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先代からの進化系4代目「ミニ クーパー」は、さらに大人のグランドツアラーへ

ミニクーパー:八角形のフロントグリルが特徴的だ

元2代目オーナーが4代目ミニ クーパーに乗ってみる

2024年2月に世界初公開され、直後に日本市場でも発売となった4代目「ミニ クーパー」。ガソリンエンジン搭載モデル「クーパーC 3ドアハッチバック」は、わが国でも歴代モデルすべてが高い人気を博してきたミニ クーパー保守本流ともいうべき最新世代ハッチバックモデルです。そんなミニ クーパーC 3ドアは、2024年の第2四半期から国内でも正式なデリバリーも始まっています。つまりデビューからしばしの時間を経たものの、AMWでも今いちどテストドライブを行うことにしました。

内燃機関とBEVの2本立てになった新生クーパー3ドア

2001年デビューの「R50」系を皮切りに、2006年デビューの2代目「R56」系。すべてのミニの起源「BMCミニ」の生みの親であるアレック・イシゴニス卿の生誕107周年にあたる2013年11月18日に世界初公開された3代目「F56」系と、これまでの約四半世紀にわたってBMWの庇護のもと順当に進化を繰り返してきた。

そして第4世代は、2023年にBEVの「ミニ クーパーE」「ミニ クーパーSE」(J01系)が世界初公開されたのち、2024年に追加というかたちで代替わりしたのが、ガソリンエンジン搭載の「ミニ クーパーC」と「ミニ クーパーS」(F66系)である。

BMW傘下でつくられるMINIのオリジンたる3ドアハッチバックモデルにおいて大きなトピックとなったのは、すべてのモデルが「ミニ クーパー」を名乗るようになったこと。今回の主役であるクーパーCは、先代までのエントリーモデル「ONE」を吸収するかたちで新たなベーシックグレードとなったが、その内容は先代の「クーパー」をも凌駕するものとなった。

新型ミニ クーパーでは、「J01」と「F66」というまったく異なる開発コードネームが用意されていること、A/Cピラーの傾斜角からも一目瞭然なとおり、ICE搭載のクーパーC/Sは、BEVのクーパーE/SEとは別物のモノコックを使用する。ボディサイズは全ICEモデルが長3875mm×全幅1745mm×全高1455mm と、BEVモデルよりも15mm長くて10mm狭い。

パワーユニットは、クーパーCが直列3気筒1498cc+ターボ、クーパーSが直列4気筒1998cc+ターボを搭載し、いずれも7速DCTが組み合わされる。

「MINIインタラクションユニット」はスマートフォン感覚の操作を可能に

この変速機を操作するギアセレクターのほか、パーキングブレーキ、スタート&ストップキー、「エクスペリエンス モード」の切り替え、音量調整などはすべてトグルバー式のスイッチで行う。また、直径240mmの円形有機ELディスプレイで展開される「MINIインタラクションユニット」はスマートフォン感覚の操作を可能とし、速度や燃費などの車両情報は画面上部に表示。メインメニューでは各機能が横並びに配置され、スワイプやタッチで選択できることになっている。

いっぽう、ダッシュボード上には最大7パターンの光のグラフィックを投影させることで、光のパターンと「アンビエントイルミネーション」、そして新たに作成されたという「MINIドライビング・サウンド」によりインテリア全体の雰囲気が変化する。センターコンソールの下には、ワイヤレス充電できるスマートフォンフォルダーが設定されるなど、実用性にも気が配られているようだ。

試乗したミニ・クーパーCの車両本体価格は396万円。なお今回の車両は、シートやオーディオなどをアップグレードする「エム・パッケージ」。およびスポーツステアリングや「ジョン・クーパー・ワークス(JCW)スポーツシート」などを含む「フェイバード・トリム」などのオプションパッケージを組み込み、総額は461万円に到達する。

