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【試乗】単なるノートの「上級グレード」ではない! 日産ノートオーラが「小さな高級車」と断言できる理由とは

小さな高級車を実現した1台

 これまで、日産のテストコースで試乗していた日産ノートオーラだが、いよいよ晴れて公道を走る機会を得た。コースは高速道路と一般道、グレードはG FOURレザーエディションだ。

 ところで日産ノートオーラは、1.2Lのガソリンエンジンで発電してモーター走行を行う。電欠を心配せずにEV走行を味わえるシリーズハイブリッド=e-POWERだけで勝負に出た、日産ノートの単なる上級グレードと思うのは間違いだ。

エクステリアはルーフとフロントドア以外はノートとまったくの別物

 何しろ、プレミアムコンパクトとして内外装の上級・上質化はもちろん、全幅1735mmとなるノート初の3ナンバーとなるワイドボディ、ノート比+20mmのワイドトレッドを採用。エクステリアはルーフとフロントドア以外はノートと別物であり、間もなく登場するはずのピュアEVのアリアと共通するデザインの薄型LEDヘッドライト、横一直線のLEDリヤコンビランプをあしらう。 ワイドボディと相まって、堂々たる存在感、先進感、プレミアム感を漂わせるのは、タイヤをノートが装着する16インチのエコタイヤから、欧州車でも採用例の多い17インチのBSトランザに変更しているからでもある。

プレミアム感あふれるインテリアにも注目

 インテリアもプレミアムな作り込みを徹底している。12.3インチのTFTアドバンスドライブアシストディスプレー=デジタルメーターと、連続する9インチの日産コネクトナビ画面(メーターパネルのサイズはノートと同等だが、見え方が異なる)の先進感が際立つ。 さらにインパネ、センターコンソール、ドアトリムには上質感を演出するツイード調織物が巻かれ、高級感ある微細加工の木目調パネルがあしらわれるなど、プレミアムコンパクトらしいデジタルコクピットに仕上がっているのだ。

国産車としてかつてないほど日本人向けに仕立てたシートに好印象

 しかし、筆者がそれ以上に感動したのが、標準のツイード調織物と合皮のコンビシートと、レザーエディションとして3層構造の本革シートを用意しているシートのかけ心地だった。

 どちらも体の滑りを抑制するキルティングラインが高級感を漂わせる表皮デザインで、インテリアの上級感をさらに高めている。同時に、お尻をふんわりと沈み込ませ、背中を優しく包み込んでくれる心地よいかけ心地と、フランス車的な体重によって上半身をホールドしてくれる機能まで、コンビシート、本革シートともに併せ持つ。 筆者の体重65kgだと、多くの本革シートは表皮の張りが強すぎるのだが、この本革シートは、国産車としてかつてないほど日本人向け(!?)の、ソファ感覚で心地よく快適に座れる極上のシートだと思えてならない。実際、テストコースを何周も走り続け、そして今回の試乗で約100kmを走行しても、まるで疲れないシートなのである。 パッケージ的には、ワイドボディであってもノートと変わらない。それは前後席のスペース、ラゲッジルームの寸法も、である。ただし、そもそもが、ゆとりある室内空間、ラゲッジルームの容量の持ち主なのだから、後席の居住性や荷物の積み込みに心配は無用だ。

ノートに対してモーター出力が18%もアップした

 ノートオーラが見せかけだけのプレミアムコンパクトではない証は、パワーソースにも見て取れる。e-POWERのモーター最大出力はノートの116psから136psに、最大トルクも28.6kg-mから30.6kg-mに引き上げられているのだ(1.2Lエンジンのスペックは不変)。 つまりモーター出力で18%、トルクは7%の向上となる。リヤも回生し4輪をモーターで駆動・制御する次世代電動4輪駆動システムを持つ4WDになれば、ノートと同スペックのリヤモーター68ps、10.2kg-mが加わる。

