芸術性の高さが価格の高さにも直結する、驚異のジュニアカーの世界
クラシック/コレクターズカー・オークション業界最大手のRMサザビーズ欧州本社が、レトロモビルに付随する大規模イベントとして、2025年2月4-5日に開催した「PARIS」オークションにおいて、素晴らしいジュニアカーたちの数々が出品されていました。今回は、同オークションに出品されたジュニアカーのなかでも格別の芸術性を誇る1台、2/3スケールに縮小したブガッティ「T57SCクーペ・アトランティーク」をピックアップ。そのあらましと注目のオークション結果について、お伝えします。
ブガッティ最高の伝説、クーペ・アトランティークを忠実に小型化?
ブガッティ タイプ57SCクーペ・アトランティークをモチーフとし、ホンモノの約2/3スケールで製作されたこの素晴らしい子供用自動車は、ドイツの「サイクルカート・カンパニー(Cyclekart Company)」社によって企画・生産されたもの。わずか10台の限定生産で、今回の出品車両は3番目に作られた個体と見なされている。
ボディサイズは全長300cm×全高95cm×全幅118cm。運転者の対象年齢は「5歳から15歳くらいまで」とされてはいるものの、この種のジュニアカーでは定石のオープントップではなく、オリジナルのT57SCアトランティークのスタイルを崩さない、完全クローズドボディ。つまり大人はもちろん、子どもですらコックピットに乗るには適さない、純粋に芸術性を追求したジュニアカーと推測される。
それゆえ、リアエンドに向けて急降下する「ファストバック」スタイルを与えられたボディは、ルーフを縦断するフィンと、その頂部を固定するリベット留めという、このモデルの有名なスタイルも再現。
また、ボディカラーは4台が製作されたといわれるT57SCアトランティークのなかでもとくに伝説的な「ラ・ヴォワチュール・ノワール(La Voiture Noire:黒いクルマ)」を思わせる、漆黒のペイントで塗装される。
T57SCアトランティークをみごとに再現した装備にも注目
いっぽうインテリアは、オリジナルのT57とよく似た深いタンの本革レザーがふんだんに用いられ、ベージュのカーペットとヘッドライニングが施されている。また、これも本物と見まごうばかりの色合いとフィニッシュを見せるアッシュウッドのダッシュボードには、実際に機能する英「スミス(Smith)」社製の各種メーターがはめ込まれ、セルモーターを回すキー式の電子イグニッションも装備されている。
メカニカルパートについて、まずパワーユニットは単気筒4ストローク196ccのガソリンエンジンを搭載。最高出力は7.5psをマークし、時速35kmで走行可能とのことである。
また、前進ギアと後退ギアを備えたオートマチック式ギヤボックスを装備。ディスクブレーキも装備し、車内外にはヘッドライトを含む灯火器やホーン、これもブガッティT57用を正確に模したウッドリムのステアリングホイール、調節可能な革張りハンモックシートなど、T57SCアトランティークをみごとに再現した装備がなされている。
RMサザビーズ欧州本社は、現在の所有者との協議のうえ4万ユーロ~6万ユーロ(邦貨換算約644万円〜約966万円)という、この種のジュニアカーとしてはかなり強気なエスティメートを設定。
ところが2月4日に迎えた競売では、強気なはずのエスティメート上限の、さらに1.5倍にも相当する9万ユーロ。日本円に換算すると約1450万円という、おそらくは出品者側さえも予測していなかったであろう、予想以上のハンマープライスで落札されることになったのである。
