ミシシッピ川沿いを走るグレートリバーロードを北上したい!
2024年の夏にはオーストラリア・ノーザンテリトリー州でトヨタ「ハイラックス」ベースのキャンピングカーをレンタルして、釣り人としてバラマンディの大物を狙う23日間の旅を敢行した筆者。続いて9月から、アメリカをミシシッピ川沿いに南北縦断する旅に出かけることにしました。第1回は、旅の計画と仲間探しです。
音楽が洗練されていった歴史をたどる旅
2024年は、ぼくにとってビッグイヤーになった。
これまでぼくの本を2冊(『アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅』2013年、『自分自身を生きるには 森の聖人ソローとミューアの言葉』2021年)を出してくれた産業編集センターに新しい企画を出してみた。
仮のタイトルは「ミシシッピリバー 食とブルースの旅」。ジャズが発祥したニューオリンズ、ブルースが生まれたミシシッピ・デルタ。ここを旅の起点としてミシシッピ川をメンフィス、セントルイス
ミシシッピ川沿いを走るグレートリバーロードは、初期の大陸横断ルートであるオレゴントレイル、ルート66と並んでアメリカの3大ロードトリップに数えられる。アメリカの旅行を紹介してきた身としては、一度は実現してみたい目標でもあった。
正直いって、こんな虫のいい企画は通らないだろうとタカを括っていたが、2月に入って編集長のMさんから「企画が通りましたよ~。いつ行きますか~」という女神の声が届いた。飛び上がるほどうれしかったが、そのときは、6〜7月の「オーストラリア・アウトバック爆走と大物フィッシングの旅」の準備真っ最中。とりあえず、9月出発と予定を設定した。
LAの仲間からシエラネバダでハイキングのお誘い
いい話は重なるものだ。2018年にカリフォルニア州東部のシエラネバダ山脈の縦走コース、ジョン・ミューア・トレイル(355km)を計4週間かけて一緒に踏破した、ロサンゼルス在住の“隊長”こと小笠原あきらさんから久しぶりに連絡があった。
「秋にまた、シエラネバダのハイキングに行かない? 7泊8日のいいルートがあるんだけど」
行きたい!
心の中で即答していた。あのシエラネバダの山中で過ごした4週間は、自分の人生の中でもトップ3に入る素晴らしい体験だった。あの景色に戻れるなら、今すぐにでも行きたいに決まっている。
でも……。
「じつは9月にミシシッピ川を4週間かけて北上する計画があるんですよ」
3000m級の峠をいくつも越えるシエラネバダのハイキングは季節が短い。8月〜9月半ばが精一杯だ。これはスケジュールの調整ができそうもない。これは諦めるしかないのか……。
しかし、さすが“隊長”である。一瞬の間をおかずに素晴らしい提案があった。
「じゃあ、山に1週間行ってから、ミシシッピに行けばいいじゃん」
おお、その手があったか! さすが、元大手旅行代理店で百戦錬磨の経験を積んできただけある。
こうして、8月27日から準備を入れて10日間のハイキング、その後、ミシシッピ川北上30日間、計40日の旅が実現することになった。
山歩きビギナーはまず体力づくりから
次は旅のメンバーである。ハイキングには、“隊長”と奥さんの真由美さんのほかに、ふたりの旅行代理店時代の同僚である原田さんという女性が参加することになった。本格的な山歩きの経験はないが、スペインのサンティアゴ巡礼や四国のお遍路さんを体験して、歩くことには自信があるという話だった。
ただ、テントを建てたこともなければ、寝袋で寝たこともないという。いろいろな装備をそろえるところからスタートだ。“隊長”夫妻はLA在住だが、原田さんは東京に住んでいる。シエラネバダに関しては先輩のぼくが、準備に関して相談に乗ることになった。
「まったく分からないんですが、大丈夫でしょうか」
不安げな原田さんに、「まだ、半年以上ありますから、今から準備すれば大丈夫ですよ」と声をかけた。装備はどうにでもなるが、15kgのバックパックを背負って3000m級の峠を越えるにはかなりの体力が要求される。半年くらい、みっちりジムトレーニングをする必要がある。「準備」とは体力のことだ。
ミシシッピでは旧知のカメラマンも合流することに
次にミシシッピである。まず、ぼくが声をかけたのはカメラマンの宮澤さんだ。趣味はギター。それも、ブルースギターときている。風体もなんとなくブルースマンらしくて、今回の企画にドンピシャの人材なのである。しかし、単行本の企画にはカメラマンの予算がない。著者(ぼく)が写真も撮ってくるのが原則なのだ。
「エアチケットとレンタカーはなんとかするけど、そのほかは自腹だよ」と話すと、「それでも行きたいですね」と、ボソリとひと言。これもまた半年以上先なので、じっくり検討することになった。
そして、編集長のMさん。30年前に学生のときにグレイハウンド・バスでアメリカを1周
さらに、シエラネバダのハイキングも一緒に行く原田さん。ぼくの旅の計画を話すと、「私も行きた~い」と明るい声が響いた。9月半ばにマイアミ在住の友人と、大谷選手出場のドジャースの試合を観る話があるそうで、ミシシッピ、ニューオリンズの10日間の取材に同行するとちょうどいいという。山、ブルース、大谷、最後にニューヨークと、彼女もまた壮大な計画となった。
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