昭和40年代に三重交通で路線バスとして運行されていた
2024年10月13日に開催された「20世紀ミーティング 2024秋季」。これは2021年に始まった比較的新しいイベントですが、その名のとおり参加資格車両は2000年ごろまで、乗用車のみならず2輪4輪商用車問わずエントリー可能という敷居の低さから、いまではすっかり新潟・三条市の名物イベントとして親しまれるようになっています。そのなかから今回は、会場で気になったいすゞ「BDX30」を紹介します。
すぐに路上走行できる動態保存車両で保管されている
クルマ好きのなかにはバスやトラックなどの大型商用車を仕事ではなく趣味の愛車として個人所有する強者も少なくないが、こちらのバスは2003年から活動をおこなっている「特定非営利活動法人日本バス文化保存振興委員会 NPOバス保存会」からのエントリー。
現在ではバスも大型トラックもそれぞれが合目的的な専用設計で製造されているが、かつてはバスとトラックは同じシャシーでボディ(業界用語的には”ボデー”と表記すべきか)を作り分けるということが一般的だった。メーカーが製造したシャシー/エンジン/運転席に”ボデーメーカー”が独自のボディを架装するというわけで、クルマの機械部分とボディ製造が分業化されていたという意味では、戦前のロールス・ロイスやベントレー、ブガッティなどの高級車とコーチビルダーとの関係にも似ている。
今回のイベントに登場したのはNPOバス保存会が動体保存している1966年(昭和41年)式のいすゞBDX30だ。この個体は昭和40年代に三重交通で路線バスとして運行されていたもので、川崎航空機工業製の車体が架装されている。定員は46名、全長8950mm×全幅2450mm×全高3003mmと堂々たる体躯だ。
「会が保存しているバスは全部で18台。そのうち4台は自家用ナンバー登録し、点検整備によりすぐに路上走行できる動態保存車両です」
そう語ってくれたのは日本バス文化保存振興委員会の理事長にして交通ジャーナリストとしても活躍されている鈴木文彦さん。NPOバス保存会ではバス文化の向上をめざすという考え方から、保存しているバスを広く世間に知らしめることも目的のひとつとしている。
同会の所有するバスは過去にもさまざまなイベントや映画・テレビ・CM等の撮影などに協力してきた実績があり、今回のイベントでは市内で別途開催された「昭和レトロ街×地域おこし協力隊マーケット」の会場とミズベリング三条との間をシャトルバスとして実際に運行(乗車無料!)、多くの搭乗希望者で賑わった。
「バスを保管している茨城の車庫から新潟まで、一般道を走ってきました」
と笑顔の鈴木さんとNPOバス保存会のスタッフ。セダンやスポーツカーに比べれば、趣味のクルマとして維持管理するためのハードルは高いと思われがちなバスの世界だが、熱心な愛好家たちの手によって今日もまたボンネットバスは走るのである。
