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古いクルマこそ価値あり! エンジン制御用コンピュータのリフレッシュ内容と効果について

これまで以上に安心感を得られる

 エンジン制御用のコンピュータ=ECU(Electronic Control Unit)の劣化が原因のエンジントラブルの事例と対処法(リフレッシュ・修理サービス)を紹介した前回の企画が好評だった。今回は続編としてECUのリフレッシュとアップデートのレポートをお届けしよう。

 今回、国内唯一のECU修理専門会社「キャニーエクイップ」に持ち込んだのは、平成4年式、走行距離22万kmオーバーの日産スカイラインGT-R(BNR32)のECU。とくに不調があったわけではなかったが、冬場に妙にアイドリングが高いときがあったり、ごく稀にアイドリングがばらついてグズるような症状が出た。

 四半世紀前のクルマということもあり、どこにトラブルが隠れているかわからないし、タービンもR34の純正タービンに交換済みで、エアフロはR35の純正を流用しているため、ROMチューンも行なっている。

 こうしたクルマのECUははたしてどんなコンディションで、どんな処置ができるのか? ECUをキャニーエクイップの湯浅竣介代表に渡し、作業を見守ることにしてみた。まず、ECUの蓋を開けると、中にある基盤を止めるネジが2本足りない……。

「本来、ここは4本のネジで止まっているのですが、このECUは2本のネジしかありません。おそらくROMを書き換えたり読んだりしたときに、省いてしまったのではないでしょうか。2本しかなくてもとくに支障はないのですが……」と湯浅代表。

 一抹の不安を抱えつつ、次の工程へ進んでもらう。上の基盤を持ち上げると、ECUの故障原因ナンバーワンといわれる円筒形の電解コンデンサが見えてくる。この電解コンデンサから液漏れがないか、黒く焦げたような跡がないかを入念に点検。被検車には幸い問題がなく、基盤各部のハンダ付け部位にもクラックなどの異常は見られなかったので、今回は修理ではなく、劣化している部品を交換するリフレッシュサービスでOKと診断された。

 キャニーエクイップでは、リフレッシュや修理したECUに10年間の長期保証を付けるため、現状問題のない部品でもこの先10年使うことを考え、主要な部品は全交換が基本。厳選した国内メーカー品をチョイスすることで、純正パーツの何倍もの長寿命化を図っている。

 また部品の交換だけでなく、ハンダの劣化補修と防湿・絶縁コーティングも実施。最後に、各種品質検査を総合的に行ない、問題がなければリフレッシュサービス終了だ。これで一律2万円(正常動作確認済みのECUのみ)。修理可能なECUならば故障個所が見つかっても、一律3万円で対応してもらえる。

 いずれにせよ目に見えないECUのトラブルの対する心配を考慮するとコストパフォーマンスは秀逸といえるだろう。

「ECUはや熱と湿度が大敵で、例年6〜7月から壊れはじめて、9〜10月頃に症状が出はじめることが多く、10月が修理依頼のピークとなります」とは湯浅代表。

 ECUは壊れない、半永久的に使えると思っている人も多いかもしれないが、ECUトラブルも病気と同じで早期発見・早期治療が健康を保つ大事な秘訣。突然エンジンがかからない、といったピンチに陥らないためにも、少し古いクルマに乗っている人は早めの点検サービス、リフレッシュサービスを受けることをオススメする。

 ちなみに第二世代のスカイラインGT-Rオーナーには、専用リフレッシュメニュー「Long Life with Relief」がオススメ。通常のリフレッシュサービスが前提の追加オプションで、修理ではなく将来的な故障を未然に回避。各機能の精度を高め耐久性を飛躍的に向上させ、副次的に機能性もアップデートするメニューだ。内容的には5つのサービスが用意されているので、個々にオーダーすることが可能とのこと。

 では、次のページにて具体的なECU修理について触れてみたい。

ROMチューンしたECU点検・修理も可能

 

1)点火系回路アップグレード

 パワートランジスタにつながる点火系回路の抵抗を、金属皮膜抵抗に交換。抵抗の精度が純正の±5%に対し、±1%の高精度抵抗に変えることで、故障リスクが激減し、各シリンダーの点火時期が均一化されることで、レスポンスの向上も期待できる。

2)インジェクター駆動回路のトランジスタ交換

 インジェクター駆動時にスイッチの役割を果たすトランジスタアレイを交換。経年劣化を放置しておくと、特定のシリンダーに燃料噴射ができなくなり、エンジンに高負荷がかかったりエンストなどの症状が出る。

3)インジェクター駆動回路のアップグレード

 純正のインジェクター駆動回路のノイズ除去回路=スパナ回路のフィルムコンデンサ(100V)を、耐久性が格段に高いポリエチレン誘導体(450V)に交換。ヒューズ機能も内蔵しているので、他の回路に悪影響を与える心配もなくなる。

4)フューエルポンプリレー駆動回路の交換

 キャニーエクイップでは修理依頼がとくに多い箇所。フューエルポンプリレーを駆動するトランジスタ・ダイオードが壊れると、突然のエンジン不動に見舞われる。その原因となるトランジスタ・ダイオードをより高耐久性のものに交換するメニュー。

5)ROMリフレッシュ

 ECU内部のプログラムや点火・燃料マップなどが入ったROMを新品に交換するメニュー。ROMのデータ保持年数は概ね10年と言われるので、経年劣化でプログラムの整合性が徐々に失われる前に新品交換することで正確な制御と故障リスクを減らす。

 ROMチューン済みのECUの場合、チューニングされたデータを吸出し・書き込むことも可能。

 湯浅代表は「ROMチューンしたクルマのECUも、リフレッシュ、修理ともにお引き受けできますが、例外的にROMを樹脂で封印しているようなECUは対応できません」と話す。

 今回持ち込んだGT-RのECUは、ROMを樹脂封印したタイプではなかったので、リフレッシュに加え、上記のGT-R専用メニュー「Long Life with Relief」も実施してもらった。その結果は……。

オーナーだからこそわかる違い

 もともととくに不調だったわけではないので、ECUをリフレッシュしたといっても何かが劇的に変わったわけではない。しかし、点火系回路のアップグレードが効いたのか、低回転のNA領域のトルク感が厚くなっているように感じられる。

 とくにターボが効き始める前後の3000回転付近で、負圧から正圧に移行するあたりでアクセルをちょっと踏み足したときに感じる力強さは、これまでとはひと味違う。おそらくシャシダイなどで計測しても分からないぐらいの差かもしれないが、オーナーであればその違いは体感できるに違いない。

 また真夏になり、燃費には厳しい季節になったにもかかわらず、梅雨明け前と燃費が大して変わらないということから、燃費も多少伸びたと推測できる。それ以上に、ECUがリフレッシュされたことで得られた安心感はもっと大きい。ポツポツと細かい不具合が出はじめてきた26年前のクルマだからこそ、少なくともECU系のトラブルの心配はないはずだと思える心強さは何とも言えない。

 繰り返しになるが、転ばぬ先の杖でトラブルが出る前、故障する前に専門家の診断を受けることをオススメしたい。

【詳しくはこちら】

取材協力 キャニーエクイップ

http://cannyequip.com/

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