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世界遺産「オリンピック国立公園」の美しい大自然を満喫! 野生のエルクにも遭遇できました──米国放浪バンライフ:Vol.23

カヌーの夫婦が湖から上がってきた

アメリカを気ままに放浪3カ月:52日目~55日目

これまで2度にわたりアメリカを放浪してきた筆者。還暦を過ぎた2022年4月から7月にかけて、人生3度目のアメリカひとり旅にチャレンジしてきた。相棒は、1991年式トヨタ「ハイラックス」をベースにしたキャンピングカー「ドルフィン」。愛称は「ドル」。ロサンゼルスから北上してきた旅もいよいよカナダ国境近く、ワシントン州のオリンピック国立公園にやって来ました。

6月20日 クイノールト湖の豊かなエコシステムに触れる

クイノールト湖はとにかく素晴らしかった。湖畔の道に出てすぐの駐車場にドルを入れると、そこにナチュラルトレイルのトレイルヘッドがあった。さっそく歩き始めると、すぐにその景観に圧倒された。

太平洋から吹きつける強い風のため、10月から翌年6月までの長い間、オリンピック半島西側は嵐の連続となる。嵐によってもたらされる大量の雨がコケ類やシダを育て、木をなぎ倒す。倒れた木は若い木が育つ格好の温床となり、立ったまま死んだ木は鳥や動物の住処となる。

コケとホストとなる木の関係は寄生ではなく共生で、お互いに助け合う関係にあるところが重要だ。また、地中に住むコケが木々の根とコンタクトを取って情報伝達の役割を果たしていることが、最近の研究で分かってきたという。独特のエコシステムの仕組みを学びながら森を歩くと、まったく知らなかった世界の扉が次々に開いていくように感じた。

湖畔にアクセスできるキャンプサイトも居心地がよかった。早朝に対岸の森にかかる霧は芸術的で、思わず見入ってしまった。そこにカヌーを漕ぎ出している人がいる。静かな湖面に浮かぶ気分は、さぞ素晴らしいだろう。

なお、隣のサイトにチェックインしていたのも、ひとり旅の男性だった。少し寂しそうに感じたが、はたから見れば、ぼくも同じように見えるのかもしれない。

6月21日~22日 カラロックの海岸で流木ハント

翌日、西海岸のカラロックに移動。ここもよかった。海岸を歩くと、真っ白な流木が大量に打ち上げられている。500年生きた木が死んで川に落ち、海に流れ出る。倒木は海流で激しく揉まれ、海底に叩きつけられ、ついに大きな波に乗って海岸に打ち上げられる。長いものでは数千年も海中にあるという。木もまた旅人なのだ。海で揉まれた木はツルツルで真っ白になる。銀色に光っているように見えるものもある。それらは「森の骨」と例えられていた。

カラロックの海岸ではビーチコーミング(beach combing)を楽しんでいる人たちがいた。打ち上げられた木や石などのなかから、気に入った形のものを拾っているのだ。現地はホエール・ウォッチングでも有名なポイント。ぼくも歩きながら、クジラに似た形の木を拾い上げてみた。

また、潮が引いた遠浅のビーチは、午後、太陽の熱で水蒸気が上がっていた。そのなかを行く人の姿は、まるで雲の上を歩いているようだった。

ホーの森でエルクに出会う

ホーはオリンピック国立公園のなかでも、とくに森の景観が素晴らしいことで知られる。温帯雨林の森を構成する主な木は、ウエスタン・ヘムロック(ツガ)、ダグラス・ファー(モミ)、レッド・シダー(スギ)、シトゥカ・スプルース(トウヒ)の4種類。どれも似ているのだが、参加したレンジャープログラムで見分け方を教えてもらうと、さらに興味が広がった。

森のトレイルをハイクしているときにエルク(アメリカアカシカ)に出会ったのもうれしい体験だった。大きなオスは500kgもの巨体になる。出会ったのはまだ若いオスだったが、それでも大型野生動物の風格と迫力を備えていた。

6月23日 ボガチエル・ステートパークでトラウト釣りにチャレンジ

ホーを訪ねた夜は、近くのボガチエル・ステートパークに泊まった。小さな州立公園だが、流れている川がよかった。流れの早い瀬があって、その下にゆったりしたプールがある。こういうところはトラウト釣りの絶好のポイントだ。

久しぶりに竿を出して投げてみると、さっそくアタリがある。何度かキャストを続けていると、かわいいサイズのレインボー・トラウトがヒットした。ポイントを変えながら、何匹か釣り上げて納竿にした。

* * *

「趣味はなんですか」と聞かれると、まず「釣りです」と答える。しかし、今回の旅では、何度も釣りで有名な湖や川の近くに宿泊しながら、あまり竿を出すことはなかった。なぜかといえば、過去の経験から岸からのキャストで釣れることはほとんどないと分かっているからだ。

釣りで有名なポイントには、必ずボートを湖に下ろす斜面(ランプ)がある。もし、予定どおりにキャンピングカー「ドル」を現地で預かってもらい、数年にわたって一緒に旅行をすることになるなら、ぜひ小さなボートを積んでおきたい。そうすれば、楽しみが何倍にも膨らみそうだ。

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