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スバルなのにポルシェデザイン!?「レガシィ ブリッツェン」は機能がフォルムを生んだエアロパーツが特徴でした【カタログは語る】

スバル レガシィツーリングワゴン&B4の限定車ブリッツェン。写真は2001年モデルのカタログ

「稲妻」の名を冠した日独コラボの限定レガシィ

スバル「レガシィ」は長い歴史のなかで数々の限定モデルが生み出されてきましたが、今なお人気の高いのが2000年から販売されていた「ブリッツェン(BLITZEN=ドイツ語で稲妻、電撃の意)」です。ドイツのポルシェデザインとスバルが異色のタッグを組んだ限定モデルを振り返ります。

イタルデザインやピニンファリーナと並ぶ工業デザインの名門、ポルシェデザイン

ポルシェデザインと聞いて、皆さんならどんなモノを思い浮かべるだろうか? 筆者はデザイン分野は広く浅くながら興味の対象であり、かつプロダクト、とくにガジェット系には(最近はめっきりリサーチが追いついていないが)目がないほうだから、ポルシェデザインというと反射的にIWC(国際捕鯨委員会ではなく、時計のほう)のチタン製のクロノグラフや、フィルム時代に当時のヤシカから登場した1眼レフカメラの最初のコンタックスRTSなどを思い出す。

ほかにmomoにポルシェデザインのステアリングホイールがあったり、LACIEから外付けポータブルHDDが発売されていたことがあり、これはMacでも使えるということで筆者もひとつだけ買った覚えがある。

プロダクトとしてはほかにも調理器具、ラウンジチェア、サングラス、ペン、アタッシェケース、NECの電話機など、イタルデザイン、ピニンファリーナなどと同様、幅広い分野のインダストリアル・デザインを手がけている。最近では2020年にポルシェ「パナメーラ」のインパネ上に備わるアナログ時計と同デザインのスポーツクロノを発売。それを知ったとき筆者などは、のどから手が出る思いだった。

ポルシェデザインは、1972年、フェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェがドイツ・シュトゥットガルトに設立。クルマのポルシェと同様に「機能すなわち形態美」を方針とするところから、同じドイツのバウハウスにも通じる、クールでシンプルな「作風」を特徴としている。

3代目レガシィB4をベースに2000年発売

そんなポルシェデザインをパートナーに誕生したのがブリッツェンだった。初出は1999年の第33回東京モーターショーで、当時の3代目「レガシィB4」(セダン、BE型)の「RSK」をベースに仕立てられたもの。ちなみに「ブリッツェン」の名はこのショーモデルのために付けられたもので、会場の展示車には市販車とは異なるブロック体で「BLITZEN」と書かれた化粧プレートが装着されていた。

名付け親は、当時のスバルのさるモーターショー関係者で「ポルシェ→ドイツ→稲妻とシンプルな発想で付けた」のだったそう。商標関係の問題がないことがわかり、そのまま市販車の車名として採用され2000年に発売された。

カタログも特別感あふれるデザインだった

実車は外観ではフロントグリル、前後バンパー、そして中央部を凹ませた独特な形状のリアスポイラー、それと17インチアルミホイールがポルシェデザインの専用品に(サイドシルはショーモデルとは異なるデザインだった)。リアドア以降のウインドウも濃色ガラスに。

インテリアでは選択仕様で本革シート、本革トリム、ソフトレザー縫製コンソール蓋にランバーサポートを備えたレザーパッケージが用意されたほか、SONYのカーオーディオ(MD+CDプレイヤー含む)を装備。そして機能面ではMT車にフロント・ヘリカルLSDが装着されていた。

筆者の手元にあった写真のカタログは2001年モデルで、このときにリアガーニッシュがボディ色となるGT-B E-tuneベースのツーリングワゴンも設定された(B4、ツーリングワゴン各1000台)。ツーリングワゴンは人気車種だったから、ブリッツェンは待たれての登場だった。

B4、ツーリングワゴンともに、搭載エンジンはEJ20型水平対向4気筒DOHC 16バルブ2ステージツインターボで、当時のスペックは最高出力260ps、最大トルク32.5kgm(いずれもネット)というものだった。カタログそのものは通常の綴じたものではなくファイル状のケースに中身は1枚ずつの厚紙を使ったもので、いかにも「特別感」を演出したものとなっていた。

4代目レガシィまで継続してブリッツェンがリリース

なおブリッツェンはその後も継続してリリースされた。ざっと振り返っておくと、2002年には前後バンパーデザインの小変更や6連星エンブレムの装着や、標準オーディオシステムの変更(ソニー→マッキントッシュ)、さらに3Lの水平対向6気筒を搭載したブリッツェン6もあった。2003年になるとイメージカラーがプレミアムシルバーとなり、内装にオレンジ/ブラックのコンビの本革(シート、トリム)が採用されるなどした。

さらに2003年にレガシィが4代目BL/BP型へとフルモデルチェンジ、それから3年が経った2005年に、B4 2.0GTをベースに「ブリッツェン2005モデル」が期間限定として登場。追って2006年になるとツーリングワゴン版が設定され、、セダンもベース車がB4 2.0GT spec.Bに改められた。このモデルが市販車では最終となり、2015年の東京オートサロンでは、6代目レガシィB4をベースに、歴代ブリッツェンをモチーフにしたクルマが登場するも、このモデルは残念ながらコンセプトカーであり、市販化には至らなかった。

* * *

今でも初代ブリッツェンのツーリングワゴンやB4を街中でときおり見かけるが、姿を見ると、鮮やかなプレミアムレッドのボディ色、ポルシェデザインの力強い佇まいに思わず引き寄せられる。走らせることへの心意気が熱かった時代を象徴するクルマだった。

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