クルマだって起き抜けダッシュは辛い
暖機運転でクルマの寿命が延びる
一昔前は朝一などエンジンを始動して暖機運転をしてから走りだしたものだった。近年のクルマはエンジン始動直後でも、ギヤをDレンジに入れれば普通に走り出せる。だが、実は今でも暖機運転は必要なことをご存じだろうか? もっと言えば、暖機運転はエンジン以外にミッションやサスペンションにも必要なのだ。
そもそも暖機運転とは、人間のストレッチ運動と同じ。
もし、起き抜けに100mダッシュをしたら、若い人でもケガをしたり、身体を痛めてしまうはず。クルマも「各部」を暖めから動き出さないとストレスが溜まり寿命を短くしてしまうのだ。
では、具体的に暖機運転について説明しよう。
1:エンジンを傷めるアイドリング暖機
エンジンは停止中にオイルが重力で下部に落ちて、ピストンとシリンダーが直に接触していることもある。そのような状態で、アクセルを踏みながら「ブォン!」とエンジンを始動すると、金属同士が接触して摩耗の原因となる。平成時代のクルマならセルモーターだけでエンジンは十分始動できる。
昔のクルマは、エンジンが冷えているとギクシャクしてまともに走れなかったからアイドリング状態で暖機運転をしていた。しかし、エンジンの回転数が低いと油圧も低く、十分なオイル量が供給されないからカムシャフトやクランクのメタルなどの回転系パーツは金属接触(摩耗)を起こしやすい状況にある。
そんなパーツが摩耗しやすい危険なアイドリング状態で長い時間を費やしてエンジンを暖めず、オイルがエンジンに行き渡る1分くらいで走り出す「走行暖機」がオススメ。エンジンだけでなく、クルマ全体の暖機運転ができる(理由は次項で説明する)。
何より「アイドリング禁止条例」を施行している地方自治体も多いし、地球環境への影響も考えるとアイドリング暖機は御法度な行為なのだ。
2:エンジン始動から約10分はゆっくり走る
エンジン始動から1分くらいでは、水温計の針はまず動いていないだろう。このように、エンジンが暖まっていないときはとにかくエンジンの回転が上がりすぎないように走行することが重要だ。
その理由は金属の熱膨張など小難しいので割愛するが、まずはエンジンを馴染ませるようなイメージで優しく走らせる。車種によって異なるが、エンジン回転数の上限は2000rpmあたりが目安。また、加速Gを感じるようなエンジンに負荷をかけるような発進はタブーだ。
このように回転を抑えると、エンジンの本体はもちろん冷却水の水圧を抑えられるので、ラジエータホースなどの補器類も長持ちさせられる。
一般的にエンジンの暖機運転は油温70℃までといわれている。季節や車種で異なるが走行時間10〜15分が目安だろう。もし、油温計が付いているクルマなら、冷感時こそ意識して見てほしい。
3:ミッションやサスペンションも暖機運転が必要
ミッションやデフといったパワートレーンにも暖機運転は必要だ。マニュアル車ならミッションが暖まっていないときは、シフトレバーの動きが渋く感じるはず。
ところがエンジンはガソリンを燃やすことで暖まるが、熱源を持たないミッションなどの駆動系を暖めるためには走るしかない。まさに「走行暖機」は、エンジンだけなく駆動系の温度を高めることもできるのだ。また、サスペンションやブッシュといったゴム類(ブレーキのシール)も冷感時は硬くなっているが、動かすことで暖まりしなやかになり切れにくくなる。
ちなみに「走行暖機」でエンジンに負荷を掛けずに走るとは、駆動系やサスペンションにも同様のことが言える。急ブレーキ&急ハンドルはもちろん、サスペンションが大きくストロールしないような走行すれば、凸凹の少ない道を選んで駆動系の暖機運転は完璧だ。
<走行暖機の手順まとめ>
・エンジン始動から1分くらいで走行開始
・約2000rpmを上限にエンジンに負荷を掛けずに走行
・急発進(加速)、急ブレーキ、急ハンドルといったクルマの姿勢が変化する走りは禁物
・走行暖機時間は約10〜15分。油温70℃まではアクセル全開は御法度
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