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フォーミュラEが面白い! 日産とシェルの関係や過去のシーズンを知って、今期後半をもっと楽しもう

左からオリバー・ローランド、トマソ・ヴォルペ、サッシャ・フェネストラズ

日産2位! 日本初開催のフォーミュラEを振り返る

日産がフォーミュラEに参戦を開始して2024年は5シーズン目を迎えました。初の日本開催では、惜しくも2位でしたが、改めて日産が参戦を続ける背景、そして意外と知らない日産フォーミュラEチームのガレージについて深掘りします。どうして日産フォーミュラEチームがシェルとパートナーシップを結んでいるのでしょうか。

年々面白さを増してきている理由とは

フォーミュラEは、2014年に創設された電気自動車のモータースポーツカテゴリー。以降世界各国の市街地を中心に転戦し、ついに日本でも初開催されることになった。シリーズ当初はマシンに搭載されているバッテリーの容量が足りず、レースの途中でマシンを乗り換える必要があるなど、未熟な部分も多かった。だが技術が進歩したことで航続距離は伸び、1台のマシンでレースを完走できるようになった。

また、当初はスピード不足が嘆かれ、「迫力がない」といった意見もあった。だが現在シリーズ使用されている「Gen3」と呼ばれるマシンの最高速度は時速320km/hを誇るスペックを持っており、圧倒的にスピードはアップしている。

そんなフォーミュラEの5シーズン目(2018-2019年シーズン)から、日本のマニファクチャラーとして唯一参戦を続けているのが日産である。電気自動車のモータースポーツカテゴリーに参入を決めた理由は、大きくわけて3つ。

ひとつ目は電動エキスパートであることを証明することだ。日産では早い段階から積極的に電動化を進めており、2010年には世界初の量産EV「リーフ」を市場に導入。世界中で多くの販売実績を得ており、そこで培った技術を活かすために参戦を決めたという。

ふたつ目は、EVレーシングマシンのパフォーマンスの高さを示すためだ。前述したとおり、現在使用されているマシン「Gen3」のスペックは非常に高く、最大出力は350kW、0-100km/h加速は2.5秒をマークする。

最後はフォーミュラEのマシンで培った、回生ブレーキをはじめとする複雑なシステムを、量産車の技術に活かせることである。じつは日産が参入した際のGen2では、量産車で得た技術をフィードバックする「ロード・トゥ・トラック」という構図だったのが、現在のGen3からは「トラック・トゥ・ロード」となり立場が逆転。そういった最先端のデータを蓄積できるフォーミュラEは、電動化のエキスパートである日産にとっては魅力的なカテゴリーとなっているのだ。

テクニカルパートナー「シェル」の役割

さらに、日産フォーミュラEチームは「シェル」とテクニカルパートナーシップを締結している。シェルというとガソリンメーカーのイメージが強いが、EV(電気自動車)向けの「Shell EV-Plus」という電動パワートレイン専用フルードの開発も行っている。

EVの駆動システムは高い絶縁性、ギヤの保護性、さらにモーターなどの冷却性が求められるため、その役目をするフルードが充填されている。フォーミュラEのパワートレインも同様の理由でフルードを必要としていることに加えて、エネルギー効率の良さが勝敗に大きく影響するレースがゆえに、市販車用よりも高性能なものが要求される。そこでシェルは、フォーミュラEのGen3に適合された「Shell EV-Plus サーマルフルード」を、日産フォーミュラEチームと共同開発した。

加えて、シェル特注の「Eトランスミッションフルード」は、再生可能な原料から作られた天然エステルベースオイルを使用。70%は生分解性の成分から作られているため、フォーミュラE、ならびに日産フォーミュラEチームが目指している持続可能性をサポートするものとなっている。なおフォーミュラE Gen3にギヤは非搭載で、上記のフルードはモーターの駆動をタイヤに伝達するためにギヤボックスに使用されている。

世界を転戦とするピットの中身は!?

さて世界を転戦しているチームのガレージは、屋根の形状や広さなど、メカニックが使用するツールなど、全ラウンドで同じレイアウトを採用している。積載量は7tに制限されているほか、運搬はレース会場 to レース会場と決められており、ファクトリーに立ち寄ることは許されていない。これは環境を考慮して、レギュレーションで厳しく取り決めがなされているからだという。

エンジニアリングエリアでは、セッション終了後にドライバーとミーティングを実施。その際に出た内容をベースに、新しいソフトウェアに更新する流れだ。充電にはCCS2ケーブルが使用され、これは市販車アリアと同様である。

またエンジニアはレース中、ドライバーからの要求に対応するのだが、基本的な操作はすべてステアリングで行われる。フォーミュラEはスペックレースと言われており、独自開発ができるのはリアのパワートレインのみ。同部分にはフォーミュラEでの要にあたる「回生エネルギー」に必要な要素が含まれているのだが、ドライバーが要求する回生加減(強めにするのか、弱めにするのか)に合わせるために、エンジニアはドライバーにステアリングで行うべき操作方法を指示している。

そのほかピットレーンでのスピードリミッターや、コース上でアクシデントが発生した際に導入されるFCYの際のリミッターボタン、スタート前にタイヤを温めるために行うバーンナウトボタンなど、ステアリングにはさまざまな機能がテンコ盛りとなっている。

ホームカントリーとなる日本での初開催を、日産は勝利で飾ることは叶わなかったが、それでも2位と大健闘。来年こそはホームで日の丸を掲げてもらいたい。

AMWノミカタ

フォーミュラE東京E-Prix開催に先立って、3月26日にNISSAN CROSSINGにて、シェルと日産の開発ストーリーやパートナーシップに関するメディアラウンドテーブルが行われた。NISSAN CROSSINGの通りに面したメインディスプレイにはGen3のマシン、ショールーム内にはGen2のマシンを展示。このほか六本木ヒルズアリーナでは、全長110メートルのオーバル型特設サーキット「NISSAN FORMULA E ROPPONGI CIRCUIT」のイベントを開催するなど、日産とシェル、その関係各社がさまざまなイベントを催して賑わったレースウィークであった。こうしてサーキット以外でのイベントが盛り上がることで、一般の人にもフォーミュラEの魅力と存在そのものが伝わることであろう。こうしてフォーミュラEが日本でも普及することに期待したい。

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