そんななかで、我々がつくった車両でロバンペラが優勝してくれたのは、本当に喜ばしいことだと思っています」

今回のチャレンジは、日本の自動車メーカーとパーツメーカーの見事なコラボレーションがあって成し遂げることができたことだろう。GRのラリードライバーが、日本を代表するスポーツカーで、日本を代表するチューニングメーカーの仕立てた車両でチャンピオンになる。こんな素晴らしいスト−リーは、だれが予想できただろうか。こういうチームジャパンによる取り組みが、トヨタだけでなく他メーカーでも見られるようになると、もっとモータースポーツ業界は盛り上がると思う。

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