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グラム単位の軽量を実施! サーキットで乗ってわかった「R35GT-R NISMO Special edition」その進化と深化

R35GT-R最新モデルをサーキット試乗

 9月14日に発表された「R35GT-R T-spec」は当選倍率20倍を超える抽選となった。日産はひと言も発していないが、これが「最後のGT-R」ではないかと噂され、人気に火を付けたようだ。そのひと足先の4月14日にお披露目された「R35GT-R NISMO Special edition」は、徹底した軽量化と精密性を突き詰めている。まさに究極と言えるこの2台のGT-Rを岡山国際サーキットで走行する機会を得た。

初出:GT-Rマガジン162号

NISMO Special editionとT-specが持つ特別な性能とは?

 まず最初に、今市場を賑わわせている2台のGT-Rについて簡単に説明しよう。9月14日に発表された「R35GT-R T-spec」は、通常の「Premium edition」と「Track edition engineered by NISMO」というふたつのグレードをベース究極の走りを追求したというモデル。専用カーボンセラミックブレーキやカーボン製リヤスポイラーなどを備えており、「Premium edition T-spec」は専用アルミ鍛造ホイール(R35NISMOと同サイズ)を装備するため、サスペンションも専用セッティングが施されている。

 対して「R35GT-R NISMO Special edition」はカーボン製エンジンフードをクリア塗装のみで剥き出しとし、ピストンリング、コンロッド、クランクシャフトなどは高精度の重量バランス取りが行われている。R35NISMOのなかでも、より性能に特化した特別仕様車なのである。T-specもNISMO Special editionもGT-Rの2022年モデルとして発表されている。

開発者が意地を見せた徹底した軽量化と精密性向上

 この「R35 GT-R NISMO Special edition」と「T-spec」にクローズドコースで試乗する機会をもらうことができた。ステージは『岡山国際サーキット』。スーパーGTも開催されるテクニカルな国際格式サーキットは、R35のポテンシャルを解き放つのに打って付けである。「青空よりもグレーに、路面の色よりもブルーに」を狙って採用された新色の「ニスモ・ステルスグレー」は、なるほど、サーキットで一層映えるカラーだ。

 試乗前に車両開発責任者の川口隆志氏にSpecial editionについて話を聞くことができた。驚いたのはまさに「グラム単位」で実行された軽量化。カーボン地剥き出しのクリア塗装としたボンネットフードで約100g、というのは発表会でのプレゼンテーションでも解説していたが、ホイールリムに赤いライン塗装を施すにあたり、その塗料分だけ重くなることを嫌い、ホイール側をわずかに削ったのだという。結果、塗料分を相殺するどころかホイール1本当たり3g軽くなったというから驚くほかない。

 また、パールやメタリックではなくソリッドカラーの専用色を用意したのも、ボディを少しでも軽くしたいという思いがあったからそんなことを明るくさらりと言ってのける川口氏だったが、そこにはチーフエンジニアとしての意地とプライドを感じずにはいられなかった。

ミクロン単位で精度を向上したまさにスペシャルなエンジン

 まずはR35 GT-R NISMO Special editionでコースイン。R35 NISMOでサーキットを走るのは’19年6月に十勝スピードウェイでMY20に乗って以来。先の軽量化と高精度バランス取りを施したエンジン以外はとくに仕様は変えていないとのことだったが、前にも増してボディが強靱になっていると感じた。長年作り続けていることで職人の技と経験値が上がり、自然と精度が高まっているという話も聞いていた。これらはカタログ上の数値には表れないモノだが、もしかしたらそういった「塵も積もれば」がまとまって押し寄せてくると、実際のドライブフィールとしても違いが体感できるのかもしれない。

 Special editionの最大の注目ポイントと言えるのが、高精度バランス取りの専用エンジンである。もともとR35のVR38DETTは「匠」と呼ばれる専任の職人が一基ずつ手作業で組み上げているだけに、量産車としては異例とも言えるレベルでバランスが整っている。それをさらにミクロン単位で突き詰めていったというのだが、その違いが乗ってわかるレベルなのかどうか、じつは少し心配していた。

 だが、慣熟後にアクセル全開加速を試みると、明らかにエンジンの回転感が軽く、タコメーターの針は淀みなく7000rpmまで弾けていく。しかも、エンジンのメカニカルノイズ自体が通常のVR38DETTよりも小さく感じる。気のせいかとも思ったが、後に乗ったT-specのエンジン音のほうが明らかに大きく、荒々しく吹き上がるようにすら感じた。

 ターボ本体を含めて、NISMOは専用チューニングのエンジンを搭載しているだけにイコールでの比較にはならないかもしれないが、「クォーン」と粒の揃った快音を響かせながら加速するさまは、完成度の高いフルバランス取りのチューンドRB26DETTを彷彿とさせる。

 コーナリングとブレーキングのパフォーマンスは、ナンバー付きのノーマルカーとは思えないほど限界点が高く、高剛性のレカロ製バケットシートのお陰で身体が完璧にホールドされるため、どんな状況でもドライビングに集中できる。GT-R NISMOの真のポテンシャルを味わうなら、やはりサーキットに限ると再認識した。

街乗りだけでなくサーキットも満足させるT-spec

 一方、プレミアムT-specはNISMOに比べると、ロール/ピッチングともに大きめではあるものの、動きに軽快感があって思いのほか安心して走行することができた。サーキット走行を楽しみたいなら間違いなくNISMOのほうが満足度は高い。一方で、タイムアタックのような速さではなく、自分のペースで安全にR35の性能を引き出したいという向きにはT-specという選択肢もアリだと思う。制動力の高さのみならず、基準車のスチールローターよりも圧倒的に「持ちが良い」カーボンセラミックブレーキの美点は公道はもちろん、サーキットでも生きてくる。

「GT」と「R」を突き詰めながら、双方の良いところ取りをしながら進化してきたR35。街乗り=T-spec、サーキット=NISMO と限定する必要はない。機会があれば、R35 NISMO Special editionをツーリングに連れ出してみる必要もありそうだ。

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