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「GT-R」ではない「R32スカイライン」について語ろう! 日産が誇る名車「8代目スカイラン」とは

R32型スカイラインGT-R

ケンメリGT-R以来、16年ぶりの復活となったR32型スカイラインGT-R

GT-Rだけじゃない! R32スカイラインの名車たる所以とは

 日産のなかで歴史あるモデルとして愛され続けるクルマがある。その1台がスカイラインGT-Rで、初代のハコスカGT-Rはレースで活躍して伝説となった。近年で言えば1989年に登場した第二世代最初のR32スカイラインGT-Rの衝撃は相当なものだった。現在スカイラインとGT-Rは別のクルマになってしまったが、スカイラインとGT-Rが蜜月関係にあった、懐かしのR32スカイラインを振り返りたい。

R32型でGT-Rの称号が16年ぶりに復活

 R32スカイラインは、おそらくGT-Rもあることが前提で作られたスカイラインだといって良いだろう。初代スカイラインGT-R(ハコスカ/PGC10・KPGC10)はレースに出るために無理やりにでも作り出したモデルであったが、2代目スカイラインGT-R(ケンメリ/KPGC110)はレースには参戦せず。搭載エンジンは初代を踏襲するも、販売期間は約4カ月とわずかで製造台数は200台以下であった。その後、スカイラインGT-RはR32型で復活するまで16年間に渡り途絶えてしまう。

 まずR32スカイラインで注目したいのはそのスタイリングだ。R31スカイラインにS13シルビアのエッセンスをミックスしたようなシャープなスタリングは、一部モデルにプロジェクター式ヘッドライトを採用。配光のためのレンズカットが入らないすっきりしたフロントマスクは、フロントグリルが控えめにデザインされ、バンパーグリルから冷却を行った。フロントの中央部が先端となる鼻先や、左右フェンダーに向けて後退していくようにカーブを描くバンパーはエアロダイナミクスを感じさせるもので、サイドもフロントのウインカーから生まれたラインがフェンダーを通り、後部までスッキリの伸びる様はスタイリッシュであり、走りを楽しむためのクルマという主張がデザインにも表れていた。

ハンドルから手を放さず操作できるサテライトスイッチを採用

 キャビンは多少狭くなってしまうが、柔らかさが感じられる各ピラーとサッシュレスドアの組み合わせもあり、R31スカイラインのキャッチコピーであった「都市工学」はこちらの方がふさわしいと思えるほど現代的だと感じたもの。同時期に正統派4ドアハードトップのローレルと、新感覚個性派セダンのセフィーロの登場もあって、スポーツサルーン&クーペとしてスカイラインらしいスポーティさが多くのファンを魅了した。

 それはインテリアも同様で、包まれ感のあるシートはそれまでスカイラインファンだった叔父様方から、『座面が長すぎて太ももがシートに当たる』などと言われたそうだが、年々伸びていった日本人の平均身長に合わせたサイズを採用。メーターは大きな速度計と回転計は非常に見やすく、チラッと見るだけで認識しやすいものであった。また、室内装備最大の特徴であったメーターフードに操作スイッチが備わるサテライトスイッチは、ステアリングからいかに手を放さず運転できるかを考え抜いたもので、スカイラインはあくまでも走りが主体であることを主張していた。

利便性を多少犠牲にしてでもボディ剛性を追求

 そしてこの時期に日産が掲げた901運動(1990年代までに技術の世界一を目指す、クルマ作りを目標とした運動)をご存じの方も多いと思うが、じつはボディの作り込みからして走りにこだわった。室内空間は狭く、トランクはバンパー付近から開く大開口タイプが主流となるなかで、R32スカイラインは開口部が狭い設計を採用。全高もローレルやセフィーロよりも低い1325mmに抑えられ、細部にまで突き詰めたボディ剛性を最大限に引き出そうとしていたことが、これらの設えから理解することができた。

