サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

【アウトドアからタウンユースまで】メルセデス「EQB」は多彩なライフスタイルに応える3列7人乗りSUVでした。現実的なEVの選択肢としてあり

エンジンを搭載していないのでグリルレスでも問題ないが、メルセデス・ベンツの伝統に則ったフロントマスクデザインとなる

メルセデスの電気自動車第3弾

 メルセデス・ベンツの電気自動車ブランド「メルセデスEQ」。EQとは「エレクトリック・インテリジェンス」を表しているという。2019年に登場した「EQC」を皮切りに、第2弾の「EQA」、そして第3弾となる「EQB」の国内導入が始まった。

 EQBの特長は、「GLB」をベースとしており、3列シート7人乗りであることだ。基本骨格は内燃エンジンモデルのGLBと同じなので、スタイリングはほぼ変わらない。ただし、空力性能をより最適化するため、前後バンパーやドアミラー、ボディ下側を流れる空気を整流するアンダーボディパネル、ルーフスポイラーなどさまざまなところに手が加えられている。またフロントマスクは、これまでのメルセデスEQに共通するフラットなブラックパネルになり、リヤライトはライトスリップで一直線に結ばれている近頃のトレンドを取り入れたものだ。

3列シート7人乗り

 ボディサイズは、全長4685mm×全幅1835mm×全高1705mm、ホイールベースは2830mmと、こちらもGLBとほぼ同じ。全長だけはEQBのほうが45mm長くなっているのだが、サイズ表を確認すると、リヤのオーバーハングを40mm延長している。これは床下にバッテリーなどを配置したことで2列目シート以降のフロアが底上げされており、それによるラゲッジスペースの減少を最小限に抑える工夫だろう。ラゲッジ容量は、GLBが130〜1680Lなのに対して、EQBは110〜1620Lとなっている。

 2列目シートは、40:20:40分割で140mmの前後スライド機構を備えており使い勝手に優れる。3列目シートに座る乗員の身長の上限はGLBが168cmなのに対して、165cmと3cm低くなった。これもフロアが底上げされたことによる影響だと思われるが、いずれにせよスペースだけでなく衝突時の安全確保などにも考慮した上で、上限を明示しているあたりは安全に対するメルセデスの真摯な姿勢のあらわれと言えるだろう。

 インテリアデザインも基本はGLBに準じたもの。エアコンの吹き出し口などに、ローズゴールドカラーを配しているのがEQBの特徴だ。もちろんBEV特有のものとして、充電に関する設定やエナジーフロー、電力消費率などのメニューがセンターディスプレイに表示される。また見た目では判断がつかないが、走行の次にエネルギーを消費するというエアコンには、家庭用としてもおなじみで、近頃のBEVでは主流になりつつあるヒートポンプ式を採用する。これは主に暖房システムのためのバッテリー消費を軽減することで、航続距離を延長しようという狙いがある。

 モデルラインアップは、FWDの「EQB250」と4WDの「EQB350 4MATIC」の2種類がある。ともに前後アクスル間のフロア部に容量66.5kWhのリチウムイオンバッテリーを配置している。前者は、フロントにモーターを搭載し、最高出力190ps、最大トルク385Nmを発揮。後者は、フロントとリヤにそれぞれに1基のモーターを搭載し、最高出力292ps、最大トルク520Nmを発揮する。

 このパワートレインは、先に登場したEQAと同一のものかと思いきや、さらにあらずでEQB250のフロントとEQB350のリヤには新設計の高効率な永久磁石同期モーターを採用しているという。それによって航続距離(WLTCモード)は前者が520km、後者は468kmとなっている。最大100kWの急速充電にも対応しており、最近SA/PAにも増えてきた90kW級の急速充電器も使いこなせるというものだ。

SUVのネガを隠すEV

 EQB350 4MATICに試乗した。ステアリングの左奥に配置されているスタートボタンを押すと、目の前にあるスクリーンが一斉に起動する。コラム右側のレバーでDレンジをセレクトして、ブレーキペダルから足を離すとクリープする。このあたりの一連の操作は内燃エンジン仕様のGLBとまったく同じもの。違うのはエンジンの音がしないことだ。

 動き出しはきわめてスムースで、トルク感たっぷりにシームレスに速度が高まっていく。ペダルを強く踏みこめば、とても3列シートSUVとは思えない加速をみせる。そしてコーナーへの進入時も重量物であるバッテリーがフロア下に集約されているため、ロール感も少なく、背の高いSUVのはずなのにそれをまったく感じさせない。

 走行モードは通常はコンフォートで、よりキビキビ走りたいときはスポーツを選べばいい。ステアリングの手応えが増し、アクセル操作に対してレスポンスが鋭くなる。試乗車は標準仕様で18インチタイヤを装着しており、エアボリュームもたっぷりあって乗り心地も良好だった。よりスポーティなものが好みなら、オプションのAMGラインパッケージを選ぶのがいい。こちらは、20インチホイールに、ダイレクトステアリング、減衰力可変式のスポーツサスペンションなどを装備している。

 4MATICとはいうものの、通常走行時は電力消費量を抑えるためリヤのモーターをメインに2輪駆動する。そして、走行状況に応じて毎秒100回の頻度で前後アクスル間のパワーバランスを調整するという。正直にいえば、いま2駆で走行しているのか4駆なのかは、モニターをみていなければ判断がつかない。それほど緻密で自然に制御されている。

 回生ブレーキの強度はステアリングに備わるパドルを使って、コースティングから軽度、中度、強度と4段階で設定が可能。右がシフトアップ、左がシフトダウンの要領で、右側を操作すれば回生レベルが低減、左側で回生レベルが上昇する。普段は「D Auto」に設定しておけばいいだろう。これはレーダーによって先行車両との車間距離などを検知し、それに応じて回生レベルを自動調整してくれる優れもの。街乗りでも高速道路でも使い勝手のいいものだ。ちなみに回生ブレーキによって完全停止はしない。あくまで最後はドライバーの意思でブレーキ操作を行う。このあたりもメルセデスの安全哲学のあらわれだ。

 車両価格は、残念ながらいまの為替の影響もあって導入時より少し高くなった。EQB 250が822万円、EQB 350 4MATICが906万円。少々高いかなとも思うが、国からのCEV補助金や自治体による補助金、環境性能割非課税、重量税免税、自動車税免税といった優遇税制を活用すればかなり手頃になる。航続距離や車両コストなど、これまで様々な課題が指摘されてきた電気自動車だけれど、いま現実的な選択肢となってきたことは間違いなさそうだ。

モバイルバージョンを終了