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燃費20キロオーバー! マクラーレン新型「アルトゥーラ」に試乗して分かったスーパーカーの未来

EVモードでの走行で気になるのはタイヤからのかすかなノードノイズとボディの風切音くらい

「MP4-12C」から10年余を経過したマクラーレン

 マクラーレン・オートモーティブ社が、新たなロードカーとして「MP4-12C」を発表して、まだわずかに10年。この時間の中で、彼らはコアモデルとなるスーパー シリーズのほかに、ボリュームモデルとなることを狙ったスポーツ シリーズ、そしてマクラーレン車の頂点に位置するアルティメット シリーズなど、さまざまなモデルを世に送り出していきた。搭載エンジンのチューニングの違い、あるいはロングテールなどボディのディテールの違いまでを考えれば、これまでに誕生したマクラーレンの仕様はすでに相当な数に及んでいる。

マクラーレン新時代の幕開け

 多くのモデルを少ない数だけ作る。それは自動車の世界に限らず、プレミアム ブランドが主流とするマーケティング戦略のひとつである。つねに市場が求める数に満たない状態に生産数を抑えることで、ユーザーの購入意欲は単なる欲求から熱望へと変わる。そしてブランドとユーザーの間には、つねに最新の情報を求める絆が生まれる。

 今回試乗した「アルトゥーラ」などは、まさにその典型的な例といえるのではないか。最上位のアルティメット シリーズや限定車は特別な存在としても、すでに「720S」でそのパフォーマンスを、また「GT」では運動性能とともにラグジュアリー性を極めたともいえるマクラーレン。そこに次なる10年の幕開けを担うべく、新たなメカニズムやスタイルを持つニューモデルの「アルトゥーラ」を投入。その走りへの期待は当然のことながら大きい。

 エクステリアのデザインは、これまでの720SやGTよりもさらになめらかに、そしてダイナミックなフィニッシュに変化した。そう感じる最も大きな理由はドアからリヤフェンダーにかけての大きなエアインテークと、その上に位置するコンパクトなキャビン。フロントノーズからルーフラインを経てテールエンドへと描き出されるシルエットは、それだけでもエアロダイナミクスの優秀さを予感させる。

 これまでのマクラーレン車と同様に、上方に向って開くディヘドラルドアを開け、サイドシルを乗り越えてドライバーズシートに身を委ねる。試乗車は右ハンドル仕様ということもあり、アクセルとブレーキ間のクリアランスはやや狭い印象があるが、ドライビングポジションはコンパクトな設計のバケットシートとともに正確に得られる。シート合わせのための電動スイッチがシート前方のアウト側に移動するなど、使い勝手の向上も見逃せない。

リッターあたり21.7キロの燃費

 パワーユニットのシステムを始動すると、デフォルトで選択されるのは「EV」モードだ。アルトゥーラは3L V型6気筒DOHC 24バルブツインターボエンジンに、エレクトリックモーターを組み合わせ、最高出力はそれぞれ585ps、95ps、最大トルクは585Nm、225Nmを発揮。システム全体では600psの最高出力と720Nmの最大トルクを発生する仕組みとなっている。

 燃費はWLTPモードで約21.7km/L(4.6L/100km)。700psに迫るパワーを得ながら、燃費性能をここまで高めることができたのは、やはりハイブリッド・システムの存在があるからにほかならない。

早朝のガレージで役に立つ「EVモード」

 EVモードでの走行は、スタートから130km/hまで、距離にして満充電から31kmを可能にするが、さすがにこの領域ではキャビンの静かさは圧倒的だ。気になるのはタイヤからのかすかなノードノイズとボディの風切音くらい。

 これとてエンジンとモーターの協調制御が始まる「ハイブリッド」モードに入れば(あるいはこれもメーターナセルの脇にレイアウトが移動し、操作性が抜群に良くなったスイッチでドライバーが自身でそれを選べば)、後方からの見事なBGMでそれは気にならなくなる。

 ハイブリッド モードでのエンジンとモーターの協調制御は、普通にドライブしているかぎりはまったくそれを意識させられることはない。

 さらに「スポーツ」モードでは、モーターの介入度はさらに高くなり、同時にパワーユニットのモード選択スイッチとは対称の位置にあるシャシーのモード選択スイッチで、こちらもスポーツを選べば、日本のワインディングロードにはちょうど良いフィーリングのセッティングが得られる。

 パワーユニット、シャシーともにさらにスパルタンなフィールとなる「トラック」モードは、常時エンジンは回り続けるが、それと同時にバッテリーの充電も効率的に行う。バッテリーの残充電を増やしたい時には、このトラックモードを使うというのも、このアルトゥーラの隠し技といえるのだ。

 アルトゥーラの走りでとくに好印象を受けるのは、やはりミッドシップ車らしい素直なコーナリングだ。とりわけこのアルトゥーラから採用されたリアのマルチリンク・サスペンションの動きは素晴らしく、減衰力を自動的に可変させるPDC IIプロアクティブダンピングコントロールや電子制御デファレンシャル、そしてなによりこのアルトゥーラのために新設計されたというモノコック、MCLAの軽量性や剛性が素直なコーナリング特性と乗り心地に大きく貢献している。

 このアルトゥーラを見るかぎり、マクラーレンの次なる10年も明るいものになるだろう。そう確信することができた試乗だった。

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