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日産R35「GT-R」は氷雪路でも楽しい!「プロ直伝」乗りやすいセッティングのコツをお教えします

2022年モデルの日産GT-RプレミアムエディションTスペックに女神湖で試乗

絶対的な速さだけでなくドライビングの質も進化し続けている

日産が2023年1月に長野県の女神湖で開催した氷上試乗会に参加し、最新の電動4WD「e-4ORCE」を搭載したEV「アリア」やSUV「エクストレイル」など、多彩なモデルを乗り比べてきました。今回は、2007年のデビュー以来のロングセラーとなっているR35「GT-R」の、氷上だから分かる走りの進化をお伝えします。

いまなお一級のスーパースポーツであり続ける優秀な基本設計

BEVとe-POWERモデルの拡充で、電動駆動化を着々と進めている日産だが、いまのところ、「フェアレディZ」と「GT-R」の2台のスポーツカーは、それとはもっともかけ離れたところにいると言っていいかもしれない。

いわば純内燃機関による純機械駆動車。果たしていつまでこのままの在り方で生き残れるのか、その方が心配されるが、フェアレディZは、2022年にプラットフォームやボディの基本骨格は踏襲しつつ、内外装からパワートレインまでを一新するという、型式上はマイナーチェンジながらも、いわば「ほぼフルモデルチェンジ」を敢行してきた。これで少なくともあと数年は、このままでいけるだろうといったところにある。

一方、GT-Rは厳しい騒音規制への対応などを巡り、いよいよ2022年モデルで最後となるかと噂されていた。だが、2023年1月には2024年モデルが発表になり、規制に対応するとともに、空力のリファインなどの進化をともないつつ、予想外ともいえるさらなる延命を遂げることになった。

GT-Rは、2007年の誕生時からマルチパフォーマンス・スーパーカーと自ら名乗っていたが、たしかに、当時は数少ない雪上でも走れるスーパースポーツでもあった。それは日産がほぼ毎冬に開催している、雪上あるいは氷上試乗会でも、あえて用意しているFRのフェアレディZのドライビングには手こずることが多いのに対して、GT-Rはそれこそスポーツドライビングを楽しませてくれることにも現れている。

それにしても、17年にもわたりモデルチェンジを経ずに販売され続けるとは思いもしなかったが、少なくとも走りに関していえば、いまも一級であり続けているのは、なにより基本の思想と設計が優れていたことの証であり、さらに専用の組み立て・生産方式ではなく、量産ラインでの混流生産にこだわったことが、短命に終わらずに済んだ要因だろう。

氷雪路面でも乗りやすさが着実に進化してきている

試乗車は2022年モデルのプレミアムエディションTスペックである。これは昨冬の雪上試乗会に用意されていたのと同モデルだ。装着タイヤは、GT-R専用のランフラットスタッドレスタイヤのダンロップDSX CTTである。これは2009年の発売で、スタッドレスタイヤの技術進化からすると、1世代、あるいは2世代前ともいえるが、少量生産商品だけに、新製品に切り替えていくことはなかなかハードルが高いのかもしれない。

今冬の雪上試乗会では、フェアレディZをはじめほかの試乗車の大半が、いわば最新世代のスタッドレスタイヤであるブリヂストンのVRX3を装着していたことを考えると、今回の氷雪路面でのタイヤ性能の差は、多少なりとも考慮しておく必要はありそうだ。

といったことを前提として走らせてみたが、GT-Rはこうした路面でも乗りやすさが着実に進化してきている。これは例年、可能な限り雪上試乗会に参加させていただいており、さらにタイヤ性能には変化がないからこそ、よく知れるところなのだ。

今冬も長野県の蓼科にある女神湖が全面結氷した上に作られた特設コースが試乗会場で、ここでまず悩むことになるのが、VDC-R、サスペンション、トランスミッションの3つに、それぞれに3モードがあるドライビングのセットアップスイッチをどこにセレクトするか、である。

V6エンジンは微小なアクセル操作へのレスポンスが向上

まずはデフォルトとして、すべてノーマルモードとして走り出してみる。ちなみに車重は1760kgで、発売当初とは異なり、いまとなっては超高性能スポーツのなかでそれほど重い部類ではなくなってきた。前後重量配分は約55:45である。

