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ルノー新型「カングー」に試乗! 日本ではダブルバックドアと黒バンパーが王道です

ヘッドライトはLEDを採用している

新型はガソリンターボの仕上がりが素晴らしくいい!

2023年3月2日に3代目となる、「遊びの空間」が「もっと遊べる空間」に大進化したルノー カングーの新型が発売された。2代目の登場からすれば、およそ14年ぶりの新型であり、一気に2世代分の進化を遂げた。今回はガソリンターボモデルのクレアティフに試乗した印象をお届けする。

ボディデザインは頑丈さを表現している

プラットフォームはルノー、日産、三菱のアライアンスで開発したミドルクラス用CMF-C/D。ルノー メガーヌ、日産エクストレイル、三菱アウトランダー、メルセデスベンツTクラスにも使われるものだ。

ルノー アルカナに近い、メッキモールがカングーとしては新鮮な最新のルノーフェイスを纏ったボディは、先代に対して全長で210mm、全幅で30mm増しとなったが、全高は不変。ホイールベースは15mm伸ばされ、全長4490mm×全幅1860mm×全高1810mm、ホイールベース2715mmとなった。最小回転半径は先代15インチタイヤ装着車の5.4mから5.6mとなっている。

どこから見てもカングーなエクステリアデザインはAピラーが寝かされ、サイドウインドウを薄型化。ダブルバックドアを備えたリアエンドはルーフから下に向かってショルダーを張り出させることで、ボディサイドとともに安定感、頑丈さを表現している。

ダブルバックドア&ブラックバンパーは日本専用仕様として設定

そうそう、当たり前のようにダブルバックドアを備えた……と記したが、本国ではダブルバックドアはLCVと呼ばれる商用車のみの設定。乗用車系はフリードのような上下開きなのである(現在は乗用車系にもダブルバックドアがあるそう)。しかし、日本仕様としてルノー・ジャポンのリクエストで、先代までのカングーのイメージを継承するダブルバックドア&ブラックバンパーを、乗用車系の日本専用仕様としているのである。

つまり、日本仕様には、ボディ同色バンパー、アウタードアハンドル、サイズアップした16インチアルミホイールを採用するインテンスグレードと、ブラックバンパー、ブラックアウタードアハンドル(ジョンアグリュムのボディカラーのみ。他色はボディ同色)、16インチスチールホイールを装着した、いかにもカングーなクレアティフの2グレードがある。なお、受注生産のベースグレードとなるゼン、新型の日本発売を記念した特別仕様のプルミエールエディションも用意。

ちなみにインテンスとクレアティフは外観上の差があるにもかかわらず意外にも同価格。これはルノー・ジャポンのブラックバンパーに対するこだわり、思い入れの表れかもしれない。ブラックバンパーだから決して安いグレードではありませんよ、こちらが王道ですよ……という意思表示ではないか。

ガソリンターボとディーゼルターボの価格差は24万円

本国ではすでにBEVのカングーも登場しているが、日本仕様のパワートレインは、新搭載となった1.3L直4 16バルブ直噴ガソリンターボエンジン(131ps/5000rpm、24.5kgm/1600rpm、WLTCモード15.3km/L)および、先代からキャリーオーバーされつつトルクアップを果たしたコモンレール式1.5L直4直噴ディーゼルターボエンジン(116ps/3750rpm、27.5kgm/1750rpm、WLTCモード17.3km/L)の2種類。トランスミッションはいずれも7速EDC。

つまりMTベースで2ペダルとなるデュアルクラッチトランスミッションだ。現時点で本国にはあるMTの設定はない。なお、インテンス(395万円~)とクレアティフ(419万円~)ともにガソリンターボとディーゼルターボエンジンが選べ、重量差は90kg、価格差は24万円となる。

それでは、クレアティフのガソリンターボモデルの試乗記をお届けしよう。

先代とは違う実に軽快感ある走りと気持ちいい加速感を披露

約90度も開くフロントドアから運転席に乗り込めば、TFT7インチメータークラスター、8インチマルチメディアEAZY LINKと呼ばれるセンター配置の大型ディスプレイ。水平基調となったインパネ周りのシボ感、ブラッシュアルミ調パネルの採用などによって、現代のカングーの進化、新しさが伝わってくる。シートは大型化され、サイドサポートも立派になっているが、筆者の”太腿センサー”では、座面長が実測先代の480mmから510mmに伸ばされてはいるものの、角度、フィット感から座面長がたっぷりあるようには感じにくかった。

