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3700万円に高騰! 日本から流出したアルファ ロメオ「8C」はカロッツェリア・トゥーリングでモディファイされていた!

2006年のパリ・サロンにて「500台を限定生産」で販売された

今後もマーケット価格は堅調に推移すると予測

フランスの首都パリにて毎年行われるクラシックカー・トレードショーの世界最高峰“レトロモビル”では、オフィシャルオークションに相当する仏“ARTCURIAL(アールキュリアル)”社を筆頭に、国際格式の大規模オークションが複数開催される。そんな状況のもと、クラシック/コレクターズカー・オークション業界最大手のRMサザビーズ欧州本社がこの2023年2月1日に開催した“PARIS”オークションでは、レトロモビルに訪れる目の肥えたエンスージアストを対象とした、レアなクラシックカー/コレクターズカーたちが数多く出品された。今回はその中から一台のアルファ ロメオ「8Cコンペティツィオーネ」をご紹介しよう。

アルファ ロメオの真正スーパーカーとは?

アルファ ロメオ8Cコンペティツィオーネは、2003年9月のフランクフルト・ショーに、まずはコンセプトカーとして出品。その名称は、戦前/戦後を挟んだ時期に製作されたアルファロメオの歴史的至宝“8C”シリーズにオマージュを捧げたものである。

また、ボディデザインについても1960年代末の伝説的スーパースポーツ、“ティーポ33ストラダーレ”へのオマージュを体現したものとされ、この時期ヴァルター・デ・シルヴァ氏の後継としてチェントロスティーレを率いていたアンドレアス・ザパティナス氏の主導による、社内デザイン案が採用されたといわれている。

ショーデビューの際に公表されたスペックによると、アルミ+コンポジット製のスペースフレームに、カーボンファイバー製ボディを組み合わせ、フロントミッドに搭載するV型8気筒4.2リッター(排気量から判断すればマセラティ用?)+機械式スーパーチャージャーを組み合わせた400ps超級エンジンで後輪を駆動。最高速度は300km/hを超えると謳われていた。

ところが、1990年代末からアルファ ロメオ社内で発案され、8Cコンペティツィオーネでも根幹をなすはずだった専用スペースフレームの計画は、理由も明かされないままキャンセル。そのためか、社内デザインである8Cコンペティツィオーネの生産化プロジェクトも、一時期は棚上げになってしまったかに見えていた。

それでも翌2004年の“コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ”コンセプトカー部門で金賞を得たことによって、再び力を得た8Cコンペティツィオーネは、2006年のパリ・サロンにて「500台を限定生産、2008年からEU圏内でデリバリー開始」という生産スケジュールとともに、ついに生産バージョンの正式なワールドプレミアにこぎつけた。

生産型の8Cコンペティツィオーネは、日本のスバルに移籍したザパティナス氏に代わってチェントロスティーレのディレクターとなった、ヴォルフガング・エッガー氏がデザインワークを取りまとめたと公表されていた。

スチール製のプラットフォームと総カーボンファイバー製パネルを組み合わせたボディに、マセラティV8と基本を一にする4.7リッターV8・450psを搭載。シングルクラッチ式6速ロボタイズドMT“Q-セレクト”を組み合わせ、最高速290km/h/0-100km/h加速4.2秒以下という高性能を標榜する、正真正銘のスーパーカーとなったのだ。

名門カロッツェリアが模様替えした8Cは、3700万円で落札!

2023年2月のRMサザビーズ“PARIS”オークションに出品されたアルファ ロメオ8Cコンペティツィオーネは、500台が世界限定生産されたうちの一台にして、アルファロメオの歴史には欠かせない名門カロッツェリアの手による唯一無二の魅力的なドレスアップが施された一台でもある。

新車として製作された際のカラーはグレー・メタリックで、まずは日本にデリバリーされたという。その後ヨーロッパの愛好家に譲渡され、2016年にエクステリアとインテリアのコスメティックを模様替えするため、ミラノ近郊ローの街にある“カロッツェリア・トゥーリング・スーペルレッジェーラ”に移送されることになる。

名門カロッツェリアによる大規模なモディファイによって、エクステリアは特別注文の“ロッソ・ストラトスフェロ(Rosso Stratosfero)”に塗り替えられた。そのカラーリングで仕上げられた8Cは、世界中でもこの個体だけと言われている。

新車以来の走行距離がわずか9907km

いっぽうインテリアでは、アルファ ロメオとツーリングとの関係を模索したディスコ・ヴォランテをモチーフに、ボディ同色のバケットシートシェル、エアベント、ドアカード、ハンドメイドによるアルミニウム製ドアハンドル、ブラックアルマイト仕上げのアッパーダッシュボードなどが追加された。このモディファイには8週間の期間と、3万4720ユーロの費用を要したとのことである。

またこの8Cコンペティツィオーネは、アルファ ロメオのスペシャリストたちによってメンテナンスされてきたことが記録に残っており、最後の大規模サービスは2022年2月にルクセンブルクの“ガレージ・インティニ”によって施行。その費用は6248ユーロに上ったという。

オークションカタログ作成時のオドメーターは、新車以来の走行距離がわずか9907km。オークション出品にあたっては、純正のラゲッジセットと10スポークアロイホイールのスペアセットが付属していた。

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2010年代中盤以降のクラシックカーマーケットにおける爆発的な高騰により、それまでは低評価に甘んじていたクルマたちが、続々と高値で取引される事例が頻発していることは、これまでにもお伝えしてきたとおりだが、アルファ ロメオ8Cコンペティツィオーネもそんなモデルの一つ。新車デリバリーが開始したころは、世界中で500台の限定枠を争う状況となっていたものの、2010年代初頭にはマーケットで持て余されたこともあり、日本円にして1000万円台半ばくらいで流通していた事例も散見された。

ところが、近年になってその魅力と希少性が再認識されたのか、今回のオークション出品に際しても25万~33万ユーロという、新車時に設定されたプライスを大きく上まわるエスティメート(推定落札価格)を設定。そして2月1日に開催された競売では、エスティメートに届く25万ユーロ、日本円換算では約3700万円で落札されるに至った。

しかも、アルファ ロメオにとって8Cコンペティツィオーネ/スパイダーこそが最後の純ICEスーパーカーになることは間違いないことから、今後もマーケット価格は堅調に推移すると予測されているようだ。

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