サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

ホンダ車カスタムの両巨頭! 洗練の「モデューロ」と攻めの「無限」の違いとは

どちらもホンダディーラーで扱われる公式ブランド

 ホンダ直系のカスタマイズブランドといえば「Modulo(モデューロ)」と「無限」が二枚看板。クルマ好きならずとも、一度は耳にしたことがあるだろう。だが、それぞれの違いを正確に把握している人はどれだけいるだろうか。どちらも全国のホンダディーラーで取り扱われているし、デザイン違いの純正オプションくらいに思われていてもおかしくない。

 そんな認識も大きく間違っているわけではないのだが、せっかくならもう少し深く知っておくのもいいだろう。違いが分かれば今後のクルマ選びにも影響が出てくるかもしれない。ということで、両ブランドの「素性」を紹介しよう。

新車の開発メンバーにも加わるモデューロ

 まずはモデューロ。本田技研工業の子会社であるホンダアクセスが展開するブランドの1つで、同社はナビブランドの「Gathers(ギャザズ)」なども手掛ける。

 ホンダアクセスはホンダ純正アクセサリーの開発・生産を担う企業であり、モデューロのパーツもメーカー公式サイトの「Honda純正アクセサリー」のコーナーや、アクセサリーカタログに掲載されている。早い話、モデューロ=ディーラーオプションと考えていい。

 ラインナップはエアロパーツ、アルミホイール、サスペンションが中心。商品開発はクルマそのものの開発と同時進行であり、ホンダの自動車開発チームにモデューロスタッフも加わる。だから新型車がデビューしたと同時に、モデューロパーツもきっちり用意された状態になっている。純正アクセサリーなのだから当たり前といえば当たり前だ。

 販売は全国のホンダディーラーにて。新車購入と合わせてモデューロも装着するパターンが多いだろう。そこでマイカーローンを組む場合は、パーツや取り付け工賃も車両代に含まれるので、ローンの支払いは一本化される。

 もちろんすでにクルマは持っているという人でも、モデューロパーツを追加することは可能。現行型ならホンダ公式サイトの純正アクセサリーのコーナーで紹介されているし、型落ちになってもホンダアクセスの「用品適用検索システム」を使えば、愛車に装着できる純正アクセサリーや在庫状況を知ることができる(ただし初年度登録から9年までのクルマ)。

さり気ないスポーティ感を味わえるエアロパーツ

 純正アクセサリーである以上、クオリティは純正同等を目指して作られている。

 エアロに関しては純正バンパーと同素材。そこだけ先に劣化したり色褪せたりする心配はないし、フィッティング性能も高い。さり気なくスポーティさを演出できるデザインも魅力で、いわゆる改造車の雰囲気は薄いから、派手さを求めない人や高年齢層も気兼ねなく楽しめるだろう。

 空力等も計算の上で設計されている。それも風洞試験やテストコース走行を経て作られた「きちんと裏付けのある造形」が強み。ソレっぽい見栄えだけで仕上げられたものではないのだ。また安全性も重視しており、普段の走行の支障にならないか、万が一の時の歩行者保護性能はどうか。そうしたところまできちんと考慮されているのがモデューロ。

 だから安心して使える反面、あまり派手さはない。他の人とハッキリ違いを出したい、ドレスアップして目立ちたいというユーザーには向かないかもしれない。だが最近のモデューロはよりスポーティな「エアロバンパー」タイプが増えている。これくらい主張があるなら十分という人も多いのではないか。

ホイールは車種や性格に合わせて作られる

 アルミホイールも人気商品。もともと、モデューロはホイールから始まったブランドでもある。

 他のアフターホイールと違う点は、「このクルマにこのホイールの組み合わせたらどうなるか」という具体的なマッチングまで考えられていること。

 基本的にアルミホイールは汎用品。サイズやホール数などが合えばどんなクルマにも付く。だからいろいろと選ぶ楽しみもあるのだが、モノによっては似合う/似合わない、物理的に履ける/履けないといったケースも出てくる。一方でモデューロのホイールは、車種ごとに開発されているので、サイズはもちろん、デザイン的にもマッチする(もちろん好みにもよる)。

 新車の販売は終了したが、N-BOXスラッシュ用のMC-001ではレコード盤のような個性的なガーニッシュを採用。カラーも4色から選べるようになっており、このクルマのキャラによく合っていた(現在もN-BOX用としてラインナップ中)。

 またS660用のMR-R01は、剛性バランスを工夫することでホイールを意図的にたわませ、タイヤの性能をフルに引き出すという画期的なモデルだ。ピュアスポーツカーをより楽しめる設計になっている。

走りやすさを追求したサスペンション

 上質な走りを実現するモデューロのサスペンション。一般的にサスペンションを交換する=乗り味が硬くなる、といったイメージがあるかもしれないが、モデューロの場合は車体とのバランスに着目し、その車種に最適なセッティングが施される。

