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ダンロップから次世代オールシーズンタイヤが登場!「シンクロウェザー」をさっそく雪道で試す…スタッドレスと同等レベルのグリップ力に感動!

走行路面に雪はなく、ところどころで雪面や氷面が点在するような状況

普通のオールシーズンとは桁の違うレベル!

ダンロップが2024年10月1日に市場投入した全く新しいタイヤ、ダンロップ シンクロウェザー。路面状況でゴムの性質が変化する次世代オールシーズンタイヤを長期テストできることになりました。今回は装着から3週間ほどの印象をお伝えします。

硬くなりにくくなるゴムを使用

ダンロップの「シンクロウェザー」は、まさに自然の摂理に反したタイヤと言っても過言ではない。というのも、一般的にゴムの性質は温度が低くなれば硬くなるのが道理だ。ところがこのタイヤに使われるゴムは硬くならない。正確にいえば硬くなりにくいのである。温度スイッチと水スイッチ(本当にスイッチがあるわけではない)なるものがあり、水に触れるとゴムを柔らかくし、温度が低くなる(0度付近だという)と硬くなりにくくするのだそうだ。

そんなうまい話があるか? というのがこの話を聞いた時の正直な感想。じつはこの技術、2022年のジャパンモビリティショーで、そのゴムを展示していた。私は一般のお客様を連れてAJAJ(自動車ジャーナリスト協会)のガイドツアーでも実際に見ていただいた。それが2024年10月に市販化されたというので、今回の長期テストとなったわけである。装着した車両は、我が家のシトロエン「ベルランゴ」。装着したサイズは205/60R16。きわめて一般的に普通のユーザーが使いそうなサイズである。

サイドウォールにはアイスグリップシンボルマークを採用

装着はダンロップタイヤを専門に扱うタイヤセレクト鷺沼店。ここで聞いた話では、シンクロウェザーは一般的なタイヤにあるアウトサイド、インサイドの設定がないため、どうしてもローテーションが必要だという。とくにアウトサイド側の減りが早くなるため、そこだけはチェックしてほしいということだった。また空気圧は通常より少し高めが良いとのことで、ベルランゴの場合は前輪:260kPa、後輪:240kPaとしてある。

トレッドパターンは典型的なオールシーズンタイヤで、正面から見るとV字型の溝が確認できる。参考までにダンロップのドライタイヤ(ビューロ)、スタッドレス(ウィンターマックス03)のトレッドパターンと比較しても、縦溝が無いことに気づくと思う。

それよりもサイドウォールに描かれたシンボルマークだが、M+Sや山にスノーフレークが付いた冬の規制時に使えるシンボルはわかるとして、その隣にある山のマーク、滅多に見かけないが、これはアイスグリップシンボルと言って、国連規定で定められた氷上走行が可能なタイヤに付くマークなのだ。つまり、氷上もOKということになる。

このマークが初めてオールシーズンタイヤについたのは、2021年に北米で販売されたノキアン ハッカペリッタ10およびR5タイヤらしく、ISO 19447 testingというテストに合格したものに付けられるマークである。つまりこのテストに合格したからこそ、シンクロウェザーにこのマークが付いている……ということである。

一番滑りやすい状況で試してみると……?

今回はそんなわけで、雪と氷を求めてクルマを走らせた。御存知だと思うが北海道のように気温がマイナス10℃などになった場合、じつはタイヤのグリップ力は上がる。グリップしないのは、いわゆるシャーベットや少し水の浮いたアイスバーンなど。だから、目指したのは東京から近い山中湖である。幹線道路や生活道路は完全に除雪され、凍結防止剤がまかれているため、ドライタイヤでもOK。

しかし、冬場には人がいないだろう別荘地の道は、こうしたテストにうってつけの雪面やアイスバーンが点在する。しかも気温は車載温度計で2℃を指していて、そろそろ溶け始めてもおかしくないアイスバーンもあるような状況だった。

今回は家族を連れて、いかにもそれらしい状況を作り出してのドライブ。雪遊びをしたがる子どもたちを降ろしてみると、そのアイスバーンで見事に転ぶこと数回。自分も歩いてみたが、水が浮き始めていて一番滑りやすい状況を作り出していた。

そんなところでの印象は後述するとして、ドライ路面はどうか。一般道から東名高速を使って御殿場までの道のりは、全く快適性を損なうことがない。かつて使った某メーカーのオールシーズンタイヤは、雪道でのグリップはそれなりによかったものの、ドライ路面でのロードノイズとパターンノイズに閉口して、使用をやめたことがあった。しかし、シンクロウェザーの場合、皆無ではないが気になる不快なロードノイズやパターンノイズはない。以前に付けていたミシュランのドライタイヤと遜色ないノイズレベルである。

それどころか、御殿場付近のワインディングでも、一般道に降りて篭坂峠を登ってみても、コーナーでのグリップ力はとても高く、ドライ路面に出た時のスタッドレスなどでありがちな、ブロックが崩れるようなフィーリングも当然ながらない。何より静粛性が高いことと、自然なステアフィールに驚かされた。

雪道などはスタッドレスと同等レベルのグリップ力を発揮

そして前述した雪と氷の路面。初めはおっかなびっくりの走行だったが、どんな路面もほぼ何事もなかったように通過する。しかも山に登っていく道だから、それなりの勾配があるのだが、そんなことも全く気にしない。通過した後にクルマを止めて路面を見ると、見事に凍っている。

それこそ子どもたちが転んだところなのだが、向きを変えてその氷上でフルブレーキング(と言ってもスピードは出ていないが)。一瞬ズズっと来た後、ガッチリと停止する。メーカーも推しているという氷上性能も、普通のオールシーズンとは桁の違うレベルで止まることを確認した。

そんなわけだから、雪道などは正直言ってスタッドレスと同等レベルのグリップ力を発揮する。かなりの勾配がある雪上でストップしても何ら問題なし。登りも下りも試してみたが、当たり前のように普通に走るのに驚かされた。隣に乗った女房は次のようにコメントした。

「これなら雪道を普通に走れるわね」

いわゆる素人のエンドユーザーが発した言葉だから、これがすべてを表しているように感じた。

二律背反する性能を見事にまとめ込んだダンロップ シンクロウェザー タイヤ。正直恐ろしいタイヤが出てきたものだと思う。

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