“本気のレストア”で現代に蘇ったベレットGTR
「本当に1969年式?」と目を疑うほど美しく蘇ったいすゞ「ベレットGTR」が、Nostalgic 2days(ノスタルジック2デイズ)で注目を集めました。製作したのは、いすゞ車専門店の「イスズスポーツ」。その仕上がりには、妥協を許さない“本気”のこだわりが詰まっていました。
イスズスポーツの匠の技が光る1台
2025年2月22日〜23日に横浜で行われたNostalgic 2days(ノスタルジック2デイズ:以下N2d)の会場には、多くの旧車専門ショップがブースを連ねていた。そんな中で気になったのが、いすゞ車を専門に扱う東京のイスズスポーツが展示していた「ベレットGTR」だ。オレンジのボディにブラックのボンネットという組み合わせは、多くの人がイメージする代表的なカラーリング。内装はもちろん、エンジンルームもまるで新車のようにピカピカに仕上げられていた。そこでスタッフに話を伺ってみた。
「このクルマはベレットGTRデビュー初年度の1969年式で、同年専用のエンジンがしっかりと搭載されている貴重な個体です。元々かなり状態が良い個体だったのですが、ボディをバラバラにしてフルレストアし、各部のパーツに関しても、当社が今できる本気の作業を行った自慢の1台です」
レースで優勝したマシンの仕様をそのまま市販化
1963年に登場したベレットは、翌年に2ドアクーペのベレットGTを追加。このベレットGTのボディに格上車種である「117クーペ」の1.6L DOHCを搭載して、1968年の鈴鹿12時間耐久レースで優勝したレーシングマシン「ベレットGTX」を、市販化したスペシャルモデルが1969年に登場したのがベレットGTRだ。車両重量970kgという軽量ボディに、最高出力120psのエンジンを搭載し、パワーウエイトレシオは8.1kg/psと、当時の1.6Lクラスとしてはトップクラスの性能を誇った高性能車だった。
ベレットGTRはフロントが二分割のバンパーとなり、その間にフォグランプが装着されるほか、フロントフェンダー後端と左側テールランプ下に装着される「typeR」のエンブレムが特徴となっている。ちなみに、デビュー当初は「ベレットGTR」、後年マイナーアップデートを機に「ベレットGT typeR」が正式な名称となる。
まるでタイムスリップしてきた新車のような仕上がり
いすゞ車のスペシャルショップとして知られるイスズスポーツが本気を出した1台だけあって、各部のパーツはまるで新品のよう。また、エンジンルームの各ボルトも再メッキが施されて、経年による劣化をまるで感じさせないコンディションとなっている。同社としても採算を度外視して作業を行なっており、「販売価格もいくらになるか想像もできない」という状態で作業は進められたそうだが、完成前に購入希望者が名乗りを上げ、すでに売約済みとなっているそうだ。
ある意味新車を超えるクオリティで仕上げられたベレットGTRは、今後、同じクオリティの個体に出会うことができないかもしれないほどの貴重な1台だ。これほどの車両を所有することができるオーナーになれる人物、羨ましい限りである。