 シビックタイプRなど、もともとの足が硬いクルマの場合、むしろ柔らかめになる(減衰力の調整にもよる)こともあるという。

 具体的なドライビングフィールは車種によるとしかいえないが、共通するのは「走りやすさ」だろうか。路面からの衝撃はしなやかに吸収し、コーナリングではスッと素直に旋回してくれる。どんなシチュエーションでもタイヤの接地感をしっかり得られるから、少々飛ばしても怖くない。運転が得意な人にはもちろん、苦手な人にもぜひ勧めたくなる。

 車高については、旧型車用であれば約2センチのダウン仕様が多かったが、現行世代の「Honda SENSING」が搭載された車種の場合、基本的に変わらない。これは自動ブレーキのセンサー位置の関係によるもので、システム上、車高を変えにくいのだ。ローダウンしたい、足をガッチリ固めたいという目的であれば、他の社外サスペンションを選んだほうがいい。

走りも見た目も特別なモデューロXという存在

 コンプリートカーを知っているだろうか。各種カスタマイズパーツをあらかじめ装着した状態で販売されるクルマのことだ。実はそれがモデューロにもあり、「モデューロX」というネーミングでラインナップしている。

 世の中にはさまざまなコンプリートカーが売られているが、よくあるのが「エアロはA社、タイヤはB社、ホイールはC社、サスペンションはD社で、車両込みで●●●万円。クルマとパーツを別々で買うよりも●●万円安くなります」というパッケージ。イジる前提でクルマを買うなら、コツコツやるより一気にやった方がコストを抑えられるし、最初からカスタム済み車両に乗れるのもメリットだ。

 モデューロXも、車両+パーツ+工賃込みで販売されるコンプリートカーなのだが、根本が違う。1台丸ごと、見た目だけでなく性能面までフルコンプリートしたクルマといったらいいか。エアロの空力特性を踏まえた上でのサスペンション設定だったり、タイヤ&ホイールの選定だったり。さまざまなパーツ・セッティングを緻密に組み合わせ、走行テストを繰り返して練り上げる1台。ドリキンこと土屋圭市氏が開発アドバイザーを担当していることでも有名だ。

 だから普通のモデューロパーツとはスペックやデザインが異なる(一部共通のパーツもある)。フロントに関しては丸ごと交換の専用エアロバンパーが設定され、顔付きもガラリと変化。モデューロエアロに派手さはないと前述したが、ことモデューロXのエアロに関してはけっこうアグレッシブなので、オリジナリティを出したいユーザーの心にも響くことだろう。

 1つ誤解してほしくないのは、モデューロXはスポーツ走行に特化しているわけではない点。路面状況に左右されず、思いのままに操れること。後席の乗り心地を損なわないこと。乗る人間すべてに気持ち良さを提供すべく作られている。それでもいざテストコースを走ってみると、いいタイムを叩き出すというから凄い。

 基本的にパーツ単体では買えず、対応車種も限られる。現在はステップワゴン、フリード、S660、ヴェゼルの4車種のみだが、おそらく今後、東京オートサロンにコンセプトカーとして展示されていたフィットもラインナップに加わると思われる。

【画像ギャラリー】モデューロXの最新作・FREED用キットの画像

F1優勝実績もある名門モータースポーツコンストラクター

 ホンダのワークス、無限(MUGEN)。もともとはホンダ創業者の長男・本田博俊氏がレース車のエンジンを作るために立ち上げたブランドで、1973年の設立以来、これまで世界中のレースで戦い、同時に数々のチューニングパーツを生み出してきた。

 90年代にはF1にも参戦。4度の優勝を飾った輝かしい経歴を持つ。30代中盤以降の世代では、F1で無限を知ったという人も多いだろう。

 今も昔も、扱うのは二輪・四輪含めてホンダ車のみ。スーパーフォーミュラやスーパーGTではホンダ系マシンにエンジン供給を行うなど、国内外のホンダのレース活動も無限が担う。

 それだけ深い関係ながら、無限を運営している株式会社M-TECは、本田技研工業の子会社というわけではない。パーツメーカーとしても、モデューロが純正ベースであるのに対し、無限はレースの香り漂う独自の商品を展開。両者ともホンダ直系かつスポーティ志向というのは共通しているが、きちんと色分けはされている。

 無限パーツのおよそ8割はホンダ正規ディーラーで販売され、一部の競技用以外はすべて保安基準適合。もちろんメーカー保証も効くし、一般ユーザーからすると純正オプション品のような安心感がある。それでいて純正とは明らかに違うスポーツマインド──「無限らしさ」を味わえるのが魅力。特に前述のF1世代には海外も含めて絶大な人気を誇る。

幅広いニーズに応えられるラインナップ

 商品のバリエーションは実に豊か。エアロをはじめ、ホイール、サスペンション、エキゾースト、ブレーキ関係など機能系部品の他、LEDテールライト、ミラーカバー、ドアバイザー、ドアハンドルプロテクターなどの外装系、ステアリング、シフトノブ、スポーツペダル、フロアマット、エンジンスタータースイッチといったインテリア系もあり。

