従来型を進化型にアップデートできるプランを提供
2025年2月4日、TOYOTA GAZOO Racingは2024年8月に米国で発表した進化型「GRカローラ」の日本仕様車を発表し、3月3日から販売開始します。改良のポイントは8速ATの追加に加えて、高速コーナーでの旋回性能、加速性能そして冷却性能を改良したこと。そしてクルマとの一体感を高めたことです。そして日本仕様車にはさらなるオプションも設定されているようです。
8速ATの追加に合わせて冷却性能などトータルチューニングを敢行
TOYOTA GAZOO Racing(以下TGR)は2025年2月4日、2024年8月に米国で発表した進化型「GRカローラ」の日本仕様車を発表し、3月3日から販売開始する。
2022年12月に500台の抽選販売されたGRカローラは、「カローラスポーツ」をベースに走りに磨きをかけたモデル。ドライバーの操作へ俊敏に反応する走りを目指し、ボディ剛性を強化。元町工場のGR Factoryで生産することで実現する高剛性基本骨格に加え、リアホイールハウス間や床下トンネル、タンク前の床下にブレースを追加することで、操縦安定性能を高めている。
カローラスポーツのボディを基本骨格とし、ロングホイールベースによる優れた走行安定性はそのままに、フロントを60mm、リアを85mmワイドトレッド化することにより、高速旋回性能を高めると同時にスポーツ走行時の安定性・コントロール性を大幅に向上させた。
そして「GRヤリス」同様、形状自由度の高いSMC工法で成形されたCFRP素材のルーフパネルを採用。剛性を高めるだけでなく、軽量化にも貢献している。
最高出力304psを発生する1.6L直列3気筒ターボエンジンは、GRヤリスに搭載された小型軽量ハイパワーユニットのさらなる高出力化を目指し、エンジンの排気効率を向上させる。バルブ付き3本出しマフラーを採用することにより、排圧低減と消音性能を両立した。
組み合わされている6速MTはショートストロークのシフトレバーを採用し、ステアリングから自然に腕を下ろした位置に配置することで素早いシフト操作が可能だ。
前後駆動力可変システム採用のスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」
駆動方式は、電子式多板クラッチによる前後駆動力可変システム採用のスポーツ4WDシステム「GR-FOUR」を搭載。今回、駆動配分を制御する4WDモードと、アクセル応答性やステアリングなどを制御するドライブモードを分けたことで、ドライバーの好みや走行環境に応じた選択ができる。
さらに、ブッシュのピロボール化、スプリング、アブソーバー、アライメントの最適化にも取り組み、余すところなくGR-FOURの最適駆動力配分を路面に伝達することで、圧倒的な旋回性能を実現している。
70台限定発売の「RZ “MORIZO Edition”」は、モリゾウこと豊田章男会長が自ら試作車のハンドルを握り、「お客様を魅了する野性味」を追求して作り込んだモデルで、2シーター化をはじめとする徹底した軽量化、エンジンのトルクアップおよびトランスミッションのギア比最適化による動力性能向上、モノチューブアブソーバー、ハイパフォーマンスタイヤの採用によるコーナリング性能の向上により「気持ちが昂り、ずっと走らせていたくなる」走りの味を実現している。
前後バンパーのサイド部の裏側にアルミテープを採用
GRカローラは2023年8月に一部改良を実施し、意のままの走りをさらに進化させ550台の抽選販売を行った。
2023年8月の一部改良では、スーパー耐久シリーズをはじめとしたさまざまなモータースポーツ現場での学びを活かした改善を実施。従来モデルと比べて、意のままの走りをさらに進化させるため、運転操作に対するダイレクト感とスタビリティを向上させている。
改良ポイントは、運転操作に対するダイレクト感の向上を目指して、シャシー部品を締結するボルトの一部に締結剛性向上ボルトを採用したこと。ステアリング操作に対する応答性と直進安定性を向上させ、クルマとの一体感を進化させている。
さらにフロントサスペンションメンバーとステアリングギアボックスを締結するボルトのフランジにリブ形状を追加。そしてリアサスペンションメンバーとボディを締結するボルトはボルト頭部サイズの幅を約22mmから約24mmと拡幅した。
スタビリティ向上を追求して、フロントバンパーダクト形状を改善することにより、ホイールハウス内の空気の流れを最適化し、操縦安定性を向上。そして、前後バンパーのサイド部の裏側にアルミテープを採用。樹脂部分のバンパーの帯電を解消することで空気をキレイに流すようにした。
クルマのポテンシャルを引き出す機能が有効となるサービス「サーキットモード」を設定
そして今回発表された進化型GRカローラのポイントは、3点。1点目はスーパー耐久シリーズなどのモータースポーツに参戦する中で得た学びを生かし、高速コーナーでの旋回性能、加速性能そして冷却性能を改良したこと。
2点目は、進化型GRヤリスにも採用した新開発8速ATのGAZOO Racing Direct Automatic Transmission(以下GR-DAT)の追加。そして3点目は、プロドライバーやマスタードライバーのモリゾウからのフィードバックをもとに、限界領域および日常の街乗りにおいてもずっと乗っていたくなる一体感を追求したことだ。
旋回性能の進化では、前後ショックアブソーバーにリバウンド側で作動するスプリングを内蔵し、旋回時の車両姿勢と内輪の接地荷重特性を改善することで、旋回中の車両安定性を向上させている。
またリアアクスルの回転中心であるトレーリングアーム取付点の位置を上げることで、加速時のリアの沈み込みを低減。アクセル操作に対する車両姿勢変化を抑えることで、挙動の応答性を向上させるとともに安定した姿勢でのコーナリングを実現している。さらにリアのコイルスプリングとスタビライザーのばね特性を見直し、それぞれのロール剛性の分担率を最適化することで、旋回時のリアタイヤの接地性を向上させることで車両コントロール性を高めた。
続いて、加速性能の進化ではスポーツ走行でのエンジン使用領域を分析し、コーナーでの立ち上がり加速に重要な中速域でのエンジントルクを現行モデルに対して30Nm増加させ、最大トルクを400Nmまで向上させている。
そして冷却性能では、より安定した制動力を確保するためブレーキダクトを採用。フロントブレーキローターに直接風を導くことにより、冷却効果を向上させてブレーキ温度の上昇を抑制している。
空力性能の進化では、バンパーコーナー部へ安定的に小さな乱気流を発生させる小さな段差を設定し、バンパーコーナー部からの空気のはく離を抑制。冷却性能強化のため必要な各機構を追加しつつ、操縦安定性を確保している。
ポテンシャルを引き出す「サーキットモード」を設定
そして国内のサービス対象サーキット・施設において、アンチラグ制御の追加やスピードリミッター上限速度の引き上げなど、クルマのポテンシャルを引き出す機能が有効となるサービス「サーキットモード」を設定。GPSによる位置判定および専用アプリ上での操作により、シフトタイミングやエンジン回転数を直感的に示す専用メーター表示に切り替わり、サーキットモードが利用可能となる。
そしてすでにGRカローラを所有しているユーザーに朗報なのが、進化型GRカローラの進化点を体感できるアップグレード用の部品セットを購入・装着可能ということ。そしてそれらの部品を装着するうえで、最適な車両バランスとなる組み合わせおよび変化を体感しやすい装着順を提案してくれるという。
これまでは新型が登場すると旧型を乗っているユーザーは悔しい思いをしていたが、GRカローラはアップグレードすることで、走行性能を進化させることができる。これはユーザーの気持ちがわかるモリゾウならではの粋な計らいと言える。価格は8速ATが598万円(消費税込)、6速MTが568万円(消費税込)となっている。
