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1億円で落札! レクサス「LFA」に新車価格の3倍弱のプレ値がついた! 至高のV10エンジンにはその価値あり

レクサス「LFA」のフロントマスクのイメージは、その後の「86」にも影響を与えた!?

500台限定のLFA

世界中で500台のみ市販されたレクサス「LFA」。このLFAを語るうえで重要なのは至高のV10エンジンである。そのエンジンとはいかなるものなのか、そして現在のLFAのオークション市場での評価はどれくらいなのだろうか。

至高のV10エンジン

1LR-GUE型V10、4.8Lエンジンのサウンドは天使の咆哮といわれる、美しいもの。そのエンジンは、サウンドだけではなくレスポンスのよさも大きなポイントとなっており、一般的なアナログ式のメーターではエンジン回転の上下に追いつかないことから、デジタルメーターを採用した、といわれているほどに鋭い。

オイル供給は、一般的なウェットサンプ式ではなく、オイルタンクを別に持ち、7個配置されたオイルポンプの力でエンジン内に供給するドライサンプ方式を採用。これによってサーキット走行など高G発生下でも、安定したオイルの供給がおこなわれるようになっている。オイルクーラーは、水冷式と空冷式を装備していて、高負荷時での油温安定を実現している。

最高出力560ps/8700rpm、最大トルク480Nm/7000rpmを発生する、LFAにしか使われていないV10エンジンは、フロントに配置されている。駆動輪は後輪のため、レイアウト的にはFRということになるが、トランスアクスル方式を採用し、ラジエーターやバッテリーを後部に、トランスアクスル用オイルクーラーとウインドウォッシャータンクを後輪前方に配置することで、前後の重量配分は48:52となった。

カーボンモノコックシャシー、カーボン製外板の採用など、軽量化にも注力していて、車重は1480kgを実現。ちなみにこのカーボンシャシーは、自社製。元町工場内にオートクレーブを用意して製造を行った。

さらに、運転席を重心になるべく近づけるため、センタートンネルの幅を狭くし、上部にプロペラシャフトが通るトルクチューブを、その下に排気管をレイアウトするという2階建て構造を採用。そのトルクチューブは、航空機製造の技術を活かしてつくられている。これがエンジンとトランスアクスルを締結していることが、シャシー剛性の向上にも役立っている。

トランスミッションはシングルクラッチ式のASG(Automated Sequential Gearbox)という6速セミATを採用。クラッチを切る・シフトチェンジをする・クラッチをつなぐという、シフトタイミングに要する時間を、0.2秒から1.0秒までの間で、7段階で調整できるようになっている。

ブレーキローターはカーボンセラミック製。ブレーキキャリパーは前後ともモノブロックのブレンボ製を採用している。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアはマルチリンク。ショックアブソーバーはKYB製の別体タンク式モノチューブが装備されている。

最高のクルマを作るというトヨタの矜持

ざっと見てきただけでも、深いコダワリをもってつくられているのが、LFAというクルマだということがわかる。新車価格は3750万円と、日本の量産車としては当時の最高価格だったが、それでも採算は取れないと言われていた。もちろん、大量生産ができるのであればコストの回収ができるのだろうが、LFAは素材や構造などへのコダワリから、1日に1台をつくるのが精いっぱい。

実際500台すべてが納車されるまでに、約25カ月という期間がかかっている。ではなぜ、つくり続けたところで儲かるわけはないLFAを世に送り出したのか。

そこにはトヨタの、最高のものをつくるという意志があった。それまで、飛び抜けてよくはないかわりに我慢できないほど悪いところはない、という平均点ちょっと超えというクルマをつくり販売台数を増やしてきたトヨタは、それがゆえにトヨタじゃなきゃいやだ、というファンを増やすことはできていなかった。

もちろん、KP/EPスターレットやAE86レビン/トレノ、セリカ、スープラ、MR2など、「これは」と思わせるクルマはあった。しかしそれらも、当時のライバル車と比べたとき、どこかに突き詰めきっていないという部分が見え隠れしていたところがある。

そんなイメージを覆すために、レクサスブランドの頂点としてつくられたのが、LFAだったのだ。このクルマをつくったことによって得られた知見は、いまもレクサス、そしてトヨタの開発に活かされている。LFAというモデルに乗るということは、そうした開発者の想いを感じるということでもあるのだ。

左ハンドル仕様のLFAの落札価格は?

2023年2月1日、パリで開催されたRMサザビーズオークションに出品されたLFAは、ヨーロッパで長い歴史を持つ、The Degenève Collectionに新車から収蔵されていた個体だ。シャシーナンバーは000118。2013年に納車されたもので、2019年までの走行距離は5870km、現在でも9059kmしか走行していない。

ボディカラーはパールホワイト。ヨーロッパで納車されたLFAは40台といわれているが、その中でパールホワイトは7台だったそうで、これはその中の1台ということになる。コレクションされていたクルマということもあって、状態は完調で付属品はすべて揃っている。日本風にいうなら、ワンオーナー車という希少性もある。

そんなLFAのハンマープライスは74万7500ユーロ(邦貨換算約1億500万円)という驚異的なものとなった。新車価格の3750万円からいうと3倍弱のプライスである。しかし今となってはLFAなら──そしてこの状態の良さなら、1億円近い価値があってしかるべきものなのだろう。

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