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「ガラパゴス」カテゴリーついに終焉?BYDが軽自動車市場に参入へ【Key’s note】

三菱 eKスペース(左)、三菱デリカミニ

ムーヴ/ルークス/N-ONE eと各メーカーが新型を投入

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のお題は「軽自動車の転換点」についてです。ダイハツの新型ムーヴ、ホンダのN-ONE e:、そして年末には日産の新型ルークスと、国産勢が次々と注目モデルを登場させています。さらに中国のBYDも2026年に軽EVを投入予定で、日本独自といわれた“ガラパゴス軽”の時代が終わりを迎えつつあります。軽自動車はいま、電動化と国際化という新しいステージに進もうとしています。

限られたサイズのなかで商品価値を高める電動化やスライドドア

2025年はまさに、軽自動車の収穫期と呼びたくなる年です。国内各社がしめし合わせたかのように、魅力的な軽自動車を次々と世に送り出しています。

しかも、いよいよ国際勢、すなわちBYDのような海外ブランドも日本の軽自動車市場に足を踏み入れようとしており、「ガラパゴス軽」の時代は終焉を迎える予感がします。

まず、2025年6月5日、ダイハツは7代目となる新型ムーヴ(MOVE)を正式発表し、発売しました。

この新型ムーヴは、単なるモデルチェンジではありません。これまでスーパーハイトワゴンの専売特許でもあった「リアスライドドア」を歴代初採用するという大胆な進化を遂げ、軽ハイトワゴンとしての新しい地平を切り開こうとしています。

ホンダは「N-ONE e:(エヌワン イー)」も話題をさらっています。2025年10月あたりに発売する見込みと報じられており、長年の人気車であるN-ONEの電動版です。この「e:」の冠には、軽自動車界の電動化を見据えた意図が感じられます。先行する日産「サクラ」の強力なライバルとして名乗りを上げた形です。

年末に向けては、日産がルークス(ROOX)の新型を投入いたします。室内長をクラス最大級にし、12.3インチ統合ディスプレイ、安全支援機能の高度化も狙っており、単なる軽自動車の枠を超えようという野心がうかがえます。本気で軽自動車の覇権を手にする目論見です。

また、ルークスと二卵性双生児の関係にある三菱「eKスペース」もほぼ同時の発売であろうと思われます。「デリカミニ」もその勢いをさらに増すことが予想されます。

BYD参入で揺らぐ「日本固有の文化」

そして忘れてはならないのが、中国ブランドBYDの軽自動車市場参入構想です。

BYDは、2026年後半に日本専用設計の軽EVを国内導入する計画を発表しています。このモデルは日本の軽自動車規格に合わせた設計とされ、スライド式のサイドドアも採用すると報じられています。

すなわち、海外勢が軽自動車市場に直接割って入ることで、これまで「日本固有の小型車文化=ガラパゴス軽」の構図は大きく揺らぐ可能性があります。開発は、日産で軽自動車の開発を担当した人材がヘッドハンティングされたと噂されており、日本の市場を理解したクルマ作りがされるはずです。これは日本勢にとってはとくに脅威となります。

これが実現すれば、軽自動車の設計・技術水準や競争フィールドは、国内メーカー同士の競争を越えて、国際舞台を意識せざるをえないものになるでしょう。「軽」はもはや、国内だけの戦場ではなくなります。次世代バッテリー技術、効率化、高安全性能、コスト制御──軽自動車に求められる要件は、世界基準へと引き上げられてゆくはずです。

軽自動車の国際化でグローバル基準との融合が始まる

とはいえ、参入初期には「日本の基準・法規・安全要件」という壁が待ち受けております。衝突安全性、騒音基準、耐久性、使い勝手など、長年軽自動車で鍛えてきた日本メーカーのノウハウとの「差」を如何に埋めるかが勝負の肝となるでしょう。

しかし、その挑戦こそが、軽自動車界をさらなる高みに引き上げるきっかけになり得るのです。むしろ、「軽自動車がガラパゴスであり続ける」ことこそが、世界と隔絶された古い構図と言われる日が来るかもしれません。

2025年生まれた軽自動車たちにBYDの計画を加えた「軽自動車豊作年」の物語は、こうして国際化への序曲をも含むものとなります。「軽の革命元年」に続く章として、来年以降は本格的な電動化競争、異業種参入、グローバル基準の融合が始まるでしょう。

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