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美しく静かなキャンプ場が天国から地獄へ! 西部劇のロケ地になった街並みを堪能した週末──米国放浪バンライフ:Vol.06

初日はじつにピースフルだったが、翌日は地獄に……

アメリカを気ままに放浪3カ月:14日目~15日目

 これまで2度にわたりアメリカを放浪してきた筆者。還暦を過ぎた2022年4月から7月にかけて、人生3度目のアメリカひとり旅にチャレンジしてきた。相棒は、1991年式トヨタ「ハイラックス」をベースにしたキャンピングカー「ドルフィン」。愛称は「ドル」。LAから北に向かい、ケーンビル(Kernville)という古い町にやって来ました。

5月13~14日 緑ゆたかなケーンビルの町へ

 ケーンビルの町に入った途端、「お、これは!」と目を見張った。どこか懐かしく落ち着いた町並みだ。しかも、町の中心をきれいな川が流れている。リバーサイドが新緑ゆたかな公園になっていて、見るからに気持ちがいい。さっそく、クルマを駐車して散策してみる。

 午前10時、公園には犬の散歩をしている人、早いランチを食べている人、テントを張って家族でのんびりしている人などさまざま。そのなかに、川で釣りをしている人も何人かいる。そういえば、オーハイで仲良くなった老作家・ジェイが「あの辺りには、いいトラウト(鱒)が棲んでいる」と言っていたっけ。

 公園のすぐ脇には観光客用の品のいいモーテルが建っている。どこか伊豆の高級旅館を連想させる雰囲気だ。ケーンビルはセコイア・ナショナルフォレスト(国有林)の入り口の町だ。ここを起点に釣りやハイキング、ラフティング、サイクリング、ハンティングなどで休日を楽しむ人が集まるのだろう。

 ふと、対岸を見ると、緑の合間にモーターホームが何台か見える。どうやら、キャンプ場があるらしい。きっと、プライベートなのだろう。公立キャンプ場の検索サイトには載っていなかったはずだ。ケーンビルの町を散策したら、ナショナルフォレストに入ってキャンプ場を探すつもりだったが、予定を変えてこの町に泊まることにした。

西部劇のロケ地にもなった懐かしい街並み

 フレディパーク・キャンプグラウンドには、フックアップサイトとドライサイトがある。電気や水が取れるフックアップサイトは木陰の広々としたスペースだが、ただ止めるだけのドライサイトはリバーサイドだ。川のせせらぎが聞こえて気持ちがいい。川沿いのサイトはほとんどが予約で埋まっていたが、運よくぽつんとひとつだけ空いている。ぼくは迷わずそのスポットを取り、金曜、土曜と2泊することにした。

 チェックインしたサイトにクルマをセットして、町に出る。ミュージアムを訪ねると、19世紀半ばに鉱山で栄えた町であることが分かった。広場を中心にサルーン(バー)、宿、保安官事務所などが軒を連ねているのはその名残りで、懐かしさを感じた第一印象は間違えてなかった。

 また、20世紀半ばまでその町並みがそっくり残ったため、数多くの西部劇のロケ地となった。ジョン・ウェイン主演の『駅馬車』(1939年)はモニュメントバレーで撮影されたことが知られているが、一部はケーンビルでロケが行われたのだそうだ。

 現在は、かつての建物が観光客相手のアンティークショップやヒッピーショップ(もはや、これもアンティークか?)に改装され、クラシックな町に溶け込んでいる。

週末のキャンプ場はにぎやかなファミリー天国(地獄)に一変

 町歩きを堪能し、夕まづめにはトラウト釣りにも参加しすっかり満足して夜を迎えた。ところが、様子が一変したのは、翌朝8時だった。夜の間に続々とキャンパーがチェックインし、静かだったキャンプ場はファミリー天国に変貌してしまったのだ。

 右隣からはマリアッチ(メキシコの伝統的な音楽)、左隣からはなぜかレゲエが大音響で鳴りわたり、あちこちから発電機のノイズが地響きとなって伝わってくる。ヒスパニック系の子どもたちが大声を上げながら、ぼくのサイトを駆け回る。リバーサイドを予約していたのは、こういう連中だったのだ。もはや、川のせせらぎどころではない。

 どうにも我慢ができずにオフィスに駆け込み、「昨日は天国だったけど、今日は地獄だ」と訴えて、スポットの変更を頼みこむ。幸い、木陰のフックアップサイトが空いていた。電気も水も使わないことを条件に同じ料金で移動させてもらった。そして、翌朝、早々に荷物をまとめ、セコイア&キングスキャニオン国立公園を目指してエンジンを始動したのだった。

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