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ランボルギーニ「エスパーダ」はガルウイングの予定だった!? 12気筒エンジン搭載の4シータースーパーカーとは?

ランボルギーニ・エスパーダのフロントマスク

プロトタイプとパッケージ的には180度違うモデルになっていた

 一部例外はありましたが古の時代より、スポーツカーと言えば2人乗りがお決まりでした。ランボルギーニ・ミウラから始まるスーパーカーでもガルウィング・ドアを開けると2脚のバケットシートが目に映る、というのが一般的でした。そんなスポーツカーで4シーターを実現したランボルギーニ・エスパーダを振り返ります。

ランボルギーニはフェラーリがまだ実現していない新技術を取り込むことに精力的だった

 今もスーパーカーのトップメーカーとして君臨するランボルギーニはそもそも、フェラーリを超える“スーパーな”スポーツカーを造ることを目標に設立された経緯があります。そのために創業者であるフェルッチオ・ランボルギーニは、フェラーリがまだ成し遂げていないこと、まだ実現していない新技術などを取り込むことに精力的でした。

 初の市販モデルとなった350GTでは、フェラーリと同様に最上級とされるV12エンジンを搭載していましたが、フェラーリの各モデルがシングルカム(V12なのでカムシャフトは2本)だったのに対して350GTに搭載されたV12はツインカム(同じくV12なのでカムシャフトは4本)です。

 またリヤのサスペンションにしても、ランボルギーニが処女作の350GTで早くもコイルで吊ったダブルウィッシュボーン式を採用していたのに対して、フェラーリはまだリーフリジッドを継承していました。先制された格好のフェラーリは、リヤのサスペンションに関しては350GTが登場した翌1964年にリリースした250LMや275GTから採用しています。

 ツインカムに関しても1966年に登場した275GTB/4から3.3L SOHCエンジンをベースにツインカムへとコンバートして、ランボルギーニ追撃の姿勢を見せています。早々の反撃に出た格好ですが、してやったりのフェルッチオとは対照的に、エンツォ御大の苦虫をかみつぶしたような表情が思い浮かびます。

 エンジンやサスペンションと同様に、フェラーリが2シーターを主体に2+1もしくは2+2をラインアップしていただけであったのに対して、ランボルギーニは最初の作品である350GTで2+1としたのに続いて次なる400GTでは2+2をラインアップ。そのパッケージはイスレロへと継承されていきます。

フェラーリもラインアップしていなかった4座のグランツーリスモ

 1966年に登場してスーパーカーの先駆けとなったミウラこそ2シーターでしたが、1968年に投入したエスパーダでV12エンジン搭載のフル4シーターを実現していました。エスパーダのデザインを担当したのは、当時ベルトーネに在籍していたマルチェロ・ガンディーニで、スタイリングに関しては1967年のジュネーブショーに出品した、ランボルギーニ・マルツァルにインスピレーションを得たデザインとされています。

 ただしフル4シーターのグランツーリスモという基本コンセプトは共通していますが、マルツァルが直6をボディのリヤに横置きしているのに対して、エスパーダではV12をフロントに縦置き搭載していて、パッケージ的には180度違うものとなっています。

 それでもマルツァルとエスパーダのスタイリングに共通性が感じられるのは、ガンディーニの手腕、ということでしょうか。じつはこの、マルツァルとエスパーダの間に、ひとつのプロトタイプが存在しています。そしてそのプロトタイプを真ん中に置き、左右にマルツァルとエスパーダを並べてみると、それは一層明確になります。

マルツァルからプロトタイプ、そしてエスパーダと夢を具現化

 ウエストラインのモールで分割された上下のサイドウインドウによって、まるで“金魚鉢。そもそもは観賞するためのものであり、鑑賞されるためのものではないはずだが……”となったサイドビューを持つマルツァルに比べると、前席と後席、都合2人分の乗降を賄う前後長の長いガルウイング・ドアは共通しているものの、プロトタイプのそれは、随分コンサバに映っていました。

 おそらくはBピラー部分をガラスで覆う処理となるのだろうから、完成するとまた違った印象となることは容易に想像できますが、それにしてもマルツァルの金魚鉢に比べると遥かに理解しやすいサイドビューです。前にも触れたように、直6をボディ後端に横置きマウントしたマルツァルから一転し、このプロトタイプではV12を縦置きでフロントに搭載し、後輪を駆動します。

 アウトモビリ・ランボルギーニの創設者であるフェルッチオ・ランボルギーニの個人コレクションを収蔵展示しているムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニには、オレンジ色のボディが印象的なエスパーダのプロトタイプに加えて、そのシャシーも収蔵展示されていました。

 スチールパネルをプレス成型して組み立てられたメインフレームは見るからに頑丈そうで、フロント部分に包み込まれたV12エンジンは、意外にもコンパクトに映っていました。

4シーターとしては“圧倒的な低さ”を達成

 サスペンションは前後ともにダブルウィッシュボーンタイプで、ガーリング製の前後別系統でコントロールされるサーボ付きディスクブレーキが装着されています。サイズ的には全長×全幅×全高とホイールベースは4740mm×1860mm×1185mmと2650mmですが、これは同時代の、直6をフロントに搭載した5/6座のクラウンやセドリック、グロリアといったフルサイズの国産車と比べて40mmほど長く160mmほど幅広いのは5ナンバー枠(4700mm×1700mm)があるため当然ではあるものの、ホイールベース(当時を前後する、それぞれ数世代の国産フルサイズは全車2690mm)はむしろ40mmも短く仕上がっていました。

 それでもエンジンをなるべくホイールベース内に載せようとする努力もみてとれ、4シーターといえどもスーパースポーツなのだと実感させられました。

 さて、エスパーダのスタイリングについても紹介しておきましょう。先に紹介したように全高は1185mmで、スーパースポーツとはいえ4シーターとしては“圧倒的な低さ”を達成。ただしルーフをリヤまで水平に伸ばすなどしてヘッドルームが稼がれていて、少しリクライニングした乗車姿勢とはなっていますが、4人乗車のグランツーリスモとしてのキャパシティは確保されています。

 またマルツァルやプロトタイプほどにはドアの前後長は長くなく、また通常の前ヒンジ後開きとなっていますが、後席用にも広めのサイドウインドウを用意し、またテールエンドにはスクープウインドウも設けられるなど、リヤ後方視界も確保されていました。

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