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なぜ過走行車はエンジンの調子がよいのか

使用頻度の低いクルマは要注意!
始動時がエンジンをもっとも傷付ける

「大切なクルマだからあまり乗らない」というオーナーがいる。確かに、使えばクルマは減る。かつては自家用車の寿命は10万kmと言われていた(最近は景気が悪いからか、もっと長く乗る人も増えている)。
ところが、国内のタクシーの寿命が40万〜50万km、海外の鉱山なので使われているトヨタランドクルザーは100万kmはもつそうだ。

 じつは、使用頻度の低いクルマのエンジンは、オイルが循環していないので代えって調子を悪化させているのだ。

あまり乗らないクルマは傷んでしまう可能性も

 エンジンがもっともピストンとシリンダーなどが摩耗するのは、始動時なのをご存じだろうか。とくに1週間に1度くらいしかクルマを動かさないサンデードライバーや、旧車など走行距離を伸ばしたくないからと車庫で眠らせているクルマは、オイルが下がってかなりヤバイ(エンジン下部のオイルパンに流れ落ちている)。

 そもそもエンジンオイルは、オイルポンプによって各部に循環して油膜を作り金属接触しないようにしたり、汚れの除去、冷却を行っている。ところが、1週間以上もエンジンを動かさずにいれば、ピストンやヘッドまわりのオイルは重力でオイルパンへと落ちてしまう。当然のことながら、ピストンやシリンダーなどパーツ間のオイルが少ない状態なので、油膜が形成されにくく金属接触は免れない。このような状態でのエンジン始動を「ドライスタート」とも呼ばれ、もっとも各パーツがキズつきやすい。

 これに対して毎日のように動いているクルマは、エンジンが停止している時間が短いため再始動するときにオイルが金属パーツの間に残っている。
だからエンジン始動時の金属接触が軽微で、摩耗しにくいというわけだ。

 もちろん、定期的なオイル交換などのメンテナンスがされているのが前提ではあるが、良く動いているクルマのエンジンは、オイルが循環することで汚れが溜まりにくいというメリットもある。人間に置き換えれば、血液が循環することで老廃物を出すことができるのと同じ。クルマも止まっているときはエンジンオイルが循環しないから、汚れが沈殿しやすくもなる。

 ここで勘違いしないでほしいのは、走行距離を重ねればもちろん消耗パーツの摩耗は進行する。
短期間でいっぱい走ったクルマは壊れにくいというのではない。

 あくまでも同じ走行距離で比較したとき、短時間でその距離に達した方がオイルが切れることなく使われていたという結果なのである。ただし、無駄にアイドリングが長くしてきたクルマは(タクシーの客待ちのように)、カムシャフトやクランクメタルなど、油圧が低いと油膜切れをしやすい部位の摩耗は酷いケースが多い。

1〜2分アイドリングさせてオイルを循環
正確には油温70℃以上で暖機運転完了

 サンデードライバーなど、どうしても1週間以上クルマを動かさない場合は、エンジンのドライスタートは仕方ないにしても重要なのはその後だ。

 まずは、エンジン始動時にアクセルを踏むのは厳禁! よく始動直後に「ブォン!」なんてエンジンの回転数が高くする人がいるが、これがもっともエンジン内部のパーツをキズ付ける。

 現代のクルマならキー(スタートスイッチ)だけでエンジンは始動できる。そして1〜2分間アイドリングさせて、十分にオイルをエンジン内部に循環させてほしい。これだけで金属接触が抑制されて、パーツの異常摩耗は抑制できるのだ。理想は水温計の針が動き出してから(針が中央にまで来るのを待っている必要はない)、クルマをスタートさせるといい。 とはいえ、排気音など近隣への配慮などから、長くアイドリングできず発進せざるを得ないケールもあるだろう。

 最近のクルマはエンジンが暖まっていなくても、コンピュータで燃調や点火時期を制御しているので問題なく走行できる。

 ここで注意してほしいのが、最低限水温計の針が中央を指すまではエンジンの回転を2000〜2500rpmくらいまでに抑え、負荷も最小限にユックリ走ってほしい。

 本来は水温が上がるより油温が70℃以上になるまでは、ユックリ走るのが正しい。これはピストンとシリンダーなどの金属パーツは十分に暖まって熱膨張していないので、設計値よりパーツ間のクリアランス(間隔)が広い。その状態でエンジンに負荷を掛けたりすると、ガタがあるわけで油膜はキチンと保持されず異常摩耗の原因となる。

 また、ミッションやデフ、ブッシュ類なども暖機運転が必要。しかし、これらは走りながら自然に暖めるしかない。つまり、エンジン始動してからしばらくはユックリ走らせるのがポイントだ。

 このような配慮をするだけでクルマの寿命は、かなり違ってくるはずだ。

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