今回の氷上の上に雪が少しばかりのった路面では、ATTESA E-TS(電子制御4WD)といえども発進時は後輪のスリップに即応するように前輪へ駆動輪が配分されるが、それでもトラクションコントロールは介入して、動き出し直後の加速は少し抑え気味となってしまう。そこでパドルで2速にすぐに入れて駆動トルクを抑えたところから、次第に強力な加速が可能になる。この状態では、おそらく前後駆動配分は50:50に近いところにあると思われ、さすがにパワフルな加速感を保ったままに早めに3速にアップとする。

最初のコーナーへのかなり余裕をみたブレーキング開始速度は、アリアe-4ORCEと大差ない約100km/hを越えたあたり。この領域では駆動輪のスリップも少ないので、まあまあ正確な速度表示だろう。ただ、車重がアリアよりも400kg以上軽いので、この路面でもブレーキングではより短い距離で速度を落としていくことが可能なはずなのだが、タイヤ性能の差のためか、あまり差がなかった。

Tスペックはカーボンブレーキが標準装備だが、この低い気温下で、ローター温度も全く上がっていない状態でも、それほどブレーキペダルのコントロールに気を使わせることがないのは立派だ。

日産のトラクションコントロール技術の源ともいえるATTESA E-TSとともに、最高出力570ps、最大トルク637Nmという3.8L V6ツインターボエンジンの、微小なアクセルワーク領域からのピックアップが向上していることで、旋回時の姿勢制御も思ったより行いやすい。ただし、コーナーへの進入できっちりと向きを変えることが必要だが、それも若干のフロントヘビーが旋回初期のきっかけづくりで好ましい方向に働くことで、まずここではフロントエンジンのメリットを感じさせることになる。

さらに、ATTESA E-TSの前後駆動力配分は、基本的に後輪駆動ベースで前後0:100から50:50まで変化させているなかで、旋回中のアクセルワークにより前後駆動配分はつねに変化している。VDCが介入してくるようなシーンでも、わずかばかりリアを張り出すような姿勢にも持っていけるので、フロントからドリフトアウトしてしまうことにはなりにくく、扱いやすいと思えた。

一見すると矛盾したセッティングが一番乗りやすい!?

試乗は2ラップだけなので、2ラップ目はVDC-RはRモードにした上で、サスペンションはなるべく足が動きやすいコンフォートモードとする。さらにトランスミッションはSAVEモードに。一見すると矛盾するセットのようだが、これが今回の路面状況では一番乗りやすかった。トランスミッションは、結局早めのアップシフトや好みのタイミングでのダウンのためにパドルを使っての操作となる。このため、SAVEモードの効果は、穏やかな出力特性に見い出す形だ。

このドライブモードセットだと、過剰なパワー発生やレスポンスは抑えられ、必要なタイヤに接地荷重を与えやすい。さらに、全体としてはリア寄りの駆動力をもたらしながら、安定性が必要な際には即座に前輪へと駆動配分が高まること、かつVDCの介入度は控えめにすることで、コーナリングにおける安定性と姿勢の制御のバランスに優れるのだった。もちろんVDCはオフにもできるので、振り回すならばそれも有りである。その状況でも、横を向きながらも、しっかりと前に進ますことができるのは頼もしい。

毎年、雪上試乗会に参加しているなかで、だんだんと状況に見合ったセットアップを覚えてきたというわけだ。たとえば、何年か前の試乗会では、凍った湖面に雪が20cm以上積もった状況でところどころにかなり深い雪の轍(わだち)ができ、さらに穴状に大きく掘れてしまっているようなところも点在する荒れた路面だったことがあり、そこにタイヤを落とすとフロアが完全に路面に着いてしまうシーンがあった。その際には、VDC-Rはパワーが得やすいノーマルモードとし、サスペンションはバネ上がなるべく暴れないRモードを選ぶのが一番走りやすかった。

* * *

ただ、パワートレインの特性も、年々、パワーを高めながらも低回転域からのレスポンスが向上していたり、今回のTスペックのように、とくに足のしなやかな動きにこだわった仕様が生まれてきたりなど、単に絶対的な速さを増しているだけでなく、ドライビングの質も向上してきていることが、この雪上試乗会でより深く知ることができている。

17年前のデビュー当時には、このスタイリングでは……と思ったのも事実なのだが、いまとなっては、雪上などではからきしダメといったスーパースポーツの常識を覆しただけでなく、現在も世界一級の性能を維持し続けるR35 GT-Rには、あらためて畏敬の念を抱かざるを得ないのだった。

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