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上場以来初の赤字転落! ホンダEV戦略転換の裏側とF1のジレンマ

ホンダ 0シリーズ サルーン:次世代EVのフラッグシップ。低く構えたスポーティなフロントマスク

EV戦略の見直しで「脱エンジン」を方向転換
見失ったホンダの現在地とF1活動への影響…

2026年3月12日、ホンダが北米でのEV戦略の大転換と、それに伴う2兆5000億円の損失試算を三部敏宏社長が緊急会見で発表しました。一部で囁かれた「F1撤退」の噂は免れたものの、開幕戦で露呈したアストンマーティン ホンダの苦戦は深刻です。マクラーレン時代の悪夢を彷彿とさせる非難の応酬の裏側と、次世代ハイブリッドに懸けるエンジン屋ホンダの意地と矜持を考察します。

三部社長が北米EV基幹3モデル開発中止発表! 2兆5000億円の損失とハイブリッドへの回帰

Hondaは12日、EV(電気自動車)を中心とした戦略を転換すると三部発表しました。

2040年にはEVと燃料電池車(FCV)の販売比率を100%とする“脱エンジン”を掲げてきましたが、北米でのEV需要が伸び悩んできたことなどからEV戦略の転換を決断。具体的には、北米で予定していたEVの基幹モデル「Honda 0(ホンダ ゼロ)」シリーズのうち、「Honda 0 SUV」と「Honda 0 Saloon」、それに加えて「Acura RSX」の3モデルについて開発および発売の中止を決定しています。

ちなみにHonda 0シリーズのゲートウェイ モデルに位置づけられている「Honda 0 α」に関しては、会見に出席したメディアからの質問に答える格好で、三部敏宏社長が「開発は継続します」と語っています。

また、緊急の会見では戦略の見直しによって、今年度(2026年3月期)と来年度(2027年3月期)に合わせて2兆5000億円もの損失を試算しているとも発表されました。そして今後に対しては、次世代ハイブリッド車をはじめとしたラインアップの補充により、四輪事業の収益改善を図るとしています。

囁かれたF1撤退の噂!
アストンマーティン ホンダの深刻な苦戦

じつはこの日の緊急記者会見ですが、「ホンダがF1活動を休止する会見らしい」との情報も紛れていました。モータージャーナリストであると同時に古くからのホンダ(バイク&クルマ 編集部注:特にクルマは愛車のホンダS800Mをホンダコレクションホールに寄贈)のオーナーであり、モータースポーツ ファンでもある身としては、戦々恐々として緊急会見のライブ配信を観ていたのですが、杞憂に終わり一安心したところです。

しかし実際のところは、北米のEV苦戦(ホンダの苦戦と言うよりもEV市場のシュリンクと言うべきか)よりも、先週末にシーズンが開幕したF1における、ホンダ製パワーユニット(PU)を搭載したアストンマーティン F1の苦戦ぶりの方が筆者としては心配です。

テストからトラブルが続出し、開幕戦のオーストラリアGPでもレースを走り切ることなくリタイアしてしまいました。テストも含めて現場に出かけることなく、主にインターネットと雑誌からの情報だけで判断するのは難しいのですが、どうやらエンジンから発生する振動が原因で、バッテリーなどのパーツが壊れてしまうのが要因のようです。

しかしそれは、長い間レースを取材してきた経験からすれば、小さな事実のひとつにすぎません。PUを開発するホンダ(正確にはHRC Sakura)にも、シャシーを担当するチームにも、それぞれの真実があります。その一方で、双方が一致してマシンを仕上げていく必要があるのもまた事実です。「トラブルではなくシャシー側とパワーユニット側の最適化のプロセス」と両者が思い、一刻も早い解決策を見つけることを祈りたい。

第4期復活後のマクラーレン時代の悪夢再来か?
シャシー側とエンジン側で最適解を導き出せ!

1980年代終盤から1990年代序盤にかけて、ホンダはマクラーレンにターボ エンジンを供給し、優勝をほしいままにしていた時代がありました。レギュレーションが変更されターボが禁止になると、それまでの優位性がなくなり苦戦を強いられるようになります。

あるシーズンではハイパワーながら大きく重いエンジンが足を引っ張ることもあり、またあるシーズンではコンパクトなエンジンがシャシーのパフォーマンスを助けたこともありました。しかし当時のGPパドックで、ホンダやマクラーレンから「シャシーが悪い」とか「エンジンが重すぎる」といった相手を非難するセリフは、ほぼ聞かれなかったように記憶しています。

その反対に、2015年からの3年間、再びジョイントしたホンダとマクラーレンは、思ったような成績を出せず苦戦が続きました。そのうちにチームやドライバーからは、ホンダに対する非難が出るようになりました。ホンダの関係者からマクラーレンに対する愚痴を聞くことはありませんでしたが、いずれにしてもこうなると一緒にマシンを速くするなんてことは夢のまた夢です。3シーズンで契約解除となったのはよく知られるところです。

アストンとホンダ両者の試練と覚悟が必要な時
次世代ハイブリッドで「エンジン屋」の意地出せ

今シーズンのアストンマーティン ホンダの苦戦ぶりは、まるでひと昔前のそのシーンが繰り返されているかのようです。フェルナンド アロンソ(振り返ってみれば彼はマクラーレン ホンダのドライバーでした)は今回に限ってはホンダを刺激しないように口撃どころか、擁護側に回っています。一方、空力の鬼才と呼ばれ数々の傑作マシンを生み出したエイドリアン ニューウェイは、マネージングテクニカルパートナーからチーム代表を兼務することとなり、立場上、チームを守るためにホンダを非難するコメントが目立つようになってきました。

しかし考えてみれば、F1活動を休止したり再開したりを繰り返してきたホンダが、再デビューして即トップコンテンダーになれるほどF1レースは甘くありません。そんなホンダとジョイントすることを決めた以上、一緒になってマシンを速くしていく覚悟がチームにも必要であり、もちろんホンダの技術陣にも必要なことは明らかです。

EV戦略の転換を決断したホンダですが、個人的にはエンジン(内燃機関)の開発で蓄積してきた知見と開発スキルを活かす方法を再考してほしいと思っています。

ホンダのハイブリッド技術は高く評価されているようですが、これもエンジン開発で培ってきた技術力の賜物です。次世代ハイブリッドには、エンジン屋としての意地と矜持を期待しています。また「全方位開発」は、ホンダらしいチャレンジングな姿勢ですから続けて欲しいと思っています。

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