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わずか226台のランボルギーニ「イスレロ」は2800万円! 創業者フェルッチオが愛したエキゾチックGTカーでした【スーパーカー列伝24】

2022年2月のRMサザビーズ「PARIS」オークションで21万8500ユーロ(約2800万円)で落札された1969年式ランボルギーニ イスレロS。(c) 2021 Courtesy of RM Auctions

お子さまには刺さらなかったが大人になって良さがわかる名車

1970年代中ごろ、子どもたちの周りにあるさまざまなモノがクルマ関連グッズと化した空前絶後の「スーパーカーブーム」。当時の子どもたちを熱狂させた名車の数々を回顧するとともに、今もし買うならいくらなのか? 最近のオークション相場をチェック。今回は生産台数わずか226台とマイナーな存在でありつつも、優れたフロントエンジンGTカーだった「イスレロ」です。

フェルッチオ・ランボルギーニは「ミウラ」や「カウンタック」よりこちらがお好み

スーパーカーブーム全盛時に子どもたちを熱くさせたランボルギーニといえばミッドシップ2シーターの「ミウラ」および「カウンタック」だ。しかし、じつはこの超有名な2モデルは、フェルッチオ・ランボルギーニの理想から少し外れた存在であった。フェルッチオはイスレロのような豪華で快適なフロントエンジンGTカー(2+2もしくは「エスパーダ」のようなフル4シーター)のことが好きだったのだ。

実際、ランボルギーニのチーフエンジニアであったジャンパオロ・ダラーラがミウラの開発を提案したときに、フェルッチオは「どうせ、そんなクルマは売れないが造ってよし」と言い放ったらしい。そしてミウラの後継モデルとなるカウンタックがプランニングされたときにフェルッチオはすでにスーパーカービジネスの第一線から一歩退き、カウンタックが市販開始となった1974年の時点では手持ちのランボルギーニ株をすべて売却して会社を離れていた。

ビジネスマンズ・エクスプレスとして好評を博した

そのような背景はスーパーカーブーム全盛時に子どもたちには伝わるはずもなく、ミウラやカウンタックばかりがチヤホヤされた。しかしその一方、フェルッチオの理想を具現化し、ランボルギーニ初の量産車として登場した「350GT」や、その後継モデルである「400GT 2+2」の流れをくむフロントエンジンGTカー(ある意味、こちらがメインストリーム!)も継続的にリリースされ、1968年に登場したイスレロは400GT 2+2の発展版として、4L V12エンジンを搭載していた。

スーパーカーというよりもビジネスマンズ・エクスプレスとして好評を博したイスレロは、イタリアン・エキゾチックハイパフォーマンスGTカーとしてはスタイルが地味すぎたのか、後継モデルの「ハラマ」が1970年に発売されたときに引退したので、いま思うとスーパーカーブーム全盛時に注目する子どもたちが絶望的に少なかった。筆者もスーパーカーブーム全盛時にその存在は知っていたが、実車に遭遇する機会は無く、写真を見ても感動することはなかった。

トゥーリングの流れをくむカロッツェリア・マラッツィが手がけた

控え目なイスレロのボディはカロッツェリア・マラッツィが生産したが、このコーチビルダーがマイナーだったことも注目度の低さに拍車をかけていた。350GTおよび400GT 2+2のボディ生産はカロッツェリア・トゥーリングが担当したが、イスレロが誕生したときにトゥーリングはすでに操業を停止。トゥーリングにいた従業員の多くが同社のデザイナーだったマリオ・マラッツィが率いるカロッツェリア・マラッツィに転職したといわれている。カロッツェリア・マラッツィは、1967年創業で、トゥーリングの仕事を引き継ぎ、スーパーレッジェーラ工法を取得していたことでイスレロのボディを手がけることになったそうだ。

そのようなマニアックなエピソードを有していたイスレロの最大の魅力は、ランボルギーニの最初のコンセプトカーである「350GTV」が採用していたリトラクタブルヘッドライトを持っていた点で、この部分から子どもたちは超微量だがスーパーカーらしさを感じ取ることができた。

1969年式イスレロSは2800万円で落札

販売が不調で、その状況を打破するために高性能版である「イスレロS」も登場したが、やはり多くの人から注目を浴びることはなく、イスレロは短命モデルとなってしまった。そのため生産台数が226台と極めて少ないが、去る2022年2月にRMサザビーズが開催した「PARIS」オークションでは1969年式ランボルギーニ イスレロSが21万8500ユーロ(当時レートで邦貨換算約2800万円)で落札されている。

「神は細部に宿る」という言葉の奥深さや、鍋の中に入っている春菊の美味しさと同じように、イスレロには子どもには分からないが大人になったからこそ理解できる魅力がある。半世紀以上が過ぎた現代の交通環境の中でさりげなく使うと粋なクルマだと思う。

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