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「古い車の税金が高い」は正しいか否か、厳しい日本の税金制度が意味するもの

旧車増税は日本だけの制度ではない

 日本において車齢13年以上のクルマは自動車税や自動車重量税が重課される。いわゆる「旧車増税」と呼ばれる制度だ。これについて「古いものを大切にしないことを政府として良しとするのか」と憤る声も多い。

 日本国内で登録されている乗用車の平均車齢は8.6年。平均で8年を超えているので旧車増税の対象になるクルマは決して少なくない。一般社団法人「自動車検査登録情報協会」のデータから計算すると、普通乗用車で車齢13年以上は約20%、小型乗用車では約25%。乗用車全体でいえば、約22%が旧車増税の対象になっていると予測される。
*以下は13年経過の自動車税額早見表・年税額(乗用・自家用)

総排気量1リットル以下 33,900円
総排気量1リットル超1.5リットル以下 39,600円
総排気量1.5リットル超2リットル以下 45,400円
総排気量2リットル超2.5リットル以下 51,700円
総排気量2.5リットル超3リットル以下 58,600円
総排気量3リットル超3.5リットル以下 66,700円
総排気量3.5リットル超4リットル以下 76,400円
総排気量4リットル超4.5リットル以下 87,900円
総排気量4.5リットル超6リットル以下 101,200円
総排気量6リットル超 127,600円

 ごく一部の趣味人が旧車増税に不満を言っているのではなく、ドライバーの5人に1人が増税を課せられている状況だ。 さて、古いクルマの増税話になるとカウンターとして取り上げられることが多いのが、ドイツの「Hナンバー」だ。車齢30年以上のヒストリックカーで、ノーマル状態を維持しているクルマに与えられる特別なナンバーは、自動車税額の面でも優遇されていることは知られている。

古いクルマ特有の問題点とは

 しかし、ドイツにおいても旧車全般が優遇されているわけではない。ドイツにおける自動車税の基準は「排気量×排ガス浄化性能」といえるもので、触媒が備わっていないような時代の大排気量車には非常に高い自動車税が課せられている。

 車齢30年に達するまでの期間、高い自動車税を納めている「Hナンバー」という制度の影には、実質的な旧車増税といえる税制があったりするのだ。環境性能というと燃費の話ばかり注目しがちだが、ドイツの税制は環境負荷も問題であることを明示している。 燃費の悪さはCO2排出量に関わるものだが、排ガスの浄化性能による大気汚染のほうが短期的な問題としては大きい。日本でディーゼルエンジン車が減った理由として、東京都の「ディーゼル規制」が悪者のように言われることもあるが、この政策によって東京の空が澄んだと感じている住民も少なくないだろう。こと大気汚染については日本が先行したディーゼル規制は有効だった。 また、古いクルマの課題としては安全装備の面もあげられる。さすがに13年前のクルマであればエアバッグやABS、TRCくらいは装備されているが、ESC(横滑り防止装置)は備わっていないクルマが多いだろうし、2021年より新車装着が義務化になろうかというAEB(衝突被害軽減ブレーキ)を備えていないクルマがほとんどだろう。

 

安全装備のないクルマが抱えるリスク

 ちなみに、日本車として初めてAEBといえる機能を搭載したのはホンダ・インスパイアで2003年6月のことだった。クルマの進化は日進月歩。とくに先進安全機能については、ニーズが高まっている。現在では65歳以上の高齢ドライバーが、安全運転サポート車を購入しやすいように「サポカー補助金」が交付されるようになっているくらいだ。

 すなわち、古いクルマを大事に乗ることよりも、AEBなどの安全機能がついたクルマに乗り換えてほしいというのは社会的コンセンサスといえる。古いものを大事にすることで命が失われる可能性が高まるのであれば、最新のテクノロジーに置き換えることを否定できるだろうか。 旧車の自動車諸税を重課するという手法が全面的に正しいとはいわない。古い車を大切にし、整備することに重税が課せられるのはおかしいともいえる。しかし、旧車を大事にすべきと主張することは、環境面、安全面でのリスクを高める行為を是認するという面もあることは、一考すべきだろう。

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