上級高級車に匹敵する車内の静かさ

 さて、そんなプレミアムコンパクトのノートオーラを公道で走らせてみた。シートのかけ心地の良さや上質極まるインテリアの満足度以上に驚かされるのが、電動車ならではのスムースな走り。上級高級車に匹敵する車内の静かさ(エンジンを高回転まで回しても!!)、そして乗り心地の良さだ。 今回はレザーエディションの4WDモデルに試乗したのだが、荒れた路面やゼブラゾーンですら、そうと気づきにくい快適無比な、ボディのしっかり感も強く感じられる上質な乗り心地のフラット感が一段と高まる印象だ(テストコースでのFFモデルとの乗り比べを含め)。というのも、4WDモデルはFF比110kgの車重増だけでなく、リヤモーターの回生が効いているのである。 リヤモーターはとくにアクセルオフ、減速時に車体がつんのめる動きを抑える効果もある。事実、日産のデータによると0.15G減速時のピッチ角(加減速による車体の挙動/上記同様)は、FFの約20%減にもなるという。だから走行中のフラット感がFF以上に保たれるというわけだ。 ちょっとペースを上げてみると、ノートオーラの4WDシステムが、生活ヨンクではなく、リヤ駆動を積極的に使うダイナミクスに振られていることがわかる。ステアリングを右へ、左へと切り返すシーンでは微小舵角での応答性が向上し、もちろん、4輪の駆動による安定感も鉄壁だ。 山道のようなカーブでのライントレース性、安定感、安心感の高さもまた、プレミアムなのである。ドライブモードは例によって、エコ、ノーマル、スポーツの3モードで、エコとスポーツでは、アクセルオフでの減速Gの発生=ワンペダル機能が働く。

 FF/4WDともに以前よりずっと自然な減速感が得られるようになったのは大歓迎。だが(ノートも)、もっとも軽快に、ガソリン車感覚で自然に走れるのは、アクセルオフでの減速Gがほぼ発生せず、走行中にエコモードから切り替えると、クルマがフッと軽くなったようになったようにも感じられるノーマルモードだと感じる人は少なくないはずだ(e-POWERらしくないとも言えるが)。

最小回転半径が意外にも大きい

 ただ、小回り性だけは褒められない。ワイドボディにノートより大径の17インチタイヤを履いているのだが、最小回転半径は5.2mと、ノートの4.9mより小回りが効かない。Uターンや駐車シーン、料金所での幅寄せなどで、ノートのようにはいかないのだ。 もっとも、3ナンバーサイズの国内外のコンパクトカーとは同等であり、もっと言えば、ノートオーラはダウンサイザー需要も多い。そのため、これまであまり小回りの効かないクルマに乗っていたユーザーにとっては、それほど気にすることはないかも知れない。

静かな室内空間だからこそわかるハイクラスオーディオ

 試乗車には、プロパイロットと日産コネクトナビ(カーブ手前減速制御などをしてくれるナビリンク機能を使うなら必須)とのセットオプションとなる、前席ヘッドレストにもスピーカーが埋め込まれたBOSEパーソナルプラスサウンドシステムが装着されていた。BOSEらしい低音が効いた臨場感あるサウンドも、車載純正オーディオとしてはハイレベル、文句なしである。コンパクトカーとして例外的な静かな室内空間だからこそ、意味あるハイクラスオーディオではないだろうか。 ちなみに、ノートオーラのベースグレードとなるGと、ノートの実質的メイングレードXとの価格差は42万3500円!! 一瞬、プレミアムコンパクトだけに価格アップもすごい……と思ってしまいがちだ。

 だが、じつはノートオーラでは標準装備となる360度カメラ、デジタルルームミラー、後側方車両検知警報などの先進安全運転支援機能、アダクティブLEDヘッドライト、アルミホイールなどの価格を考慮するとプラス25万1900円(税込)となり、価格差は17万1600円まで縮まる。 さらにノートオーラにはワイドボディや、より上質かつかけ心地の良いシート、専用デジタルコクピットなどが与えられているのだから、むしろお買い得なのは(ノート比)こちらと思えたりする!!

高齢者の乗り降りがしやすいリヤドアの開口部

 個人的には、乗り心地面でも優位な4WDがお薦めで、クルマ酔いしやすい同乗者にも、フラット感溢れる走行感覚は歓迎されるに違いなく、コンパクトカーだと長距離、長時間ドライブはキツい……そんな先入観あるユーザー、ダウンサイザーにも最適だろう。また、リヤドアが大きく直角近くまで開くため(ノートも)、開口部が広く、高齢の親を後席に乗せるのにも適していそうだ。 日産ノートオーラ、それは国産コンパクトカーとして始めて、内外装の仕立てや装備だけでなく、走行性能や快適性、安心感(SOSコールやオペレーターサービスもあり)にまで踏み込んだ、真の意味でのプレミアムコンパクト。小さな高級車を実現した1台と言っていい。

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