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スイスの空港内に建つ「アルテンハイン飛行機・車両博物館」とスイスの商用車メーカーにしてディーゼルエンジンの先駆者「ザウラー博物館」探訪

ロールス・ロイス シルバーゴースト:FFA博物館3階に勢揃いした歴代ロールス・ロイスの手前に並ぶ1926年製モデル

ジェット戦闘機と名車が同居! スイスのディープな博物館巡り

スイスのボーデン湖畔エリアには、クルマ好きの知的好奇心を刺激するディープな博物館が点在している。サンクトガレン・アルテンハイン空港の敷地内に建つ「FFA博物館」は、ジェット戦闘機と歴史的名車が同居する特異な空間だ。さらに近隣の「ザウラー博物館」では、スイスが誇る商用車メーカーの貴重な歴史に触れることができる。大規模な量産自動車メーカーを持たないスイスにおいて、独自の発展を遂げた自動車文化はどのような形で保存されているのか調べてきた。

空港の敷地内に建つFFA博物館の2階でジャガーやドライエに出会う

スイス・トヨタ博物館を訪れた翌日、同じくボーデン湖畔エリアにある博物館を歴訪した。最初に足を運んだのは、サンクトガレン・アルテンハイン空港の一角に整備された「FFA博物館(FFA Museumは、ドイツ語の Fliegermuseum Fahrzeugmuseum Altenrhein の頭文字をまとめたもので、Fliegermuseum=飛行機博物館、Fahrzeugmuseum=車両・自動車博物館、Altenrhein=アルテンハインという地名となり、日本語に訳すとアルテンハイン飛行機・車両博物館)」である。ナビの指示に従って進むと、空港ビルの前に専用のパーキングスペースを備えた立派な建屋が現れた。

メインエントランスで入場券を購入し、展示ホールへと足を踏み入れる。1階は軽飛行機やジェット戦闘機がメインの展示となっており、まずはエレベーターで2階へと向かった。そこにはポルシェ「911(930型ターボ)」やフェラーリ「512テスタロッサ」、フォード「GT」といった名車が並び、一気に自動車博物館らしい雰囲気に包まれる。

振り返ると、軽飛行機と並ぶように1953年式のジャガー「XK120」ドロップヘッドクーペが展示されていた(この時代のジャガーの車名に用いられる数字は最高速のマイル表示を意味。120mile=192km/h、XK150は240km/hとなる)。その隣にはジャガー「Eタイプ」のシリーズ2とライトウェイトがボンネットを開けた状態で並んでいる。とくにアルミニウムボディで軽量化を追求したライトウェイトの美しいEタイプのバックスタイルは、見る者を強く惹きつける。ほかにも戦前戦後のベントレーやメルセデス・ベンツ「300SLロードスター」、ドライエなどの名車が顔を揃えていた。

3階は歴代ロールス・ロイスがズラリ! コーチビルダーの手仕事に唸る

さらに上階となる3階の展示ホールへ足を踏み入れると、そこはロールス・ロイス博物館と呼ぶべき特別な空間だった。1926年製の「シルバーゴースト」や1928年製の「ファントム」、そして戦後の「シルバーレイス」など、歴代の名車がずらりと勢揃いしている。

ここでひとつの興味深い事実に気がつく。ロールス・ロイスに限らず、この時代の高級車は「コーチビルダー」と呼ばれるボディ製造の専門業者が外装を仕上げるのが一般的であった。展示されているロールス・ロイスたちは、フロントビューこそひと目でそれとわかる伝統の顔つきを保っている。しかし、リアのトランク形状やテールの造形はそれぞれ異なり、実に個性的に仕上げられていた。王侯貴族の要求に応えたコーチビルダーたちの職人技を、間近で比較できる貴重なフロアである。2階と3階の自動車関連の所蔵は約50台弱が展示されていた。

湖畔を走ってザウラー博物館へ! 完全キャッシュレスの入り口に驚く

FFA博物館を堪能した後は、ボーデン湖畔を12kmほど西へ進んで「ザウラー博物館(Saurer Museum)」を目指した。湖畔の道路は美しい景色を楽しめるが、観光客で混雑することもある。今回は河口湖を周遊するような湖畔のルートを選んだが、渋滞も少なく30分足らずで到着することができた。

ボーデン湖に面した展示ホールの正面エントランス前には、湖の家とも呼べるカフェが併設されている。展示ホールの建屋自体はごく普通のビルディングであり、看板がなければ自動車博物館であることを見逃してしまいそうだ。

入り口のシステムは非常に現代的である。入場券の販売は完全キャッシュレス化されており、機械にクレジットカードをかざすとエントランスのドアが自動で開く仕組みだ。歴史ある展示物と最新の入場システムのギャップが面白い。

商用車メーカーのザウラーが手掛けた戦前のガソリン仕様ダッジD11

ザウラーは主に商用車メーカーとして知られるスイスの企業だ。刺繍用機械の製造から始まり、やがてエンジンの製造を手掛けるようになった。ディーゼル機関の研究を深く進め、欧米各国のメーカーへライセンスを供与するなど、かつてはディーゼルエンジン分野における世界的なトップメーカー(ディーゼルエンジンの発明者であるルドルフ・ディーゼル氏とディーゼルエンジン開発をして、後に直噴技術を確立。現在は自動車製造からは撤退し、現在は世界的な繊維機械メーカー)であった。

近年の大型トラックや、旅客と郵便物を輸送する戦後のポストバスといった車両は広く知られている。しかし、館内でとくに目を引いたのは、ザウラー製の6気筒エンジンを搭載した1939年製のダッジ「D11」である。

ザウラーが得意とするディーゼルではなく、あえてガソリンエンジンを搭載したこの戦前のモデルは、彼らが本格的に乗用車市場への進出を意図していた歴史を物語っている。大規模な自動車量産メーカーを持たないスイスだからこそ、コーチビルダーによる架装文化や、ザウラーのような高度なエンジン技術が独自の発展を遂げた。ボーデン湖畔という美しい景色の中にひっそりと、しかし極上の動態保存状態で展示されている名車たちは、スイス特有の奥深い自動車文化を今に伝えている。

こちらのザウラー博物館には、クラシックトラックや軍用車やバスなどおよそ30台弱の貴重な車両が所蔵されていた。なかでも白眉は、ザウラー「D330」と呼ばれるクラシックトラックで、その独特な無骨さとザウラー自慢のメカニズムは世界の重機ファンの間で根強い人気車だという。

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