アメリカにおけるフェラーリ デイトナ スパイダーの人気が反映したのか
2025年8月13日〜16日、アメリカ・カリフォルニア州モントレーで世界最大級のクラシックカーオークション「Monterey 2025」が開催されました。RMサザビーズが主催するこのイベントには数多くの名車が並びましたが、その中で注目を集めたのが、イギリスのグループ・ハリントンが製作したジュニアカー「デイトナ・スパイダー」です。車両のあらましとオークション結果をお伝えします。
子ども用にはもったいない!ブレンボ製ブレーキなど本格的な仕様
今回RMサザビーズ「Monterey 2025」オークションに出品されたのは、イギリスに本拠を置く「グループ・ハリントン(Group Harrington)」がプロデュースした、デフォルメされたスタイルが可愛らしいジュニアカーである。
グループ・ハリントンは、もともと人気のあるクラシックカーの補修需要に応えて、ステンレススチール製のバンパーを生産・販売するサプライヤーであることが判明。本拠は英国ながら、ベトナム・ホーチミン郊外に工場を建設し、かなり大規模なビジネスを展開している。
バンパー生産の傍ら、長年培った技術力を生かして、2000年代初頭からは「ハリントン・ジュニアカー(Harrington Junior Car)」というブランドを掲げ、往年の名車たちをモデルとした高級なチルドレンカーも製作している。
現在では、ACコブラを模した「COBRA 289」や、ジャガーEタイプ・シリーズ1を模した「Series 1」、メルセデスベンツ300SLロードスターを模した「300」など、数多くのラインナップをそろえている。いずれも1万ドル以上の高価格で販売されていることが公式HPにて確認できる。
いずれのモデルも、専用のジグで組んだパウダーコート済みのスチール製ラダーフレームに、グラスファイバー製のボディとコンポジット樹脂のフロアパンを組み合わせている。また、スチール製のサスペンションスイングアームと、アルミニウム/高張力鋼鉄を併用した前輪のスタブアクスル、アルミニウム製のフロントハブ、ラック&ピニオン式のステアリング、スチール製リアドライブシャフト/リアハブ、そしてブレンボ製ブレーキが奢られるなど、かなり本格的な構成となっている。
実車の人気がジュニアカーにも反映か ホンモノのフェラーリ デイトナと同じくフロントに設置され、後輪を駆動するパワーユニットは、排気量150ccの空冷4ストローク単気筒ガソリンエンジンである。スタンダードチューンでは最高速度40mph(約64km/h)を実現するが、子どもの搭乗時にはスピードを制限するリストリクターを装着することも可能だ。
ジュニアカーのデキよりもデイトナという車種がハマったのか?
今回のオークション出品車は、フェラーリ純正色のジャッロ・モデナ(Giallo Modena)を彷彿とさせるイエローのボディカラーで設えられた。ホンモノのデイトナ スパイダー用オプションホイールを模した、センターロックのワイヤーホイールを装備している。
キャビンは赤みを帯びたダークブラウンのレザー張りで、ステアリングホイールは本物のデイトナに採用されたMOMOプロトティーポを思わせる革巻きである。ドライバーの前にはイグニッションキーやウインカー、ホーンボタンなどが配され、いずれも機能する。
また、ボンネットとトランクのリリースレバーも設けられているほか、ペダルは調整可能で、子どものドライバーにも大人のドライバーにも適したドライビングポジションに設置できる仕様であった。
今回のオークション出品に際して、RMサザビーズ北米本社の営業部門は、これまでのハリントン作品の落札実績からすればリーズナブルにも思える、2万ドルから3万ドル(邦貨換算約296万円〜444万円)というエスティメートを設定した。そのうえで現オーナーとの協議の結果、「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品となった。
この「リザーヴなし」という競売形態は、価格の多寡を問わず落札されるため、とくに対面型オークションでは会場の雰囲気が盛り上がり、入札価格が跳ね上がる傾向がある。しかしその反面、たとえ価格が出品者側の希望に到達しなかったとしても、強制的に落札されてしまうという不可避的なリスクも同時に内包する。
そして迎えた8月15日のオークション当日。モントレー市内の大型コンベンションセンター、および隣接するホテルにも会場を広げて挙行された対面型競売では入札が順調に伸びた。結果、エスティメート上限を超える3万2400ドル(現在の為替レートで日本円に換算すれば約478万円)という高価格で競売人のハンマーが鳴らされた。
あくまで筆者の個人的印象だが、グループ・ハリントンが製作した一連のジュニアカーのなかで、このデイトナはとくにウインドスクリーンあたりの造形が武骨で、ありていに言えばやや不格好に見えなくもない。
さらに、今回の「モントレー・カーウィーク」におけるオークション群での落札実績を見比べると、ジュニアカーのビジネスはやや低調気味にも映る。しかし、TVドラマ版「マイアミバイス」や映画「激走5000km」で雄姿を披露したデイトナ・スパイダーがもっとも愛されているアメリカでのオークションでは、やはり実車の人気がジュニアカーの人気にも反映しているのかもしれない。