先代カングーにあったT字レバーのサイドブレーキは存在しない。ほかの最新ルノー車同様に、カングーもついに電子パーキングブレーキを採用したのである(Pレンジに入れると自動でかかり、アクセルONで自動解除)。ただし、電子パーキングブレーキボタンの下にスイッチがあるはずの、とくにストップ&ゴーの連続する日本の路上でとくに便利なオートブレーキホールド機能は、カングーの場合、未採用だった(スイッチ周りはルーテシアなどと共通パーツらしい。いずれ付くと期待したい)。

カングー初の先進安全支援機能を採用

また、ステアリングスイッチにも注目だ。新型カングーには、アライアンスと共用しているであろう先進運転支援機能がカングーとして初採用されているのである。

その内容は多岐に渡り、歩行者・自転車検知機能付き衝突軽減ブレーキはもちろん、ストップ&ゴー機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)、さらにレーンセンタリングアシストを組み合わせたハイウェイ&トラフィックジャムアシスト、ブラインドスポットインターベンション(約70~180km/hで作動)、エマージェンシーレーンキープアシスト、オートハイビーム、パーキングセンサー&リアカメラなどをフル搭載。

前席エアバッグ、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグの用意とともに、運転支援や安全装備はいきなり最新の内容になっている。ここは価格が上がった理由のひとつだが、先代の場合、先進運転支援機能が付いていないことで購入を断念した人も少なくないはずで、筆者としては歓迎したい。

巡行時の静かさにも注目!

今日的にスタートボタンを押して新型カングーのガソリンターボ、クレアティフを始動させ、走らせれば、出足からもう感動モノだ。あの定評あるルーテシアと同ユニットを積むだけに、じつに静かに、スムーズに発進する。

2ペダルのEDCはほぼATのように変速し、かつてのVW DSGのような不快な変速ショックなど皆無。低回転域のトルクは先代1.2Lガソリンターボの19.4kgmから一気に24.5kgmに増強されてはいるが、トルキーという表現こそ当てはまらないものの、軽々としたアクセルペダルのコントロール性の良さもあって、先代とは違うじつに軽快感ある走りと気持ちいい加速感を披露。

そして巡行時の静かさも特筆モノで、これはダッシュボードに3層構造の防音材を配し、エンジンルーム、前後両サイドドアにも防音材を追加し、さらにすべてのウインドウガラスの厚みを増している対策が功を奏している。ルノーの説明によれば、可聴音声周波数が10%向上。前後席の車内の会話もしやすくなったことになる。

ハンドリング性能は乗用車的にリニアになった

適度な重さのパワーステアリングはギヤレシオを先代の17:1から15:1に見直され、切り込んだ際の反応がよくできた乗用車的にリニア。思い通りにスッと進路を変えてくれる。また、直進性にも優れ、ステアリングに伝わる前輪のインフォメーションも確実になっているため、あらゆるシーンでの走りやすさの進化は著しすぎるほど。

先代のステアリングの操舵感はかなりおだやかで、ハンドリングは安定志向に徹し、高速安定性、直進性で威力を発揮してくれたものだが、新型のハンドリング性能はかなり正確で現代的になったと言えるだろう。

ルノー最新のCMF-C/Dプラットフォーム+16インチタイヤによる乗り心地は、路面によってはややゴツゴツしたタッチを伝えてくるものの、総じてフラットで快適そのもの。フラットな路面だと、滑るように走ってくれるのだ。

山道を安定感たっぷりにスイスイと走ること間違いなし

今回は山道での試乗は叶わなかったものの、S字カーブが連続する道を走れば、これが気持ち良さ満点。ロールが抑えられ、前後輪のトレッドが広がっていることもあって4輪のタイヤが路面に張り付くようなコーナリングフォームを見せつける。あとに乗ったディーゼルターボモデルに対して、おもに鼻先が90kgも軽いことも、その軽快かつ自在感ある操縦性やフットワークに貢献していると思われる。

あわせて、前席のサイドサポート性の良さもカーブの走りやすさを後押ししてくれている印象だ。これなら、1810mmもの全高にしてスムーズに回り切るエンジンの素晴らしさもあって、山道を安定感たっぷりにスイスイと痛快に走ってくれること間違いなしである。先代同様に高速走行、長距離ドライブも得意中の得意のはず。新たに加わった先進運転支援機能のACCやレーンキープ機能による快適感たっぷり、ストレスフリーの移動が可能になることはもちろんだ。

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このあと、別稿でボディ同色バンパーを纏ったインテンスのディーゼルターボモデルの試乗記をお届けする予定だが、先に言ってしまうと、新型はガソリンターボの仕上がりが素晴らしくいいと感じている。先代モデルとの走りの進化の差がより大きいのもこちらのように思える。

購入に向けて販売店で試乗する際は、ぜひ両パワーユニットを乗り比べて、ドライブフィールの違い、使い方(ロングドライブの機会が多い、少ないなど)、価格差、燃費差などをじっくり吟味して結論を出していただきたい。

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