死角を知ることで事故を減らすことができる
幼稚園や保育園の駐車場で小さなお子さんがクルマに轢かれるというニュースが報じられています。その原因がクルマの死角。死角とはある角度からはどうしても見えない範囲のことで、クルマの場合は、運転席から見えない範囲のことを指します。自車の死角をしっかりと把握することで安全運転につながるポイントをお伝えします。
見えないと危険を察知しずらくなる
人やクルマ、低い塀や足元の植木鉢などが運転席からの死角に入ってしまうと、ドライバーは目視で対象物を認識することができないために、危険を察知しづらくなり、事故を起こすリスクが高まる。どんなクルマにも、死角があることを認識しておくことが重要だ。クルマの構造上、代表的な死角は次のとおりだ。
前後の死角
クルマにはボディ形状によっていくつかの死角が生じる。そのひとつ目は前後の死角。つまり、ボンネットやトランクに隠れてしまう範囲のことだ。クルマの直前、あるいは直後にしゃがんでいた子どもに気づかないまま、クルマを動かしてしまい、子どもを轢いてしまったという事故が発生するのは、この死角を見落としてしまったため。こうした事故を防ぐには、クルマに乗り込む前に、車体の前方・後方をよく確認しておくことが肝心だ。モニターやセンサーで車両の前後の障害物を確認できる車両の場合は、クルマを動かす前に積極的に使ってほしい。
ピラーの死角
ピラーとはガラスとガラスの間にある柱のこと。ピラーはセダンタイプで通常前後左右に6本あり、ワゴンやミニバンならさらにピラーの数が増えてしまう。ボディ剛性が高いクルマほど、このピラーが太かったりするので、このピラーの死角の広さはけっこう馬鹿にできないものだ。
ピラーによる死角を解消するには、「ちょっと見えづらいな」と思ったときに、目だけ動かすのではなく、首を左右に動かしたりして、見えづらいところを確認する手間を惜しまないようにする。
左右の死角
車体の左右も、窓の高さよりも低い位置は死角になる。右ハンドルのクルマなら、ボディの右側1〜2m、ボディの左側4〜5mの範囲が死角になると思っていい。車高が高く、着座位置が高いクルマほど、左右の死角が大きくなり、サイドミラーにも映らない部分が大きくなるので、気を付けてほしい。
バックミラーの死角
クルマには後方の死角を補うために、ルームミラーやサイドミラー、あるいはバックモニターがついている。しかし、これらのミラー類も万能ではなく、ミラー直近の低い位置や、ミラーの位置の外側は見えないので、ここにもまた死角ができてしまう。
このミラーの死角への意識が甘いと、交差点で自転車やバイクの巻き込み事故を起こしたり、車線変更時に後続車を見落とし、事故を起こしたりすることになる。ミラーやバックモニターだけに頼らず、教習所の運転講習のように首を左右に振って、サイドミラーの範囲外の安全を確認することを忘れないようにするように心がけてほしい。
見えない部分を認識して注意することが大切
さらに、クルマの死角は車高の高さや、ボンネット、トランクの長さによってもけっこう異なる。
セダンであれば、前方の死角はバンパーの先端から4〜5m。後方はバンパーから7〜8m。左右では右ハンドル車で、右はドアから1〜2m、左はドアから4〜5mが死角の範囲になる。
それがミニバンになると、ボンネットが短い分、前方の視界は開けてはいるが、車高が高い分、左右の死角が大きく、後方は運転席の後ろの空間が広いために、死角がセダンの1.5倍ぐらい長くなるので、バックするときはとくに注意が必要だ。
SUVは車高が高く、ボンネットもあり、さらに各ピラーも太めなので、全般的に他の車種よりも死角が多いので要注意だ。こうした死角による事故を防ぐためには、乗車前にクルマの周囲を確認することや、バックミラーの位置を正しく調整することが第一だ。
そして、ウインカーを早めに出すこと。ミラーやバックモニターだけに頼らず、きちんと首を動かし、目視でも周囲を確認することも忘れずに。その他、サイドミラーの真横、外側の死角を補うブラインドサイドカメラや、サイドミラーの端の方に取り付けるブラインドスポットミラーを併用するのも有効だ。隣接する車線後方に他の車両がいることを知らせるブラインドセンサーなどのシステムも普及してきているので、これらも死角対策のアシストとして役立てたい。
しかし、ドライバーがまずクルマには死角があることを認識。そのうえで見えない危険を予測しようとする安全意識こそが一番重要なので、絶えずそのことを忘れないようにしたい。
