一般に販売されることのない貴重なチャンスだった!
2023年8月17日~19日、RMサザビーズがアメリカ・モントレーで開催したオークションにおいてフェラーリ「488ピスタ ピロティ」が出品された。今回はいくらで落札されたのか、同車について振り返りながらお伝えしよう。
各モデルには固有のレーシングナンバーが付与された
フェラーリが2015年から2019年までの間に生産したV型8気筒ミッドシップの「488GTB」。488GTBは、それまでの「458イタリア」の後継車となるビッグマイナーチェンジモデルだが、このわずかな生産期間の間にも、スタンダードな488GTBのほかに、さまざまな派生モデルが登場している。ここでは2018年のル・マン24時間レースで発表された、最強のロードゴーイング488ともいうべきスペシャルモデルを紹介することにしよう。
そのモデルの名は「488ピスタ ピロティ」。2017年のFIA世界耐久選手権に、フェラーリはセミ・ワークス・チームともいうべきAFコルセをバックアップしていたが、それに参戦していたアレッサンドロ・ピエール・グイディとジェームス・カラドがドライブするフェラーリ488GTEが、見事にドライバーズタイトルとマニファクチャラーズタイトルを獲得。それはフェラーリ488GTBの走りがオンロードのみならずサーキットにおいても、どのライバルよりも有能であることを証明した瞬間だった。
これを記念してフェラーリが企画したのが、488GTBをベースに、より優秀なエアロダイナミクスとさらなる軽量化、そして強力なパワーユニットを搭載することでパフォーマンスを高めた488ピスタ(同様のチューニングを施した488スパイダーベースの488ピスタ スパイダーも存在する)を、さらにストイックにチューニングした、「488GTBピスタ ピロティ」の限定販売。販売の対象となるのは、正確にはピロティ・フェラーリと呼ばれるフェラーリのカスタマー・レーシングドライバーのみで、各モデルには固有のレーシングナンバーが付与された。
ボディカラーは4色設定された
それぞれの488ピスタ ピロティは、フェラーリ・テーラーメイドによって完成され、ボディカラーはレースにインスパイアされた4色が設定された。ロッソ・コルサ、ブルー・トゥール・ド・フランス、ネロ・デイトナ、アルジェント・ニュルブルクリンクの4色がそれだ。イタリアン・トリコローレのラインがフロントノーズからルーフを経てリアエンドまで流れるのは、どのボディカラーを選択しても同様のフィニッシュ。ボンネットには2017年のWECでの勝利を称えるグラフィックも描かれる。
特別装備やオプションもじつに豊富に設定され、カーボンファイバー製のホイールやレーシングシート、チタン製エグゾーストパイプ、カーボンファイバー製フロントフラップ、サイドエアスプリッター、リアディフューザー、リアモール、エンジンカバー、Bluetooth内蔵のオーディオシステムとラジオ&ナビゲーション、ホワイトレブカウンター、カーボンファイバー製インテリアトリム、ヘッドレストのステッチ入りカヴァリーノ・エンブレムなど、数え上げていけばきりがないくらいだ。
一方メカニカルな仕様は488ピスタのそれと同様。すなわちエンジンは4LのV型8気筒ツインターボで、最高出力は710ps。組み合わせるトランスミッションは7速のF1デュアルクラッチトランスミッションとなっている。
今回オークションという舞台に姿を現した、488ピスタ ピロティは、フェラーリによって10号車のナンバリングが付与されたもの。2020年にデリバリーを受けた最初の、というよりもこれまでで唯一のオーナーはアメリカ、オレゴン州に在住する人物で、これまでの走行した距離はわずかに712マイル(約1140km)。
にもかかわらず2021年、2022年の年次点検を受けている。出品車にはもちろんテーラーメイド・ブック、オーナーズ・マニュアル、カーカバー、バッテリー・チャージャーを含む付属品のすべてが付帯済み。フェラーリの大切なカスタマーであるレーシングドライバーのみに提供される488ピスタ・ピロティ。それが一般に販売されるチャンスはそうはないだろう。今回の落札価格、99万5000ドル(邦貨換算約1億4430万円)も、けっして根拠のない数字ではないのである。