 サスペンションは4輪マルチリンク式を採用して走りの良さを追求。同時期の6代目ローレルと初代セフィーロもすべて同じ方式が採用されていたと思われがちだが、4輪すべてがマルチリンク式なのはスカイラインだけで、上記のローレルやセフィーロの4WD車こそ4輪マルチリンク式だが、FR車のフロントはストラット式であった。

 ちなみにマルチリンク式はメルセデス・ベンツが先鞭をつけた当時話題の新しいサスペンション形式で、日産は研究を積み重ねて満を持してスカイラインに採用。その理由は、やはりGT-Rがあることに加え、スポーツクーペがあったことだろう。スカイラインはそれだけ走りにこだわったモデルなのだ。

1.8L直4から2.6L直6ツインターボまで多彩なエンジンをラインアップ

 エンジンは直4の1.8L(CA18S型)から直6ターボの2.6L(RB26DETT)まで、多彩なラインアップであった。直4なんてあったの?(1.8のグレード名はGXi)という声が聞こえてきそうだが、元々直4からスタートしたスカイラインのエンジンは、8代目のR32スカイラインまで搭載されており、安価なスカイラインとして支持されていた。

 そして7代目(セブンススカイライン/R31型)から採用されたRB型直6エンジンは実力派揃いで、SOHCのRB20DE(GTEグレードに搭載)は最高出力125ps/5600rpm・最大トルク172N・m/4400rpmのスペックを持ち、レギュラーガソリン仕様ながら低回転のトルクが分厚く、他モデルよりも0→60km/h加速なら抜群の瞬発力を誇ったほど。当然、MTで適切なペダル及びシフト操作が必要になるわけだが、非力なエンジンゆえにかえってアクセルペダルをたくさん踏めることから密かなファンも多かった。

 売れ筋モデルのGTSに搭載されたRB20DEは、最高出力155ps/6400rpm・最大トルク184N・m/5200rpmと凡庸ながらも、DOHCらしい伸びやかさと直6ならではの好バランス、高回転まで回るエンジンを楽しむことができ、充実した標準装備もあったことで好調なセールスを記録。ひとりでドライブしても勿論楽しいのだが、普段から家族や荷物を載せていても十分なパワーがあり、ゆとりあるスポーツモデルであった。

 GTS-tタイプMに搭載された2L直6DOHCターボのRB20DETは、最高出力215ps/6400rpm・最大トルク265N・m/3200rpmのターボならではの高出力が魅力で、GT-Rの影に隠れがちだがFR車を操る楽しさ、4ドアの利便性(2ドアもあるが)などなど数々の魅力にあふれ人気を博した。なおRB20DETを搭載するGTS-4にもGT-Rと同じ4WDシステム「アテーサE-TS」が備わり、GT-R(RB26DETT)ほどの高出力はいらないものの、瞬発力のある走りが欲しいというユーザーからも支持されていた。

4ドアのスカイラインGT-R“オーテックバージョン”も誕生した

 その後、1991年のマイナーチェンジでGTS25に搭載の2.5L直6DOHCのRB25DE(最高出力180ps/6000rpm・最大トルク226N・m/5200rpm)を搭載したモデルや5速AT仕様を追加。1992年にはオーテックジャパンが手掛けたスカイラインGT-Rの4ドア車で、もちろんRB26DETTをNA化した専用エンジンを積むオーテックバージョンも発売。多くのファンから支持された結果、充実したマイナーチェンジや追加モデルの登場もあってR32スカイラインは現在でも中古車市場で人気を集めている。

 そしてその素晴らしさはR33、R34へと継承され、現在ではスカイラインから独立してGT-Rと離別してしまったものの、スカイラインの長い歴史のなかで紆余曲折しながらも常に走りを追求──とくに901運動により格段に走行性能を高めたR32型以降のスカイラインは、上質なスポーツサルーン&クーペであり続けた。

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 残念ながら現行型のV37スカイラインは日産唯一のFRセダンとなってしまったが、今後もスカイラインの名は継承されていって欲しいし、GT-Rが神格化されるなかでその礎を築いたスカイラインは、電動化を急ぐ日産において、今後も存在感を示し続けていって欲しいと切に願うばかりだ。

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