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EVワーゲンバス「ID.Buzz」よりレトロでカワイイ「モーリスJE」とは? 英国の商用車がパイクカー風味で復活します

英国モーリス・コマーシャル社が市販化間近のEV商用車、モーリスJEエレクトリック・バン

名車をEVでリバイバルするならヴィンテージ感にもこだわりを!

旧車のEVコンバートなんてもうゴマンと見たよ! という人も、東京オートサロンでハチロクの「レビン」がメーカー謹製で「L“EV”IN」になったのには、グッと来たかもしれない。だがデザインもボディも昔のままというところが、ビミョーに引っかかりもする。せっかくEVを選んでゼロエミッション人生に踏み込むのなら、隣に来たテスラの兄ちゃんにも「ワォ!」と言わせるぐらいのインパクトがあって然るべきでないかと。

激動の英国自動車業界で不思議と生き残った「モーリス・コマーシャル」社

その点、VWの「ID.バズ」ほどモダンでもない、ほどよくヴィンテージ寄りルックのEVバンとして申し分ないのがこちら、英国はモーリス・コマーシャル社が生産間近というウワサの、「モーリスJEエレクトリック・バン」だ。

下地となるのは1948年から1961年まで生産された「モーリス・コマーシャルJタイプ」。途中、モーリス・ブランドがBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)に吸収され、単純に「モーリスJタイプ」と呼ばれたこともあったが、1950年代にはコモンウェルス(イギリス連邦)の各地でグローバルに展開し、世界最大の商用バン・メーカーにまで上りつめた。

驚くことに、「モーリス・コマーシャル」のブランドは、1960年代後半にブリティッシュ・レイランドになった後も、2000年代を前にローバー・グループが解体されランドローバーやジャガー、MGといった目ぼしいブランドと別れた後も、LDV(レイランドDAFヴァンズ)と呼ばれた商用車部門の一部として生き残った。

何度も倒産スレスレの目に遭いながら、ロシアの投資家や中国のスタートアップ企業の手を経てオーナーは目まぐるしく変わった。最終的には2009年、後者の代表で英国に長らく住み工学博士号をもつ中国人の女性エンジニア、Qu Li博士の手に知的財産権ごと渡った。

かくして博士はSAIC(上海汽車集団)に対してLDVの資産の多くを売却したものの、モーリス・コマーシャルだけは手元に置き続けていた。そうして温めてきた計画が、モーリスJEエレクトリック・バンというワケだ。

実用性はもちろん、企業の「動く看板」としても活躍

明らかに過去のJタイプに着想を得たデザインは、日本人には1990年代の日産パイクカー的で、ほとんど既視感あるテイストかもしれない。しかし雰囲気だけがレトロで、中身は最新というか、ランニングコンポーネントは100%EVだ。公式サイトによれば最先端のバッテリー技術とカーボンファイバー・ボディ、インテリアやダッシュボードにはリサイクル可能な素材をふんだんに用いて、WLTPモードで航続距離250マイル(約400km)を実現可能という。車重は約2.5tにも達するが積載量は1tあり、荷室は6平米ほどの容量を確保しているとか。

さらにモーリスJEがモダンというか今日的といえるのは、使われ方、すなわちソフト面だ。ロンドンのようなゼロエミッションの度合いが高いほど中心地へのアクセスが優遇される都市部では無論、商用EVはきわめて実践的なバンといえる。さらにボディサイドは、中小の自営業者や各業種のあらゆるブランドが、リアルなモビリティ世界でのアピールの場とできる、そんな広告用のキャンバスともなる。

郵便配達車として英国を走り回るかも

現段階では量産を前にして、もう今一歩の融資を必要としている段階だが、すでにレッドブルやロイヤル・ポスト(英国の郵便局)といった欧州の巨大法人らが強い興味を示しているとのこと。公式サイトでは2022年末よりプリオーダーを受け付けているものの、集まった資金は市販まで第3者機関によって信託される予定だとか。単なる勢いだけのスタートアップではないやり方で、EVで英国車を、しかも商用車を復活させようという動きゆえ、可愛さだけでないところで注目されているようなのだ。

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