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「冒険に必要なもの」とは? 「オリンピック国立公園」での燃え尽き症候群を救ってくれた一杯のワインとスープ──米国放浪バンライフ:Vol.24

6日間のオリンピック国立公園の旅を無事に終え、キャンピングカー「ドル」も安心した様子

アメリカを気ままに放浪3カ月:56日目~57日目

これまで2度にわたりアメリカを放浪してきた筆者。還暦を過ぎた2022年4月から7月にかけて、人生3度目のアメリカひとり旅にチャレンジしてきた。相棒は、1991年式トヨタ「ハイラックス」をベースにしたキャンピングカー「ドルフィン」。愛称は「ドル」。ロサンゼルスから北上してきて、今回の最大の目的地であるワシントン州のオリンピック国立公園にやって来ました。

6月24日 ソルダック・ホットスプリングス

クイノールト湖、カラロック海岸、ホーの森と訪ね、オリンピック国立公園の旅もソルダック・ホットスプリングを残すだけとなった。ソルダックは、その名のとおりの温泉リゾート。ゆっくりお湯に浸かって疲れを癒す。最適の最終目的地になりそうだ。

昼過ぎにキャンプサイトにチェックインして温泉の様子を見にいった。温泉は1時間半ずつの時間割で1セッション10ドルというシステムだった。そのまま夕方入ろうかとも思ったが、考え直して翌朝10時からにすることにした。朝風呂もいいだろう。

その日は、ソルダック滝への0.8マイル(約1.3km)の初心者向けトレイルに向かった。20分ほど歩くと流量の多い豪快な滝を見ることができた。太い筋を作って流れ落ちる滝は素晴らしかったが、なんとなくハイキングが物足りない。どうしようかと思っていると、ディア・レイク・トレイルへのサインが出ていた。片道4マイル(約6.4km)と、ちょっと長いがチャレンジしてみる気になった。

出発したのは午後1時。過去の経験から、登りが続く4マイルのトレイルは1時間半から2時間かかる。だいたい3時に湖に到着し、戻ってくるのが5時。それからサイトに戻ればちょうどいいと計算を立てた。

山奥の湖をめざしてキツめのトレイルに挑戦

歩き始めると、想像していたとおりの坂道。スイッチバックしながら山を登っていく。途中に何の案内もなく、すれ違うハイカーもいない。どのあたりまで来ているのか、さっぱり分からない。2時半を回って、徐々に不安になってきた。3時になっても着かなかったら諦めて引き返そうと決めた。

かなり疲労も溜まってきた。何度も時計を見ながら歩き続けると、ついに2時56分になった。あの先に見えている角までいって諦めようと最後の力を振り絞ると……。曲がったトレイルの先に、かすかに水面が見えているではないか! 「あ、湖だ!」もちろん、日本語で叫んでいた。

マラソンのゴール地点を目指すようにその道を進むと、向こうにひとつの人影が現れた。やはりひとりで歩き切った男性ハイカーだ。人に会ったことでうれしさが爆発した。「ユー・メイド・イット! アイ・メイド・イット!」「ユー・メイド・イット! アイ・メイド・イット!」両手を握り合い、健闘を讃えあった。

熱めの温泉で旅の疲れを癒す

ソルダックの温泉は4つのプールで構成されていた。ぬるめ、中間、熱め、そして、冷たい水のスイミングプールだ。アメリカの人たちはぬるめがちょうどいいらしく、プール自体も大きくたくさんの人が集まっている。ぼくは、温泉の本場から来たプライド、というわけではないが、熱めを中心に楽しんだ。

久しぶりの温泉は疲れを癒してくれたが、家族連れが多いのが難点だった。6日間にわたってストイックな山や海を歩き回ってきた神経が、走り回る子どもたちや、フリフリの派手な水着を着たおばあちゃんたちに囲まれることを拒絶していた。キャンプ場も家族連れが中心でうるさい。突然、現実に引き戻された感は否めなかった。

6月25日 ポート・エンジェルスで軽く燃え尽き気分

ソルダック・ホットスプリングスの滞在を終え、ポート・エンジェルスの安モーテルに投宿した。ポート・エンジェルスはオリンピック国立公園の玄関口に当たる町で、2、3日前まではここからハリケーン・リッジ・キャンプ場を目指すつもりだった。

しかし、次の目的地を目指す心の炎が小さくなっていた。オリンピック半島を時計回りに回り、東に進み始めると森の特異性も薄れてきた。ソルダックの森は温帯雨林と普通の森の中間になっていた。ハリケーン・リッジに行っても、クイノールト湖やカラロックで味わった感動は期待できなかった。

オリンピック国立公園の後は、ポート・タウンゼントからフェリーで湾を渡り、ワシントン州北部のノースカスケード国立公園を訪ねる計画があった。観光局のマーシャさんからフェリーの予約について、丁寧な情報もいただいていた。

ところが、その計画に対しても気持ちが盛り上がらなくなってしまった。最大の目標が終わり、冒険の炎が消えかかっている感じなのだ。おかしな感想だが、アドベンチャーを続けていくには、モチベーションという燃料が必要なのだと思い知らされた。

地元の魚貝をつかった「ガンボ」の美味でひと段落

その晩は、久しぶりに外食に出た。オリンピック国立公園の滞在を無事に終えた、ひとりきりのお祝いだ。食事の前に町を散歩すると、ほどよく寂れた感じに好感を持った。これまでオリンポス山の周囲を旅行しながらピークを見ることがなかったが、最後に町から眺望できたのもよかった。

小さな買い物をした店でレストラン情報を聞くと、「フック&ライン」というシーフードレストランを推薦してくれた。名前もいい。この店が正解で、注文したサーモン・ステーキとクラフトビールはイメージどおりの味だった。

そして、ふともう一度メニューを見直すとガンボがある。ガンボはニューオリンズのザリガニとコメ入りのスープだ。なぜ、ここに? と思い、説明を読むとノースウエスト・スタイルとあり、このあたりで取れる貝やハリバット(カレイの仲間の大型魚)を使っているという。

地元産のワインと一緒に食べるガンボは抜群においしく、涙がにじんだ。山にこもり続けた日々の思い出が、胸の奥にずしりと沈んでいった。

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