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電気自動車のバッテリーを劣化させる急速充電の常用!電池の寿命を延ばす充電法とは?

電気を使い切らなくても満充電できる

 電気自動車(EV)に搭載されているリチウムイオンバッテリーを長持ちさせる使い方については、いろいろな説がある。結論をいえば、20~30%の残量を残しながら、80%ほどの充電を繰り返すのがよい。そして、これはEVもスマートフォンも同じで、要はリチウムイオンバッテリーの特性を活かすことが重要なのだ。

 かつて、電気をほぼ使い切ってから充電し、満充電を維持したほうがよいといわれてきたのは、ニッケル水素やニッケルカドミウム(通称ニッカド)の時代の話だ。

 ニッケル水素やニッカドバッテリーには、メモリー効果があり、これは電気を残したまま充電をはじめると、以後、その分の電力量しか充電できなくなる、いわば“電力量を記憶する”特性があった。そのため、電気がまだ半分残っているのに充電してしまうと、次にほぼ電気を使い切って充電しても、半分しか充電できないという症状が起こる。

 そのため、ニッケル水素やニッカトバッテリーを採用した家庭電化製品などの充電器には、充電残量が空になるまでまず放電し、そこから充電をはじめる機能を備えるものもあった。

 また、車載の12ボルトバッテリーは、鉛電池である。これは常に満充電であることを好む特性がある。したがって、充電量が少ない状態で放ったらかしておくと、満充電できなくなってしまう場合がある。

 

使い切る前に充電しても問題なし

 対するリチウムイオンバッテリーは冒頭に述べたように、使い切る前に充電してもニッケル水素やニッカドバッテリーのようなメモリー効果がない。理由は、充放電の仕方が本質的に異なるからだ。

 他のバッテリーが電極の材料を電解液によって化学変化させ、その際に生じる電子を移動させ電気を流しているのに対し、リチウムイオンバッテリーは電極材料が変化せず、電極材料に含まれるイオンをプラスとマイナスの電極間で移動させる仕組みを採用している。これには、電極の傷みが少なく、劣化が遅いという利点がある。

 プラス側の電極には、リチウムイオンを含む金属材料が使われ、マイナス側の電極は主に炭素でつくられている。充電の際は、プラス側からリチウムイオンがマイナス側へ移動し、放電ではマイナス側からプラス側へ移動する。

 ただし充電しすぎると、プラス極のリチウムイオンがマイナス側へ全部抜けきって、金属の結晶構造を壊すことで発熱し、バッテリーが膨張したり発火したりしかねない。過充電は、事故のもとになるので注意したい。

急速充電より普通充電がベター

 このようなリチウムイオンバッテリーの特性から、EV特有の充電方法が生まれる。すなわち、電気を使い切ってから急速充電器で一気に充電するよりも、行った先で駐車したら、普通充電器で少しずつ継ぎ足し充電をした方がよりバッテリーを長持ちさせることができるのだ。また、少しずつ充電することで、過充電などによる発火の危険性も小さくすることができる。

 近年、全国で設置が進んでいる急速充電器は、ガソリンがなくなったら満タンにするというエンジン車の使い方をそのまま転換したものといえるだろう。ところが、実はこの方式では、リチウムイオンバッテリーの特性に合っているとは言えないのだ。

 もちろん、普通充電器は急速タイプに比べ充電時間は長くなるが、立ち寄り先となる仕事場、スーパーマーケット、ショッピングモール、レストラン、土産物屋、道の駅など、数時間滞在するような場所へもれなく設置すればいい。用事を済ませている間に充電することで、リチウムイオンバッテリーに大きな負担を掛けず、なおかつ充電のための時間を別に割く必要もなくなる。

 普通充電器を使用する場合、当然ながら数十分や数時間の普通充電では満充電にならない。しかし、200V30Aで1時間充電すれば6000Wh(6kWh)の充電ができるわけで、日産リーフの標準車の場合で40km近く走れることになる。

 2時間買い物をしたり食事をしている間に充電すれば、その2倍の距離を走れる。また、職場などで充電する場合なら、8時間も仕事をすれば充電量は4万8000Wh(48kWh)とほぼ満充電となり、300km以上も走れることになる。

 

家庭での充電もあえて80%に

 家庭で充電する場合も、80%ほどの充電にとどめておく設定が可能だ。そして遠出するときだけ満充電に設定しなおせばよい。ガソリン車で、普段はあまり残量を気に掛けなくても、遠出の前にはガソリンスタンドに立ち寄って満タンにする発想と同じだ。

 また満充電にした場合も、そのまま置いておくのではなく、家庭で使う電化製品の電力をEVから賄えば、車載のリチウムイオンバッテリーの劣化を抑えられることになる。ちなみに、近年はEVの電気を家庭用電源に供給できるV2H機器を搭載する家庭用充電スタンドなども登場しており、次第にその数を増してきている。

 

 EVの充電は、エンジン車の給油と同じ尺度で考えるのではなく、その特徴を活かした使い方をすることが、資源を無駄にせず、バッテリーを長持ちさせるコツだ。これは、まさにスマートフォンと同様。こまめに充電し、電気を使い切ることなく、また常に満充電状態にしておかないのがリチウムイオンバッテリーの賢い利用法なのだ。

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