 さらにはエアフィルターやエンジンオイル&エレメント、ブレーキフルードといった油脂類、ホンダ&無限ファンの心を掴む各種アパレルグッズまで展開する。

 最近はカーボン素材のアイテムにも力を注いでおり、グリルガーニッシュ、リアウイング、ルームミラーカバーなど多数設定する。一般的に市販品のカーボンといえば、ほとんどはウェットカーボンを指すが、無限のカーボンパーツは軽さと剛性に優れたドライカーボン製がメイン。自社工場には成形のためのオートクレーブも備える。

 いずれのパーツも基本路線はスポーティかつレーシー。車種にもよるが、レーシングカーのテイストを汲むアグレッシブなデザインがウリだ。そこには実際のモータースポーツで培ってきたノウハウが生かされており、特にエアロは優れた空力性能を持っている。レース車両のように風洞試験やCFD(流体解析)を駆使して造形されることもあるという。

 ただスポーティなだけでなく、たとえば新型フィット用のエアロは「ダッシュ」「スキップ」という2タイプを設定。ダッシュはいかにも無限らしいレーシーさを味わえるが、スキップはカジュアルに楽しめる仕様とするなど、より広いニーズに応えられるよう配慮。

 今年1月の東京オートサロンにコンセプト出展した際には、2タイプを1台のフィットで半々ずつ表現するなど、その展示方法にも注目が集まった。

純正OPより「少し攻めた」カスタマイズを楽しめる

 モデューロとの違いでいうなら、エキゾーストシステムに力を入れているのもレーシングエンジンを自ら手掛ける無限ならでは。

 ご存じの方も多いと思うが、昨今は騒音や排ガス関連の規制が厳しく、合法的な社外マフラーが少なくなっている。車検対応とするには、国土交通省の定める事前認証制度をクリアしなくてはならず、それには多くの手間とコストが掛かってしまうからだ。

 そんな中、無限はラインナップ車種のほぼすべてに交換用スポーツマフラーを設定し、自社施設にて製造している。いずれも車検対応だから音量は控えめではあるが、それでも排気効率など純正とは明らかに異なるし、高品質なステンレス製(フルチタン製や出口のみチタンやカーボン製品もあり)で耐久性も高く、軽量化にも貢献している。エアロと合わせて導入すればスタイリングもまとまる。

 またアルミホイールも純正よりワンサイズアップが基本。例を挙げると、N-BOXであれば純正サイズは14×4.5J inset40と15×4.5J inset45であるが、無限はN-BOX用として15×5J inset45と16×5J inset45を用意する。

 インチアップする場合は当然タイヤも換える必要が出てくるものの、大径化に伴い基本走行性能が向上。代わり映え効果も高いので、ドレスアップ志向のユーザーには嬉しいラインナップだろう。

今後のレース活動やパーツ展開も乞うご期待

 無限はワークスチューナーであり、モータースポーツを主とするブランドだ。

 モデューロが日常使いをベースにプラスαのスポーツ感を楽しむカスタマイズとするなら、無限は「サーキットベースだけど日常使いも楽しめるカスタマイズ」というイメージか。シビックタイプRやS660ユーザーからの支持率がダントツに高いのもうなずける。

 しかし、実は軽自動車のNシリーズ4兄弟や、オデッセイ、ステップワゴン、CR-V、ヴェゼルなどのミニバン・SUV系にも人気が高い。これらは特に速く走るためのクルマではないのだが、だからこそ本格派のスポーツテイストを取り入れることで、見た目も走りも大きく変えられる。商用車のN-VANを無限パーツでカスタマイズする、そういうところにも面白味がある。

 そもそもスポーツカーが少ない時代だ。保安基準が厳しくなったこともあるが、かつてのように速さを求めてイジる人は激減した。それでも無限が魅力を失わないのは、レース活動やカスタマイズパーツ開発を通して、走る楽しさ、カスタマイズの楽しさを訴求し続けてきたからだろう。

 コロナ禍の影響でスケジュールが押しているが、今年も無限はスーパーフォーミュラやスーパーGTという国内トップカテゴリにエントリー。スーパーGTでは若い世代へアピールする狙いも込め、新たにレッドブル・ジャパンとパートナーシップを結んでレースに挑む。チーム「Red Bull MUGEN」の活躍と共に、ますます魅力的なカスタマイズパーツが生まれることを期待したい。

 なお、東京オートサロンで披露されたマイナーチェンジ後の無限S660については、今夏中にフロント・サイド・リアのエアロパーツがリリースされる見込み。

 その後エアロボンネットやエンジンフード、ステアリングなども随時追加される予定。S660ユーザーはそちらもお楽しみに。

【画像ギャラリー】話題の新型フィット用・無限ボディキットの画像

【取材協力】
◆Honda Access https://www.honda.co.jp/ACCESS/
◆Honda Access 用品適用検索システム https://sfh.honda.co.jp/T001Action.do
◆無限 http://www.mugen-power.com

モバイルバージョンを終了