装飾類がシックになって大人のミニ クーパーへと成長

今回、ICE版「ミニ クーパーC」のテストドライブのコースとして選んだのは、千葉県内の拙宅と富士スピードウェイを往復する総距離約250km。高速道路が大半を占めつつも、軽めながら一般道のワインディングロードも試すことができた。

クルマに乗りこむ前、視野に飛びこんできたエクステリアは、先代F56型よりも大幅にシンプルなミニマル調。あくまで個人的な感想ながら、ごてごてとした装飾ばかりが目についた先代よりも格段に好ましく感じられる。

インテリアは、全面を粗目の「ハウンドトゥース(千鳥格子)」柄としたテキスタイル風のダッシュボードに、小さめのお盆のようなサイズの有機ELディスプレイ(計器盤)が、まるで立てかけられるように設置されている。レザーストラップをデザインとして取り込んだドアのインナーパネルの意匠も含め、クラシックな英国テイストを織り込んだミニマル感が見受けられる。

「John Cooper Worksスポーツシート」とスパルタンな商品名のわりにはゴージャスなシートに腰を降ろし、STARTボタンを押すと「ツインパワー・ターボ」ガソリンエンジンが静かに始動する。

高速クルーザーとしての資質が先代からさらに高められている

低・中速のトルクは充分以上。市街地走行ではスロットルを軽く踏む程度で、ほとんど3気筒特有の排気音は聞こえてこない。また首都高の入口から本線への合流で一気に加速してもエンジン音が荒げるようなことはなく、このクラスとしては非常に静かなまま定速クルージングに突入する。

日曜日の首都高→東名高速道路は、早朝ながらもボチボチ混みはじめる時刻。制限速度に近いところで流すように走らせていると、スタビリティが非常に高いこと、このクラスとしてはロードノイズが低めに抑えられていることなど、高速クルーザーとしての資質が先代からさらに高められていると実感する。

先代F56クーパーから継承された1.5Lの3気筒+ターボユニットは、スペックシートのうえでは最高出力115kW(156ps)/5000rpm、最大トルク230Nm/1500-4600rpmという、現代としては穏当なチューニングアップである。それでもトルク感は充分で、一般道のワインディングでも気持ちよく走ることができる。

いずれのステージにおいても1280kgという現代車としては軽い車両重量から想像するよりは、遥かにどっしりとした印象。「セグメントBプレミアム」に属するサブコンパクトカーながら、格上の「セグメントC」、たとえば最新世代のフォルクスワーゲン・ゴルフにも匹敵しそうな安定感と上質感を湛えている。

新型F66系は先代F56系の順当な進化型だった

ハンドリングも格段にしっとりとした感があるのだが、そのいっぽうで「フェイバード・トリム」のスポーツステアリングは、リムが筆者の掌には明らかに太すぎて、操舵フィールが実際よりも大味なものと感じられてしまうことだけは、少々残念に感じられた……と、あえて記しておきたい。

ともあれ、内外装デザインのテイストは劇的に変容したものの、新型F66系は先代F56系の順当な進化型……、という第一印象は、この日のテストドライブにより確信に近いものとなっていた。

いわゆるBMWミニの初代にあたるR50系と2代目R56系は、比較的近しいボディサイズとキャラクターを与えられていたことをご記憶のかたも多いだろう。いっぽう、3代目F56系では大幅なサイズアップとキャラ変が図られ、より上質感を打ち出したプレミアムコンパクトへと進化を遂げた。どうやら現代のミニは、メカニズムやクルマ創りの基本形について、2世代ごとに大きく変容させるという方策を採っているようだ。

そして4代目では、BMWミニ開祖のR50系、筆者自身が数年間にわたって愛用したR56系(ただしコンバーチブルなので、厳密にはR57)の時代のような「ゴーカートフィーリング」をことさらに打ち出すのではなく、「大人のミニ クーパー」になったというのは、間違いのないところと思われる。

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