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ボブ・ディランのライブを観にユージーンの街へ! ヒッピー文化の聖地はホステルの建物までサイケデリックでした──米国放浪バンライフ:Vol.18

ユージーン・ホステル。愛車「ドル」がよく似合う佇まいだ

アメリカを気ままに放浪3カ月:37日目~38日目

 これまで2度にわたりアメリカを放浪してきた筆者。還暦を過ぎた2022年4月から7月にかけて、人生3度目のアメリカひとり旅にチャレンジしてきた。相棒は、1991年式トヨタ「ハイラックス」をベースにしたキャンピングカー「ドルフィン」。愛称は「ドル」。ロサンゼルスを出発して北上し、国立公園を巡りながらオレゴン州にやってきました。

6月5日~6日 オレゴン州ユージーン

 ユージーンは、ポートランド、セーラムに次ぐ、オレゴン州で3番目に大きな都市だ。街のシンボルといえるのがオレゴン州立大学。緑豊かなキャンパスを行く学生たちのファッションは、まさに思い思い。いかにもリベラルな雰囲気を感じ取ることができた。

 また、街の中心にあるオールトン・ベーカー公園には、オレゴン大学出身の陸上選手、スティーブ・プリフォンテーンにちなんだランニングコース、プレズ・トレイルがある。ヨーロッパ遠征をした際の体験を元にデザインしたというウッドチップを敷いた4マイル(約6.4km)のコースに、市民ランナーが次々と走り出していた。ぼくも負けじと1周のジョギングで汗を流した。

60年代ヒッピーカルチャーで名を馳せた街

 街歩きをしていて気に入ったのが、スミス・ファミリー・ブックストアという古本屋。ものすごい数の蔵書を、大きな家屋の2フロアに見事にジャンル分けして並べている。看板も地味で店の前まで来ても気がつかなかったくらいだが、本好きの人であれば訪れる価値がある。

 ユージーンといえば、1960年代のヒッピーカルチャーで名を馳せた街でもある。メリー・プランクスターズが作ったサイケデリック・バス「ファーザー(Further)」は、ヒッピーたちのアイコンだった。なんと、この現物が保管されていると聞いて見にいこうかと思ったが、がっかりするのがオチと考えて自重した。

 ルート66の歴史的モニュメントも、がっかり系が意外と多い。半世紀以上の時間が記憶や記録を淘汰する力は、非情なまでに強力だ。

ボブ・ディランのコンサートも自由な雰囲気

 ぼくがユージーンを訪れたのには訳がある。この街で行われるボブ・ディランのコンサートを観るためだ。ぼくはアメリカでディランのコンサートを2回、観ている。一度目はアリゾナ州ツーソンのカジノ、2回目はUCバークレーの講堂だった。今回もちょうどいいタイミングでツアーが行われていると知って、チケットを購入したのだった。

 ディランのすごさは、ダイナミックにスタイルを変えながら新しい音楽をクリエイトし続けることだ。その継続するアーティスト魂はピカソに似ている。高齢になってもエネルギッシュに活動し続ける点も共通している。

 今回は本人を含めて6人のメンバーが黒ずくめで登場し、弱い逆光の照明に包まれながら、抑えたトーンの音楽を作り出していた。休憩もなしに2時間近く演奏を続け、挨拶もアンコールもなくステージは終わった。

 日本と違うのは、演奏中でも席を立つ人が多いこと。何をしているかといえば、ロビーのバーで酒を買っているのだ。もちろん、ぼくも飲みながら演奏を楽しんだ。自由な雰囲気のコンサートを体験できたことも幸せだった。

ホステルもまわりの家もサイケ調

 街中でのイベントが目的なので、キャンプ場泊というわけにはいかない。予約サイトで発見したユージーン・ホステルにチェックインした。ひとつの部屋に2段ベッドをふたつ入れたドミトリー・スタイルだ。

 それはともかく、民家を改装した建物がすごい。まさに当時のヒッピーが共同生活を送っていたかのようなデザインなのだ。共同の居間や庭の様子もいい。ただ、スタッフもゲストも意外と(?)まともで、期待したようなハプニングは起こらなかった。

 むしろ驚いたのは、周囲の住宅もホステルに引けを取らないサイケ調だったこと。どうやら、3rdストリートという一画が特殊なようだ。愛車の「ドル」と似たモーターホームが何台も止まり、路上でテント生活をしている輩も多かった。不思議なタイムトリップ感を味わった2泊3日だった。

次に目指すは快晴(?)のコーストライン

 ユージーンに来ても天気はパッとしない。宿のスタッフにその日の天気を聞いても、「曇りときどき雨、そして少し晴れ。毎日、同じよ」と苦笑いするだけだった。そして、「もう6月なのに、こんな天気はおかしい」と、顔も曇らせた。

 オレゴンのコーストラインは美しいと聞いている。快晴の海岸線のドライブを期待して、個性的な街を後にした。

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