シカゴから3755キロに及ぶルート66の西の端、サンタモニカへ
「アメリカの母なる道」と呼ばれる「ルート66」が2026年で100周年を迎えます。ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手を応援しにカリフォルニアを訪れる日本人が多い今、そこからちょっと足を延ばせば満喫できる、ルート66ゆかりのスポットをご紹介。西の終着点であるサンタモニカは、ロサンゼルスから近いビーチ・リゾートとしても人気の土地で、一番手軽にルート66のカルチャーを楽しめます。
本当の「ルート66の終点」はどこ……?
1926年に制定されたアメリカの国道66号線「ルート66」は、イリノイ州シカゴからカリフォルニア州サンタモニカまで東西2347マイル(3755km)にわたる大動脈として、かつて憧れの西海岸を目指して無数の人々が通った道。一度は廃線となりながらも多くの人々の努力によって復活を遂げ、今なおアメリカン・カルチャーを象徴する歴史的な街道として愛されている。
西の終点サンタモニカは、ロサンゼルス中心部からもロサンゼルス国際空港からもクルマで約30分。渋滞していなければもっと早く着く近場であり、ビーチ・リゾートとしても人気の町だ。カリフォルニアを訪れたら、せめてサンタモニカだけでも立ち寄っておけば、ルート66の雰囲気を味わうことができるだろう。
本記事の冒頭に掲げた「End of the Trail」の標識は「サンタモニカ・ピア(桟橋)」に立っている名物フォトスポットだが、じつは観光用のものであり、本当のルート66の終着点は別の場所にある。
ピアから2ブロックほど北東の、リンカーン・ブールバードとオリンピック・ブールバードの交差点が正式なルート66の終点となっていて、「HISTORIC ROUTE 66」の下に「END」と書かれた、こじんまりとした標識がある。
この交差点には「メルズ・ドライブイン」というダイナーがあるので、そこに寄って駐車して食事をしたうえで安全に撮影するのがお勧め。このメルズは、1973年の映画『アメリカン・グラフィティ』の舞台になった実在のサンフランシスコのダイナーの支店で、店内は古き良きアメリカの雰囲気満点。名物「ルート66バーガー」はたっぷりのフライドオニオンとレタスでビーフパテを挟んだ、ボリューミーな一品となっている。
サンタモニカ・ピアは歴史あふれる観光名所
1909年にできたサンタモニカ・ピアはカリフォルニア屈指の観光名所としてにぎわっていて、先述の通り正式なものではないが「End of the Trail」の標識はどう撮影してもフォトジェニックだし、桟橋をさらに先に進んでも雰囲気のいい写真が撮れる。
併設されている小さな遊園地「パシフィックパーク」にはルート66をイメージしたジェットコースター「ウェスト・コースター」をはじめ12の乗り物があり、観覧車からはサンタモニカ・ピアを一望できて、まさに絶景。
なにより、木製のクラシックなメリーゴーランドは1973年の映画『スティング』にも出てきたもので、今も現役で稼働していて乗ることができるのだ。メリーゴーランドの脇には、西海岸のサーフカルチャーやライフガードの歴史を物語る展示もされていて興味深かった。
歴史や映画が好きな向きには、近くの「アネンバーグ・コミュニティ・ビーチハウス」もお勧めしたい。ここには、1941年の映画『市民ケーン』のモデルとなった新聞王、ウィリハム・ハーストが女優マリオン・デイヴィスのために建てた、「マリオン・デイヴィス・ゲストハウス」が残っている。1929年に完成したこの建物は当時としては珍しかった女性建築家のジュリア・モーガンによる設計で、約100年前のセレブたちのライフスタイルを偲ぶことができるのだ。
老舗シーフードレストランで巨大ロブスターを味わう
サンタモニカに来たからにはぜひ食べておきたいのがシーフード。サンタモニカ・ピアは、1994年の映画『フォレスト・ガンプ 一期一会』の舞台のひとつでもあり、ピアには同映画をテーマにしたレストラン「ババ・ガンプ・シュリンプ」が店舗を構えていて人気を誇っている。
今回はピアの入り口にある老舗レストラン「ザ・ロブスター」で夕食をとった。ここは1923年創業の老舗で、1985年に一度閉店するも1999年に復活を遂げ、2019年からはミシュランプレートに選出されている名店だ。
前菜として西海岸と東海岸の牡蠣を食べ比べた後は、本命のロブスター。スチームとグリルをそれぞれ頼んで同行者とシェアしたが、サーブされた時はあまりの大きさに圧倒された。新鮮でプリっと弾力のある身は、伊勢海老や蟹とはまた違ったワイルドさがあるし、日本ではここまで大きなロブスターにお目にかかれることはまずないだろう。カリフォルニアに来たことをこれでもかと実感するディナーとなった。
この日の宿泊は、ピアから1kmほどの距離にある「フェアモント・ミラマー・ホテル&バンガローズ」。ここも1921創業という老舗の五つ星ホテルで、ルート66の旅人やハリウッド・スターたちに愛されてきた宿だ。緑に囲まれたバンガローで静かに落ち着いた夜を過ごすことができただけでなく、同行者のひとりが旅の途中で通風を発症してしまい、杖がどこかで入手できないかと相談したら即座に杖を提供してくれるなど、ホスピタリティも超一流なのだった。
サンタモニカでギターをかき鳴らしてみる体験も
翌朝はサンタモニカ・ビーチのビジターセンターの向かいにある、これも1933年創業と老舗の「ジョージアン・ホテル」へ足を運び、1階の名門レストラン「シエラ」で伝統的なブレックファストをいただいた。ベーコンはカリカリを極めた鰹節のような硬さで、ナイフで切るというよりも砕きながら食べるのも、また一興というもの。
最後にロサンゼルス国際空港から帰途につく前に、「サンタモニカ・ミュージックセンター」という地元の楽器店に立ち寄って1時間ほど簡易なギターレッスンを体験する機会を得た。
数々のミュージシャンたちに愛されてきたサンタモニカの地で、超初心者向けにギターの基本中の基本から、有名な曲の説明まで明るくフレンドリーに解説してくれる。弦楽器を触ったことのなかった筆者も、ひとまず「Eマイナー」というものを覚えることができた。
30分か60分の枠で多彩なリクエストに応じてくれるようなので、音楽の雰囲気だけ触れてみたいという初心者でも、アメリカ流の弾き方を教わりたい中級・上級者も、サンタモニカを訪れたらついでに体験してみるといいだろう。
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広大なカリフォルニアは行ってみたい魅力的な場所に事欠かない。気になるスポットをとりとめなく巡るのもいいけれど、テーマを1つか2つ設定してみると、旅の思い出にさらなる深みが増すはずだ。
2026年でルート66が100周年を迎えるこのタイミングで、かつてカリフォルニアに憧れて東から西へと向かった旅人たちの足跡をたどり、アメリカの歴史と文化に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
■Visit California(カリフォルニア観光局)
https://www.visitcalifornia.com/jp/
■Visit Santa Monica(サンタモニカ観光局)
https://www.santamonica.com
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