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激レアモデルがザックザク! アポロ「3500GT」にVW「ラリーゴルフG60」などが展示された「アウト・エ・モト・デポカ」をご紹介します

「ハービー」と並んで、映画のシーンを再現するアポロ3500GT

日本じゃめったに見られない? 

2023年10月26日〜29日、筆者はイタリア・ボローニャで開催された「アウト・エ・モト・デポカ(Auto e Moto d’Epoca)2023」を訪ねていた。このクラシックカーイベントは「トレードショー」と呼ばれるもののひとつ。

イタリアで出会ったレア車たち

クラシックカー(近年ではヤングタイマーも含む)やそのパーツ、グッズ類などを展示・販売するとともに、自動車メーカーや愛好家クラブなどのブースも出展するもので、1990年代にパリの「レトロモビル」が爆発的な人気を得たのを契機に、ドイツの「テクノクラシカ・エッセン」や英国「NECクラシックカーショー」など、ヨーロッパ各国に波及している。

そんな中にあって、アウト・エ・モト・デポカはヨーロッパ最大級のクラシックカーショーを自認しているようだが、その自信を裏づけるように欧州のカーショーならではのクルマや、日本では見る機会が皆無に等しいような、超レア車たちにも会うことができた。

アポロ3500GT

一般ディーラーのブースで発見した黄色いスポーツカーの名は「アポロGT」。フランコ・スカリオーネのデザインによるアルミ製ボディから、一見したところではフェラーリに代表されるイタリア製グラントゥリズモのようにも映るが、実際はアメリカ企業の発案でイタリア設計のシャシー/ボディを持ち、アメリカ製V8エンジンを搭載。1962年から1964年ごろまで88台が作られたという、多国籍なクルマである。

このクルマについての数少ない有名なエピソードとして挙げられるのは、1968年に公開されたディズニー映画『ラブバッグ(The Love Bug)』にて、意志を持つVWビートル「ハービー」と公道レースのデッドヒートを演じたこと。この作品は当時から日本でもヒット作となり、今でも公式に動画配信されているので、ご記憶の方もいらっしゃることだろう。

のちに「ローバーV8」となるGMビュイック製V8・3.5Lを搭載する「3500GT」のほか、同じビュイックの5Lスモールブロックを搭載する「5000GT」も少数が製作されそうだが、この展示車は映画出演車両と同じく3500GTとのこと。

となりにゼッケンNo.53をつけたハービー仕様のVWビートルを置くという、センスの良さを感じさせるディスプレイも注目を集めていたようだ。

ビッターCD

2023年のアウト・エ・モト・デポカにて、少なくとも3台の売り物が確認できた「ビッターCD」。ひと頃は日本にもごく少数ながら輸入されていたことから、古くからのカーマニアならばご存知かもしれないが、1970〜80年代の独オペルの上級モデルをベースに、まるでイタリアンGTのように豪奢なグランドツアラーを製作・販売していたビッターの第1作である。

アダム・オペル社の元社員で、オペルをベースとするマシンを開発してレース活動も行っていたエーリヒ・ビッターは、自社ブランド「BITTER GmbH」を立ち上げ、当時のオペルの最上級モデル「ディプロマート」をベースとする高級クーペの開発に乗り出す。

ホイールベースを2845mmから2680mmに短縮したディプロマートのフロアユニットに、シュトゥットガルトの「バウア」社によるスタイリッシュな2+2クーペを架装。北米シボレー製V8 OHV・5.4Lエンジンを搭載したビッターCDは、1973年から1979年にかけて395台が製造されたといわれている。

フォルクスワーゲン ラリーゴルフG60

アウト・エ・モト・デポカでは、一般ディーラーの展示販売コーナーはホール内のほか、より出展料の安価な屋外展示も行われている。ここでは、ヤングタイマー車両を中心に1万ユーロ以下の比較的リーズナブルなクラシックカーが展示・即売されており、それはそれでイベントの名物のようにもなっているのだが、今回はこの場にあまりそぐわない、小さな大物ヤングタイマーに遭遇・刮目することになった。

