ドイツの国境審査を強化するのは難しい!?
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「ドイツの国境問題」です。ドイツ内務省が国境審査を強化するというニュースがありましたが、地元民では「やるやる詐欺」と言われているようです。
今回の国境検問もおそらく「言ってみただけ」案件?
イギリスBBCの報道は次のようにコメントします。
「ドイツ内務省が不法移民対策で国境審査を強化する」
え、今さら? ドイツって9カ国と地続きで接していますよ。島国の日本なら空港と港を抑えりゃいいけど、陸続きのドイツでそれをやるって、かなり骨が折れそうですね。物理的に不可能なような気がします。
想像してみてくださいよ。アウトバーンに突然検問所が現れる……とか。でも、速度無制限のあの高速道路で「はい、止まってください」は、どう考えても命がけ。そもそも、無制限スピードの国民が黙っているとも思えないですね。
もちろんドイツは高速道路だけではなく、毛細血管のような道も整備されています。アウトバーンを封鎖したところで、迂回されたら移動は自由です。検問は現実的ではありませんよね。
しかもドイツの公安、あれ、けっこうパンチが効いているんです。空港の検査官はなぜかいつも機嫌が悪いし、警官はマシンガンを片手にうろうろ。ドイツ人はカタブツだから、ダメとなったらダメ、融通が効かない国民性です。そんな人たちが国境に立ったら、怖くて観光どころじゃない。
とはいえ、90日以内の滞在なら問題なし。だから私の日独往復の半地下アパート生活も今のところは平穏です。
「滞在は何日?」
「10デイズ」(木下)
「滞在目的は?」
「サイトシーイング!」(木下)
「お前、不法移民か?」
の一言に
「イエス!イエス!」
って条件反射で返して、気づいたら船の上……なんてコントも起きそうで怖いですね。
ですがこの検問話、もう3カ月前のニュースです。現場での動きゼロ。発端は、東ドイツで右派政党が議席を伸ばしたって話で、内務省が「やるぞー」と張り切ったものの、地元民いわく「ドイツ名物・やるやる詐欺」らしい。
ドイツ政府といえば、EV政策でも「前言撤回芸」を披露しています。2030年までにEVを1500万台って鼻息荒くしつつ、売れないと見るや補助金をあっさりカット。結果、販売台数はガタ落ち。ショルツ政権、気分屋に翻弄されています。
というわけで、今回の国境検問もおそらく「言ってみただけ」案件。アウトバーンの風は今日も自由に吹いているし、しばらくは好きなだけ走れそうです。スピード制限なし、料金もなし、検問も……きっとなし。
