バグダッド・カフェからルート66を西に走る
「アメリカの母なる道」と呼ばれる「ルート66」が2026年で100周年を迎えます。ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手を応援しにカリフォルニアを訪れる日本人が多い今、そこからちょっと足を延ばせば満喫できる、ルート66ゆかりのスポットをご紹介。今回は映画『バグダッド・カフェ』のロケ地から西に進み、バーストゥとヴィクターヴィルの町を訪れます。
映画『バグダッド・カフェ』のロケ地はクルマ好きの聖地
ルート66を象徴する映画のひとつ『バグダッド・カフェ』はアメリカではなく西ドイツ製作の映画で、1987年公開。静かで乾いた空気感におおわれた画面に流れる主題曲『コーリング・ユー』が印象的な名作だ。筆者は20年近く前、東京に就職して間もない頃に渋谷のミニシアターで観賞して、深い余韻が残ったのを今でも覚えている。
ロケ地となった店は元は「サイドワインダー・カフェ」だったそうで、映画の人気を受けて「バグダッド・カフェ」に改称。映画でおなじみの給水塔は朽ちて倒れたままであるものの、幾度もの経営危機を乗り越えながら今なお元気に営業中だ。
劇中のさびれた雰囲気をイメージしてバグダッド・カフェを訪れると、土曜日ということと、現地の観光局が日本のメディアが取材に来ると伝えていてくれたこともあり、店の前は大にぎわい。
地元のオーナーたちのクラシックカーがずらりと並び、さらにたまたま訪れていたお客のクルマも趣味なラインアップだ。1970年代のオールズモビル「カスタムクルーザー」の隣にちょこんと停まっていたパープルのクルマは、日本が誇る軽スポーツカーのスズキ「カプチーノ」! イリノイ州からこれに乗ってきたというオーナーは女性だった。
アメリカで平成初期の軽スポーツが人気とは聞いていたが、まさかバグダッド・カフェで会おうとは……。知人の元カプチーノ乗りが本州から北海道に転勤して、ひたすらまっすぐな道でのパワー不足に心が折れて手放した事例を知っているだけに、このルート66を走ってきた気合いには脱帽するほかない。
リアルでも濃いキャラクターたちが続々登場
バグダッド・カフェを長年にわたり支えてきたオーナーのアンドレアさんと、ミス・クラシック・ルート66のカーラさんが出迎えてくれた後、登場したのはブーメラン名人のアラン・スコット・クレイグさん。劇中ではブーメランを投げるシーンが有名だが、そのブーメランを製作して投げる役まで演じた、張本人だ。続けて登場したおじさんは、映画の1時間14分のシーンでトラックドライバーとしてちょっと出演したのだという……。
さらにランチは近くのバー「Barn」で用意されているとのことで、1953年式シボレー トラックのオーナーに助手席に乗せてもらって移動。バーでは地元のカントリー・シンガー、ライアン・ボーディンさんが歌を披露してくれた。
現在、バグダッド・カフェではギフトショップをメインに営業していて、店内には世界中から訪れたファンたちの名刺や写真やステッカーがぎっしり貼られている。
映画の中での「わびさび」感あふれる風情とは異なったものの、ふだんはもう少し静かなっ雰囲気のはず。劇中の女主人ジャスミンは不愛想だったが、スタッフの人たちはとてもフレンドリーだ。多くの人々に愛され続けている「聖地」として、映画を観たことがなくても訪れる価値のある名所といえるだろう。
バーストゥとヴィクターヴィルで2つの博物館をハシゴ
バグダッド・カフェからクルマで30分も走らないうちに、バーストゥの町に到着する。ここはロサンゼルスからラスベガスに向かう中間地点にあるので、立ち寄る観光客も多い。郊外には「キャリコ・ゴーストタウン」というテーマパークがあり、これは元炭鉱で本当にゴーストタウンと化していたのを再生した施設。ファミリー客で大にぎわいだった。
バーストゥはルート66と並行して走るインターステート(州間高速道路)40号線の起点であると同時に、サンディエゴからラスベガスを経由してカナダまで南北に走るインターステート15号線の起点でもある、交通の要衝。
1911年に建てられたバーストゥの駅舎には鉄道博物館とともに「ルート66マザーロード・ミュージアム」が併設されていて、建築、鉄道、カーカルチャーをまとめて楽しめるお勧めスポットだ。
さらに南西に30分ほど走ったヴィクターヴィルにも「カリフォルニア・ルート66ミュージアム」があり、こちらはルート66グッズなどの土産物も充実。まとめて2軒の博物館をハシゴするのも楽しいだろう。
日本人の知らない人気日本料理「ヒバチ」
この日の夕食はヴィクターヴィルの地元で人気の食い放題レストラン「Wスプーン・バッフェ」に入ってみた。入り口にネオンサインで「SUSHI」と書いてある通り、日本食と中華を中心としたビュッフェ形式の店だ。
カリフォルニアといえば食べておきたかったオレンジチキンや、食べたことのないザリガニ中華(殻をむくのが面倒)も味わいつつ、気になったのが「HIBACHI」と書かれたコーナーだ。なんでも、日本料理の鉄板焼きがいつの頃からかアメリカでは「ヒバチ」と呼ばれるようになって定着しているそうで、語源については諸説あるものの定かではないようだ。
各種の野菜やカニカマ、エビ、チキン、ビーフなどから好きなものを小皿に乗せて店員に渡せば、鉄板で焼いてサーブしてくれるシステム。黒コショウのきいたスパイシーな味で、醤油が混じってはいるものの、和食と中華をミックスしたような感覚だった。野菜をとれるのでヘルシー、とアメリカでは人気らしい。
夜は清潔な全国チェーンのホテル、フェアフィールド・イン&スイートにチェックイン。日本人の感覚では広すぎる部屋で、すぐに爆睡。
次はいよいよロサンゼルス都市圏に入り、文化都市パサデナだ。
■Visit California(カリフォルニア観光局)
https://www.visitcalifornia.com/jp/
■Discover Inland Empire(インランドエンパイア観光局)
https://discoverie.com
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