FIAグループAでの世界ラリー選手権エントリーのため、フォルクスワーゲン社が自ら「ゴルフII」を徹底的に仕立て直した「ラリーゴルフG60」である。

このモデルは、当時ゴルフに設定が始まっていたビスカス式フルタイム4WDモデル「シンクロ」に、水冷直列4気筒SOHC+「Gラーダー」機械式過給機つきエンジンを搭載。これは「コラードG60」用をベースとしていたが、過給係数「1.7」を考慮して1763ccまで縮小していた。

また、ボディも専用ブリスターフェンダーによりワイド化。エアロパーツも実戦向きのワイルドなものが装備され、BMW E30系「M3」などと同じストイックな緊張感が、じつに魅力的な1台といえよう。

グループAホモロゲーションモデルとして5000台が限定生産され、生来の目的であるラリーカーも開発。1990年に実戦デビューしたものの、WRC選手権では「ランチア デルタHFインテグラーレ」の牙城を崩すには至らず、残念ながら目立った活躍はなかった。

また正規輸入されなかったこともあって、日本国内で見る機会はほとんどないだけに、今回の遭遇には驚きを禁じ得なかったのだ。

ランチア スコーピオン

こちらも野外の展示スペースで、車載トレーラーごと「For Sale(売りたし)」となっていたのがランチア「スコーピオン」。ランチア「ベータ モンテカルロ」の北米輸出専用モデルである。

ヘッドライト光軸高を北米の法規に適応させるため、少しだけ起き上がるセミ・リトラクタブル式に改装したほか、同じく法規にしたがって丸型のシールドビームに変更。前後のバンパーも、対衝突対策を施した巨大な「5マイルバンパー」となった。

また、ミッドシップに搭載されるエンジンについて、生産当時には北米の排ガス対策のために排気量ダウン(2L→1.8L)と大幅なパワーダウンを強いられていたことから、のちにオリジナルスペックのモンテカルロ仕様に戻した個体も多いと推測されるのだが、今回遭遇したクルマは、結果として生来のスコーピオン仕様のまま良好なコンディションが維持されているようだ。

くわえて、本国・欧州版モンテカルロではアバルトとの関係をことさら強調することはなかったが、こちらはアバルトの象徴であるサソリを意味する英語「スコーピオン」の名を堂々と掲げていたことも特筆すべきトピックといえる。

ちなみに、今回一緒に販売されていた本国版モンテカルロとUS仕様スコーピオンとも、この会場での張り出し価格は2万2900ユーロ、日本円に換算すれば約370万円であった。

ランチア ジョリー

今回のアウト・エ・モト・デポカ2023では、ディーラーブースとクラブブースの双方でランチアが大豊作だったのだが、なかでも筆者がもっとも興味を持ったのは、ホール内のクラブブースで見かけた可愛らしいキャブオーバー型バン。ランチアがフィアット傘下に収まる前、1959年から1963年にかけて生産した商用車「ジョリー」である。

この時代のランチアでもっとも小さな「アッピア」をベースとしたジョリーには、バンまたはトラックが用意され、ともに36.5psを発生する狭角V型4気筒1090ccエンジンを搭載。最高速度は98km/hに達したという。

4年間で3011台が生産されたのち、上級車「フラヴィア」をベースとし「スーパージョリー」と名づけられたより大型の後継モデルへと代替わりした。

ランチアは、当時からどちらかといえば高級車を得意としていながらも、第二次世界大戦の前後には大型トラック「エザタウ」を頂点とする商用車の製造にも乗り出していた。

それでもキャブオーバー型のバンながら、独特の上品さや清楚なエレガンスを体現しているジョリーには、ランチアの矜持のようなものを感じてしまったのだ。

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