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マセラティの歴史を辿る旅で知った「パルミジャーノ・レッジャーノ」の精神性が日本で匠の「道」として展開! 五感で感じた「チーズ道」とは

パルミジャーノ・レッジャーノは専用のアーモンドナイフで割ると、粒状の組織をさらに楽しむことができる(2018年のイタリア取材にて)

チーズにも「道」がある!

「パルミジャーノ・レッジャーノ」というハードチーズをご存知ですか? イタリアの特定の地域(パルマ県、レッジョ・エミリア県、モデナ県、マントヴァ県、ボローニャ県の一部)でのみ生産されるPDO(原産地保護呼称)認定のチーズのことなのですが、なんとこの度「パルミジャーノ・レッジャーノ道」なるものが日本で発足しました。その精神について触れてきました。

マセラティの歴史を追っていたらパルミジャーノ・レッジャーノに行き着いた!

ブルーのマセラティ・ギブリでパニーニ家が所有しているマセラティの私設博物館を訪ねたのは、ちょうどマセラティ誕生100周年の2014年であった。そのムゼオにはとても気になる歴代の名車が並んでおり、それはそれで印象に残ってはいるのだけれど、取材が終わって同じ敷地内にある販売所で購入したパルミジャーノ・レッジャーノが、帰国後にたいへん印象に残るものとなった。

取材当時、その販売所はパニーニ家が経営していた牧場で生産したパルミジャーノ・レッジャーノをはじめとする乳製品やハムなどがずらりと並んでいた。マセラティの私設ムゼオを訪れたら、こちらの販売所でお土産としてチーズなどを購入するのがお決まりのようであった。

無農薬の牧草で育てられた乳牛のミルクから作られたパルミジャーノ・レッジャーノは、それまで私が経験したどのチーズよりも芳醇で、舌触りと鼻に抜ける香りが秀逸であった。牧場とパルミジャーノ・レッジャーノづくりを取材するために再訪したのは、最初に取材したときから4年後のことである。

このパルミジャーノ・レッジャーノは、イタリアのエミリアロマーニャで生産される特産品である。原料は生乳と塩と酵素のみ。製法はいたってシンプルではあるが、昔ながらの製法を伝統として今に受け継いでおり、これまたかつて取材したことのある日本酒の酒蔵を思い出した。パルミジャーノ・レッジャーノをつくる職人と杜氏の姿がオーバーラップしたのである。

よく、日本料理とイタリア料理の共通性が指摘されることがあるが、それはシンプルな調理法で素材の良さを活かすことに集約されていると思う。つまり、どちらも素材そのもののよさが第一条件にある。そして、その道を極めた職人の手によってうみだされるものだ。

常々、そんなことを考えていたら、なんと「パルミジャーノ・レッジャーノ道」なるものが、この日本で発足されたのである。日本人はよく何にでも「●●家」とか「●●道」というものを作りたがるが(かつて「編集家」と名乗った人もいたはず。「オタク道」となれば、相当のマニアということになるだろう)、実はこのコンセプトを作ったのは日本在住のイタリア人、ティツィアーナ・アランプレーゼ氏である。

日本特有の精神と文化と共鳴する生産プロセス

発表会場はGINZA SIXの観世能楽堂。発表会には駐日イタリア大使ジャンルイジ・ベネディッティ氏が登壇して挨拶。トークセッションは協会ブランド&コミュニケーション担当のイラリア・グレコ氏、ジャパンPRコンセプターのティツィアーナ・アランプレーゼ氏、特別ゲストのMEGUMI氏によって行われた。そこで、ティツィアーナ・アランプレーゼ氏は、「パルミジャーノ・レッジャーノの生産プロセスが、日本の道場精神や伝統文化と深く共鳴していることに着目し、『パルミジャーノ・レッジャーノ道』というコンセプトを確立いたしました。書家・中塚翠濤氏によるロゴや5つのキーワード『おいしい』『本物』『伝統』『健康』『楽しい』により、本質を日本の皆様に丁寧に伝えていきたい」と語った。

私がかつてパルミジャーノ・レッジャーノの生産地を訪れて感じた日本文化との共通性を、当のイタリア人にも感じていた人がいたということである。

さて、能楽堂でのイベントのあとは厳選されたパルミジャーノ・レッジャーノ(24カ月熟成と36カ月熟成)を、イタリアのフランチャコルタや抹茶のモクテルなどと合わせてのテイスティング。特徴的なじゃりじゃりとした食感は、長期熟成によってタンパク質が分解されてできた、チロシンというアミノ酸が結晶化したもの。このアミノ酸の粒が独特な食感と芳醇な香りを生んでいるのだが、さすがに36カ月モノは、食感・風味・香りともに際立っていた。

話は冒頭に戻る。パニーニを取材した当時、「日本でここのパルミジャーノ・レッジャーノ」を購入することはできないのかを尋ねたところ、かつてある日本の商社が取り扱っていたこともあったようだが、思うように販路をつくることができず撤退したということであった。今回発足した「パルミジャーノ・レッジャーノ道」が日本で認知され、広く浸透することになれば、いまよりももっと気軽にパルミジャーノ・レッジャーノを手に入れることができるようになるだろう。そうすれば、同じパルミジャーノ・レッジャーノでも生産家によっての微妙な味の違いを楽しめるようになるはず。いつか、イタリアでお土産として購入したパルミジャーノ・レッジャーノを日本でも気軽に手に入れられる日が訪れることを楽しみに待ちたい。

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