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渋滞中も便利な最新クルーズコントロール「ACC」、過信しすぎると痛い目に遭うケースとは

便利機能がもたらす危険なシーン

「ACC=アダプティブクルーズコントロール」はじつに便利な先進安全運転支援機能だ。従来のクルーズコントロールは車速を一定に保ってくれるだけで、前車との距離を保ってくれず、前車がいきなり速度を落とせば追突する可能性があった。アメリカの広大な土地の一本道を延々と走るようなシーンでない限り、もはや使い勝手はあまり良くない。特に、交通量の多い日本の高速道路においては、である。

 ACCはステアリングスイッチなどの簡単な操作で、セットした速度を上限として、任意の車間距離を保ったまま、前車に追従。前車がいない場合は、セットした速度で走り続け、前方にクルマが入ってきたら、車間距離を保った走行になる。

 また、これからの時代に不可欠な「全車速域対応型」や「渋滞追従型」と呼ばれる0km/hから機能するACCは、高速道路での渋滞時から完全停止まで対応。数秒の停止であれば、何もしなくても追従走行に復帰してくれたりする。数秒以上、経過しても、アクセルペダルを踏むか、RES=レジュームボタンを押すことで追従走行に復帰。まさに自動運転の入り口と言える機能なのである。

 ただし、車種によっては渋滞対応せず、約30km/h以上からでないと機能しないACCもあるので、クルマの購入時には、全車速域対応型、渋滞追従型であるかを確認したい。

 ACCのありがたみを最も強く感じるのは、やはり高速道路の渋滞時。しかも、長距離の高速走行でACCを使うと、下手にアクセルペダルとブレーキを踏む走行よりも、燃費が向上するケースもある。筆者の愛車もACC付きだが、東名高速(東京~御殿場間)の走行で、ACCを使い続けると約10%燃費が向上したデータがある。

 さらに、個人的に高速走行で常にACCをONにしている理由として挙げられるのが、「プレ自動ブレーキ」としての効果。前車との距離を一定に保ってくれるため、追突の心配が低減するというわけだ。また、うっかりして前車との車間が詰まることもないため、あおり運転と間違えられる心配もない。

 そんな便利なACCは、今や日産デイズ・ハイウェイスター、三菱ekクロス、ホンダN WGN、ダイハツ・タント(ターボ)、スズキ・ハスラー(ターボ)などの軽自動車にまで装備され、多くの車種に普及している時代。しかし過信しすぎると痛い目にあうことがある。

同じ車速をキープすることで生まれる危険性

 まず、一般的なACCは「セットした車速のまま走り続けてしまう」ということ。例えば、80km/hにセットしてACC走行をしていたとする。直線なら前車に追従、あるいは80km/hをキープして走ってくれるから快適そのものだが、カーブに差し掛かっても80 km/hで進入してしまう。カーブの曲率によってはかなり危ないシーンとなるわけだ。

 この場合、カーブ手前でいったん解除するか、あらかじめ速度設定ボタンを操作して、車速を落とさないといけない。多くのACCの速度設定ボタンの「-」を長押しすると、10km/hずつ車速を落としてくれることも知っておこう。

 高速道路の料金所にしても、前車にくっついていれば、前車に合わせて速度を落とし、再び自動でセットした速度まで再加速してくれる。しかし、そのつもりで前車のいない料金所に進入すれば、ETCゲートのバーに衝突する危険性もありえる。一般的なACCはマップデータや速度標識を読んでいるわけでないのだ。

 その点、日産スカイラインの「プロパイロット2.0(ACC機能含む)」は、日本車初の高精度3Dマップと7個のカメラ、ソナーを採用。高速道路のナビ連動ルート走行と同一車線での「ハンズオフ機能」を同時採用する。

 最大の売りであるハンズオフ機能は、約60~90km/hの速度域に限られるが(±10km/hの猶予があり、それ以上の速度域では従来のプロパイロットの機能になる)、高精度3Dマップがカーブなどを認識しているため、自動でカーブの手前から減速。コーナーを抜けるとスムーズに速度を復帰させるので安心感は高い。

 高精度3Dマップ搭載によって道路の速度標識も認識する先進のプロパイロット2.0だが、こちらも落とし穴がある。例えば、高速出口などで速度制限がいきなり40km/hになったりするケースでは、速度制限標識通り40km/hまで急減速。かなりの減速Gに見舞われ、それこそ、車両後方にピタリとついているクルマがいれば、追突されかねない事態になってしまうのが、悩みどころではある。

 さて、話を一般的なACCに戻すと、「再加速性能」というキーワードにも注目したい。ACC走行中に、料金所を通過し、前車が減速したあとの再加速、速度復帰もACCにお任せできるのだが、その再加速性能が穏やかすぎると、後続車に急接近、追突されかねない危険がある。

 ホンダ・ステップワゴン(2019年時点)など、再加速性能が穏やかすぎるクルマは、場面によっては安全のためにアクセルを踏んで加速する必要があることも知っておきたい。

 いずれにしても、高速走行の機会の多いユーザーにとって、全車速域対応型、渋滞追従型のACCは、クルマが快調に流れているシーンはもちろん、渋滞時でも非常に便利なのは事実。頻繁なペダル操作から解放され、運転のストレスを劇的に低減してくれる先進安全運転支援機能と言っていい。その便利さを過信することなく、安全・快適に使いこなしてほしい。

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