サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

フェラーリの赤をまとったポルシェ「918スパイダー」があった!「ヒッピー・カラースキーム」という特別なカラーリングにつくプレ値は?

流札となったポルシェ「918スパイダー」(C)Courtesy of RM Sotheby's

数少ないヨーロッパにデリバリーされた1台

2024年1月18日から20日までに、RMサザビーズがスイス・ジュネーブで開催したオークションにおいてポルシェ「918スパイダー」が出品されました。今回はいくらで落札されたのか、同車について振り返りながらお伝えします。

955台が世に送り出されたポルシェ918スパイダー

2013年半ば、ポルシェはデリバリーの開始が目前に迫っていたハイブリッド・スーパースポーツ、「918スパイダー」に、さらなる軽量化とエアロダイナミクスの最適化を施した「ヴァイザッハ・パッケージ」を設定。そのパフォーマンスをさらに魅力的なものに向上させることに成功した。

918スパイダーの発売日は2013年9月18日と決定され、その生産台数は世界限定で918台。だがその人気は高く、2013年には35台、2014年には545台、そして最終年の2015年には375台と、トータルで955台もの918スパイダーが生産され、その多くにはヴァイザッハ・パッケージが選択されていた。

ちなみにその価格は、ドイツ本国ではベース車両が76万8026ユーロ(邦貨換算で約1億2365万円)、ヴァイザッハ・パッケージ装着車両は、83万9426ユーロ(同1億3515万円)だった。

ワンオーナーで走行距離は800キロ以下

今回RMサザビーズ社が1月18日から20日にかけてスイスのジュネーブで開催したシールド・オークションに登場した918スパイダー ヴァイザッハ・パッケージは、680番目に生産された2015年モデルで、走行距離は現在までの間に800km以下を刻むのみ。もちろんワンオーナーカーで、定期的なメンテナンスは欠かさずに受けている。

その大きな特徴は、「ヒッピー・カラースキーム」と呼ばれる独特なカラーリングだ。1970年にアナトール・ラパインが、マルティニ・レーシングのハンス・ディーター・ディシェントの依頼で、2台のポルシェ917に施した、グリーンとブルーの独特なカラーリング。それは現在に至るまでポルシェ・ファンの記憶に残り、またポルシェ自身にとってもレースの世界における最も偉大な時代のひとつを象徴するカラーリングとなったのである。だがそれは少なくとも、ポルシェの公認でオンロードの世界で、これまで再現されることはなかった。

それは918スパイダーにとっても同様の事情で、じっさいそのオプション・リストにヒッピー・カラースキームの記載はない。ポルシェのレース史に深い情熱を抱く、熱狂的な3人のファンが、それぞれポルシェへと直々に依頼し、各々が好みのヒッピー・カラースキームの918スパイダーを仕上げたのだ。

最初の2台はアメリカのカスタマーへとデリバリーされたグリーンとパールによる、シャシー・ナンバー229、そしてもう1台はレッドとイエローのシャシー・ナンバー857である。

ボディカラーにはフェラーリの「ロッソ・コルサ」を採用

そして今回シールド・オークションに出品されたのが、3台目として唯一ヨーロッパにデリバリーされたもの。ベースカラーのレッドには、なんとライバルであるフェラーリの「ロッソ・コルサ」が用いられ、前後のマグネシウム・ホイールはホワイトに、ほかにもインテリアはイタリアンレッドのレザーで縁取られ、さらにビアンコレダのパイピングが施されている。ホワイトのステアリングホイールにはセンターマーカーも装備され、トランクとファイアーウォールはブラックのキルティングファブリックで縁取られ、リアウインドウも厚めのガラス製に変更された。

さて、ここでもうひとつ説明しておかなければならないのは、今回RMサザビーズ社が採用したシールド・オークションのシステムだ。これはある一定期間、入札者は直接、あるいは代理人を通じて(現在ではPCでも入札ができる)希望する落札価格をシールド、つまりほかの入札者にその価格を知られることなく入札できるシステム。もちろん基本は最も高い額を提示した入札者ということになるのだが、それだけに事前に同モデルのオークションでの落札価格を知ることも重要だ。

例えばこの918スパイダー ヴァイザッハ・パッケージならば、2023年の12月1日にアメリカのテキサス州ヒューストンで開催された「ホワイト・コレクション」で、同じ2015年式の918スパイダー ヴァイザッハ・パッケージが、走行距離12マイル(約19km)の状態で、393万7500ドル(邦貨換算約5億7880万円)で落札されている。

シールド・オークションであるがゆえに、入札価格がどの程度まで跳ね上がったのかは想像の域を超えないが、RMサザビーズは予想落札価格を165万~200万スイスフラン(同2億8050万円~3億4000万円)と見ていたようだ。オークションとは、まさに不思議な世界なのである。残念ながら落札者は現れず(つまり最低落札価格に達する入札はなく)、現在このモデルはRMサザビーズのプライベート・セールで販売が継続されている。

モバイルバージョンを終了