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なぜキャディラックを地面に突き刺した? 落書きスプレーは「違法」ではなく「推奨」されてるのでご安心を【ルート66旅_22】

地面に突き刺さる10台のキャデラックはまさに圧巻。色とりどりの缶スプレーによる落書きはマナー違反じゃなく「推奨」だ

地面から生えたキャデラックとビートル!? ルート66を代表する人気スポットを訪ねる

広大なアメリカを東西2347マイル(3755km)にわたって結ぶ旧国道「ルート66」をこれまで5回往復した経験をもつ筆者が、ルート66の魅力を紹介しながらバーチャル・トリップへご案内。シカゴを出発して西に向かい、イリノイ州からミズーリ州、カンザス州、オクラホマ州を通って、テキサス州へ。今回はシュールな風景で有名な「キャデラック・ランチ」を訪れてみます。

クラシックなキャデラックがニョキニョキ並ぶ珍風景

全長3755kmのマザー・ロードには、有名なアイコンが星の数ほど存在する。いずれも甲乙つけがたい魅力やエピソードを持っているが、トップクラスの知名度を誇るスポットといえばここだろう。ルート66の中間地点からほんの少しだけ東、アマリロ郊外にあるキャデラック・ランチ(Cadillac Ranch)。映画『カーズ』ではクルマの形をした岩山として登場し、ブルース・スプリングスティーンも同名の曲を歌っている。

この「ランチ」はスペルを見れば分かるとおり、昼食(Lunch)ではなく牧場(Ranch)を指す。そう言われても「キャデラックの牧場?」と、ますます意味が分からなくなるかもしれない。

というわけで解説を読む前に画像を見てほしい。1940~1960年代に生産された10台のキャデラックが、地面から生えたかのように車体の半分を埋められている。だから「牧場」というワケなのだ。世界でも指折りの高級車を惜しげもなくオブジェにしたのは誰で、果たして製作者のどんな意図が込められているのだろうか。

缶スプレーで思いっきり落書きしてしまってOK

キャデラック・ランチはアマリロで産出する天然ガスの事業で財をなした、スタンレー・マーシュ3世なる人物が支援するアーティストのグループにより、1974年に現在よりもう少しだけアマリロ寄りの場所に作られ1997年に移設。ガソリンを撒き散らすかのような当時のアメ車に対するアンチテーゼなのか、スポンサーから援助を受け奇抜なオブジェを作りたかったのかは分からないが、50年が過ぎようとしている現在も毎日のように世界中から観光客が訪れている。

もうひとつ気になるのは元の色が分からないほどの落書き。近年の日本でも問題になっている観光被害かと思いきや、なんと缶スプレーでの落書きが「推奨」されているのだ。名前や恋人へのメッセージを書く人もいれば、ストレス発散とばかりに色を塗りまくる人も。缶スプレーはそこらじゅうに落ちているので、もし持って行くのを忘れても焦る必要はない。

ちなみにキャデラック・ランチは入場料もなければ管理人もおらず、目の前を走っているインターステートの側道に駐車することになる。明るい時間帯は観光客がたくさんいるため犯罪に遭う心配は少ないと思われるが、夜間や夜明けに訪れるときは「ここは日本じゃない」との認識を忘れずに。

ちょっとマイナーだけどバグ・ランチも一見の価値あり

じつはクルマを埋めた「ランチ」はもうひとつある。キャデラック・ランチから約50km東へ戻った、コンウェーという街とも呼べない街のバグ・ランチ(Bug Ranch)だ。バグとは昆虫の意味で、埋められているクルマはフォルクスワーゲン ビートル、数は5台と本家よりちょっとスケールダウンした感は否めない。でも観光客に出会うことはほぼないし、寂れた雰囲気も個人的には大好き。

今でこそコンウェーはゴーストタウン同様で2016年の時点で3人しか住んでおらず、市や町どころか村でもない「未編入地域」または「非法人地域」という扱いだ。1900~1920年代はそれなりに栄えていたらしく、バグ・ランチの横にはガスステーションなどの跡がある。

その両隣にあるモーテルとレストランは現在も営業中のようだし、インターステートを挟んだ向かいには大型のトラックストップも。決して人里から遠く離れた僻地というわけじゃないので、時間が許せば立ち寄ってこの雰囲気を堪能してみよう。

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