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「エレメント」はホンダ得意の「早すぎた登場」の典型車! アウトドアブームのいまこそ中古車で手に入れるとオシャレです

無骨なデザインが現代にも通用する

サーファーがガンガン使うのに相応しいルックス

今、中古車を発見し、程度が良ければ即買いの1台が、2003年4月に日本で発売されたホンダ エレメントだ。“日本で発売された”とわざわざ説明したのは、このクルマ、開発がホンダR&Dアメリカ、生産もオハイオにあるホンダ・オブ・アメリカであり、日本で発売されたのは右ハンドル化した逆輸入車だからである。

日本仕様は1グレードしかなかった

コンセプトは「ライフカードステーション」。つまり、海岸にあるライフセーバーが常駐するステーションだ。西海岸のサーファーの愛車として照準を合わせたクルマなのである。ベースは当時のCR-Vだった。ただし、SUVというよりはマルチパーパスビーグルという立ち位置で、なんとセンターピラーレス&観音開きリアドアを採用しているところが最大の特徴となる。

ボディサイズは全長4300mm、全幅1815mm、全高1790mm。ホイールベース2575mm。ショーティかつワイドで背高なプロポーションであり、リアクォーターウインドウが大きく(ラゲッジスペースを広く見せる効果あり)、前後バンパーやフェンダー、サイドステップなどは基本的に無塗装(オプションでボディ同色あり)。けっこうワイルドで、サーファーがガンガン使うのに相応しいルックスだった。

パワーユニットはK24A型、2.3L直4で最高出力が160ps、最大トルクは22.2kg-m+4速ATの1種類。というか、日本仕様は1グレードでの展開だった。タイヤは215/70R16サイズである。

使い勝手のいいラゲッジスペース

サーファー御用達だから、インテリアにもこだわりがある。シートはアメリカ向けゆえ大きく、しかも防水シート生地が奢られていた。ただし、インテリアの質感はプラスチッキーで、高くない(ホンダの軽自動車レベル!?)。マイル表示も併記されるメーターはコーン型の3連タイプ。けっこうクラシカルな部分もあったりする。

ラゲッジスペース優先パッケージとしているため、左右跳ね上げ格納式の後席は足元こそ広いものの、シートのかけ心地は平板で、リアサイドガラスもポップアップ式で上下に大きく開くことはできないのである。つまり、後席の居心地はあまりよくない。サーファーがひとり、またはカップルで、ボードを積み愛犬を後席に乗せて海に向かう……そんな使い方を前提としているのだろう。

バックドアが上下2分割で大きく開くラゲッジスペースの使い勝手は抜群と言っていい。後席は左右跳ね上げ式だから、格納すればフラットかつ広大な拡大ラゲッジスペースが出現。フロアはもちろん防水のワイパブルフロアで、汚れや水気に強い素材となる(たしか天井も撥水仕様だったと記憶する)。バックドアの手前に水平に開く下側を空ければ、そこがベンチになり、着替えや休憩にうってつけ。

まちなかでも扱いやすい最小回転半径は5.2m

そんなエレメントを走らせれば、立ち気味かつ天地に狭いフロントウインドウの視界が特徴的だ。つまり、ドライバーとフロントウインドウが、往年のミニやポルシェ911のように近く、人車一体感を醸し出す。だが、サイドウインドウは天地に狭く、よく言えば囲まれ感がある室内空間だ。しかし、狭さなどまったく感じない。それは室内幅の広さと天井の高さによるものだろう。 

走行性能はアメリカンかつイージーに走るのに最適だ。エンジンはアコードとも共通するが、低回転域からトルキーで、1560kgのボディを力強く引っ張り、加速させる。決して静かでも超パワフルでもないエンジンだが、おおらかな気持ち良さはしっかりと伝わってくる。海沿いの道を、サイドウインドウを全開にしてクルージングするには、それでいい。ちなみにパワーステアリングはアメリカンな軽さではなく、ホンダ流にドシリと重めにしつけられている。

嬉しいのは幅広ボディにして小回りが利き、扱いやすいこと。なにしろ最小回転半径は5.2mと小回り性抜群なのである。

わずか2年8カ月の寿命だったエレメント

グッドイヤーのオフロード系タイヤを履き、乗り心地も悪くない。特別に快適……とは言えないものの、センターピラーレス車にありがちなボディのゆるさも全く感じられない、ドシリとした乗り味が好ましい。ワイドトレッドを生かした安定感やキビキビ感は、なるほどホンダ車である。いずれにしても、海に似合うクルマであることは間違いない。

以上のレポートは2003年春に、当時、講談社ホットドッグプレスのクルマ記事担当だった筆者が、沖縄試乗会のブセナリゾート周辺を試乗した時の試乗メモからの抜粋である。

さて、そんなホンダ・エレメント、日本では2005年12月に販売終了。わずか2年8カ月の寿命だった。当時としては幅広なボディ、観音開きドアによる後席の乗降性、ワイルドすぎるルックス、そして259万円という高めの価格設定などから、人気がいまひとつ盛り上がらなかったからだろう。

だが、つい最近、六本木で見かけたのだが、これがちょうど20年前のクルマとは思えないカッコ良さ、今風のルックスを持っていたのだから、感動モノだ。今、新車で発売すれば、観音開きドアの使い勝手はともかくけっこう注目され、アウトドアブームの最中、ヒット作となるんじゃないかと思わせてくれたほどだった。

そこで中古車を調べてみると、新車当時の車両本体価格259万円に対して、意外なほど値落ちが少ない(プレミアム価格!?)120~220万円という値付けとなっていた。なかには走行5万キロちょっとという個体もあるにはあったが、クルマのキャラクター、新車からの年数によって、10万キロオーバーの個体がほとんど。

もし、10万キロ以下、修復歴なしの個体で程度のいいエレメントがあれば、これは見っけモノである。先進運転支援機能などは皆無だが、サーファーのみならず、アウトドア派のクロスオーバーモデルとして今でも絶大なる存在感を発揮してくれる、ホンダのネオクラシックカーの1台となりうるはずだ。

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