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もはやエンジンは主役にあらず!? レンジローバーの最高峰「SV」でPHEVの“上品”な走りを体感

2022年に5世代目が登場したフラッグシップSUV。2024年モデルから全グレードが電動化されるものの、現行登場時からPHEVモデルがラインアップされている

SVOが仕立てた超ラグジュアリィ仕様のPHEV

高性能モデルやビスポークを手掛けるSVOが仕立てた、レンジローバーの最高峰グレードのPHEVを、東京から京都までの長距離で試乗。上質な乗り心地、特にBEVとしてのライドフィールには特筆すべきものがあります。

手袋をはめて扱いたくなるような美しさ

都内某所でP510eを借り出した。マットなレッドカラーがシックに見えるあたり、さすがレンジの高質感である。

この個体、実はレンジローバーの最高峰グレードであるSVイントレピッドだったから、高質感も当然というものだろう。SVO(スペシャル・ヴィークル・オペレーションズ)が仕立てた超ラグジュアリー仕様の1つで、イントレピッドはなかでもスポーツ寄りのアクティブな仕様だ。もう1つ、SVセレニティという仕立てもあって、こちらはさらにシックなラグジュアリーを追求した。

エクステリア以上に注目したいのはインテリア。前後でシートのトーンや色味を違えたデュオトーンと呼ばれる演出が面白い。テスト車のシート素材はウルトラファブリックを使い、フロントが明るくリアは沈んだグレーというオトナの洒落たコーデだった。自分でこの仕様を選ぶにはかなりのセンスと胆力が要るだろう! いずれにしても手袋をはめて扱いたくなるような美しい見栄えの質感であることは間違いない。

車名の数字は最高出力を表すから、システム総合出力が510psということ。小文字のeはPHEVであることを示す。バッテリーの容量は意外に大きく、およそ40kWh。カタログ値で最大112kmをBEVとしてこなすというから、満充電にできる環境さえ身近に整っていれば、普段の使用でガソリンスタンドのお世話になることなどほとんどなくなるに違いない。実質的な電動走行可能距離は90kmくらいだろうか。それでも片道45km。普段使いには十分すぎる航続距離ではないか。

ガソリンスタンドに行かずに済むということよりももっと嬉しく思えたのが、BEVとして走った時のライドフィールだった。とにかく懐の深いしなやかな走りに徹しつつ、ほとんど完璧な静けさを実現した。威風堂々たるレンジローバーのドライブフィールに、この静々とした走りが凄まじくマッチする。ひとたびその心地よさを知ってしまうと、もうエンジンなどかかって欲しくないと思ってしまった。いやはや、なるほどこうしてエンジン大好き人間も洗脳されていくのだろう。次世代がBEVになっても、私はもう完全にウェルカムである。

電気でもハイブリッドでも。ラグジュアリーカーの新たな“スタンダード”

都内では余裕でBEVとして過ごし、バッテリーの余力をかなり残して、いつものように京都を目指す。

高速に入ってからもスムーズな走りが続く。エンジンとモーターの協調はもちろん、電動状態からエンジンへの切り替え、もしくはその逆も含めて、全体的なパワートレイン制御が極めてスムーズだからだ。ハイブリッド/エレクトリック/セーブといった3種のドライブモードが用意されているが、充電を積極的に行うセーブモードでややエンジンフィールがざらついたことを除けば、全体的にシステムの制御は上々だったと言っていい。

ハイブリッドモードでのここ一発の加速は十二分に速い。V8モデルにやや負けるかな、とは思ったものの、それはほとんど迫力の加減であって、事実上は同程度の性能だ。むしろエンジンとモーター、いずれかが目立つようなこともなく十分に力強く加速するあたり、上品でさえある。加速中はエンジンと電気モーターのそれぞれが互いの弱点を補い合うかのようにして力を途切れさせることなく速度を上げてくれるから、とても扱いやすいし、もっというと気分がいい。上質なライドコンフォートさも含め、ラグジュアリーカーの新たなスタンダードになったと思う。

レンジローバーを駆っていると、不思議と気分が落ち着くのだ。新東名の120km/h区間、ドイツや日本の上級ブランドSUVを駆る連中のように、追い越し車線を下品に突き進むような真似は自然としなくなる。左車線を悠々と走っていられるのだ。まさに金持ち喧嘩せずの心境で、そこはロールス・ロイスやベントレーといった英国の王室御用達ブランドに乗ったときとまるで変わらない。少なくとも筆者にはそんな品格は備わっていない。だからそれはクルマの方に根付いたものだ。

マイペースが極上。京都までの450kmは、それでもあっという間に感じた。所要時間が短かったのではない。精神的にラクだったから短く感じたのだ。もちろん肉体的な疲労も少なく、長距離ドライブをこなしてなお、目的地でデスクに向かう気力が残っていた。

非の打ち所がないラグジュアリーカー。運転を諦めない長距離ドライブ派には最高の1台であろう。

京都到着を前にバッテリーへの充電を並行して行う。せめて20km分だけでも貯めておこうと思う。そうすれば京都東インターで高速を出て一般道に入ったならすぐにBEVへと変えることができる。京都の街中はできるだけ静かに走りたいと思ったのだった。

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