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北カリフォルニアの聖地「シャスタ山」へ! UFOウヨウヨの深夜に真っ赤な灯りが近づいてきてビックリ──米国放浪バンライフ:Vol.15

次の目的地、オレゴン州へ向かう。シャスタ山ともお別れ。また、会おう!

アメリカを気ままに放浪3カ月:30日目~32日目

 これまで2度にわたりアメリカを放浪してきた筆者。還暦を過ぎた2022年4月から7月にかけて、人生3度目のアメリカひとり旅にチャレンジしてきた。相棒は、1991年式トヨタ「ハイラックス」をベースにしたキャンピングカー「ドルフィン」。愛称は「ドル」。ロサンゼルスからサンフランシスコ経由で北上し、大好きなスポットであるシャスタ山へやって来ました。

5月29日 ダスティ・キャンプグラウンド

 ラッセン・ボルカニック国立公園からシャスタ山に向かって州道89号線を走る。北カリフォルニアのきれいな風景が広がる人気のドライブコースだ。その日の宿はとくに決めずに走っていたが、マクロウドを越えたところで、「ダスティ・キャンプグラウンド」という看板が目に入った。とっさにハンドルを切ってダート路を下ってみると、ブリトン湖に面した小さなキャンプ場が現れた。

 サイトは6つしかないが、運よくひとつ空いていた。料金は15ドル。セルフレジストレーションでチェックインすることができる。対岸の木々のグラデーションがとてもきれいだ。気に入ったので1泊することにした。

 セルフレジストレーションは気持ちがいい仕組みだ。キャンプ場入り口にある封筒に、泊まりたいサイト番号とクルマのナンバーなどを記入し、お金を入れてポストに入れればいい。その際に半券を切り取るようになっていて、サイトのポストに止めるのが基本だ。

 なぜ、この仕組みが好きかというと、サイトを自分の目で確認して決められるから。湖に近い、レイアウトが使いやすい、トイレが近い、お隣さんの様子、などは1泊の宿を決める際の重要な条件だ。これがオンライン予約だとマップを見て推測することになる。それは無理な注文だ。

5月30日 マウント・シャスタの町できれいな水を味わう

 シャスタ山はパワースポットとして知られ、日本でも知名度が高い。LAで旅行代理店を営むAKIRA隊長のアウトドアツアーズUSAにもスピリチュアルなお客さんのグループがいて、シャスタへのツアーは人気企画だそうだ。

 霊感の鋭い人たちが見ると、シャスタ山周辺の夜空にUFOがウヨウヨと飛んでいるらしく、AKIRA隊長も指南を受けて目を凝らすと、ウヨウヨ見えたという。ぼくはからっきしその手の能力がないのでパワーも何も感じないが、シャスタほどカッコいい山はないと思っている。

 ウインタースポーツの基点となるマウント・シャスタの町から見る山の姿はとくに好きで、力強さとやさしさを両方感じさせてくれる。今回は町から見上げると雲がかかっていたが、少し離れた地点からきれいにツインピークを眺めることができた。

 シャスタは水がきれいなことでも知られ、「クリスタルガイザー」はシャスタの水を使っている。また、サクラメント川の水源(ヘッドウォーター)が市民公園のなかにあり、水を汲む人が絶えない。ぼくも空のガロン・ボトルをふたつ下げて水源に行ってみた。そこでは祈りを捧げる人の姿もあった。ぼくも水を汲む前に一礼すると、ありがたみがグッと増した。

ガタピシ道を走っていたら何かが外れた!?

 ウィードでのガスステーション泊をはさみ、次に向かったのはオーレイク・キャンプグラウンド。オンラインで見つけた4つしかサイトがないキャンプ場だ。ここを選んだ理由のひとつは、料金が無料ということ。そういうサイトも一度、経験しておきたかった。

 閉口したのは、キャンプ場までの7マイル(約10km)の道がダートだったこと。しかも、砂利が主体の凸凹ガタピシ道だ。ぼくも相棒のキャンピングカー「ドル」も、この手の道が大嫌いだ。モーターホームがガタガタ揺れ、ひどい軋み音を上げている。

 と、突然、後ろで大きな音がした。ヤバい! と思ってクルマを止めて確認すると、大きな板が床に転げ落ちている。ところが、それがなんなのか分からない。いったい、何だ、これは? しばらく考えてようやく分かったのは、キッチン脇の仕切り板。釘がすっかり錆びて、大きな振動に耐えられなかったのだ。分からないくらいだから不要と考えて、夜の焚き火で燃やしてしまった。

5月31日 オーレイク・キャンプグラウンド

 ガタピシ道は困ったが、サイト自体は素晴らしかった。湖ごしにシャスタ山の裏側がきれいに見える。こんな角度からシャスタを見る経験はそうそうできるものではない。しかも灯りが何ひとつないので、夜は全くの闇の世界になる。UFOがウヨウヨどころではない、グジャグジャに現れるはずだ。さっそく、AKIRA隊長に報告すると、「それ、使えるね。サイトがタダなのがいい」と、経営者らしい感想が返ってきた。

 午後、女性レンジャーが巡回にやってきた。「ひとりで旅行をしているの?」「はい、そうです」「犬は?」「いや、犬もいません」「寂しくないの?」「まあ、寂しさが友達みたいなもんです」

 レンジャーは鳥の名前を覚えることを提案してくれた。そして、近くに見える鳥、声が聞こえる鳥について、簡単なレクチャーをしてくれた。「季節によっても来る種類が違うし、これから北に行くなら、もっといろいろな鳥に会えるから勉強してみたら? それには、まず、小さくてもいいから図鑑を買うことね」

 たしかに、ここまでの1カ月、毎朝、鳥の声で目覚めてきた。青い鳥、オレンジの鳥、などいくらか見分けがつくが、もっと鳥に詳しくなれば、旅の仲間になってくれそうだ。

「私はこんなところにひとりでいるなんて寂しくてだめだわ。まあ、気をつけて」「気をつけるって、何に?」「そうね。気をつけるものもないわね」。ぼくたちは、笑って別れた。

真っ暗なキャンプ場で謎の人物にビックリ

 ところが、である。それが冗談ではすまなかったのだ。深夜、トイレに起きたついでにランタンの灯りを消して、信じられないほどの星の瞬きを見上げた。しばし、星の煌めきを楽しんでいると……。

 なんと、左手から真っ赤な灯りが近づいてくるではないか。速さと光の高さからしてヘッドライトだと判断した。相手もビックリすると思ったので、こちらもランタンを点灯した。

 すると、脇目もふらず速足のままその人は歩き去っていった。歩いて行った方向にはグループサイトがあるが、それはかなり離れている。それに、いったいどこから来たんだ? あの人はいったい……。

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